第29話 『少しの魔法』
一体どれだけの時間苦しんだのだろうか。
突然、バタッと力なくベッドの上にうつ伏せになった。「リサ!」と慌てて体を起こして胸の中に迎え入れて体を触るが温かい脈もある。何とか耐えてくれたのだ。
「良かった」
「じゃないわよ! あなたは何がしたいのかな!」
「いひゃいよ。りふぁ、ふぁるかったって」
腕の中で目を覚ましたリサによって頬を左右に引っ張られる。
「それで、何がしたかったのよ。これで気まぐれとか言ったらただじゃおかないわよ」
「それは確信がないけど、リサ、こっちにおいで」
リサをベッドに座り直させるとベッドから立ち上がって少し離れた場所に立つとリサに向けて手を伸ばした。
「車椅子がないと」
「いいいんだ。そんなものはいらない。そうだろ」
「でも、そんな……まさか……」
リサの足は膝から下が不随になっている。だから、立ち上がる事もましてや歩く事もままならないはず。
――なのに。
「え――」
本人が一番驚いた。足が動いたのだ。筋肉の衰えでうまく歩けないが、確かに一歩足首が動いで体を前に進めたのだ。体勢を崩して倒れそうになったところをデュークが抱き留める。
「どうして……?」
「体に刺激を与えてみたんだ。俺の血は狂血。俺の血を取り込めば否が応でも体は刺激を受けて拒絶する。普通の異なる型を入れただけじゃリサの持っている回復能力の方が上回って壊す前にどんどん回復するだけ。だから、同じエクストラの狂血を入れれば同等の力によって急速に壊れていき、また急速に回復していく。その時に不随だった足にも刺激が加わって治ったんだよ」
「……超回復って事」
「それを端スパンで延々と繰り返した感じかな。苦しかったと思うけど、治ったなら結果オーライだろ」
「む~、なんか嬉しいけど……デュークの癖に生意気だよ」
再び抱き留めて腕が動かせない事を言い事に頬を引っ張られてしまう。
「なんふぇひっふぁるの」
「生意気だよ。私よりも年下の癖に、あ、でもこれで歳について弄ったらもっとやるからね」
「ふぁらないって」
「でも、まあ、ありがとう。デュークって、なんか他人行儀だよね。う~ん、そうだな~、デューくん!
これからデュークはデューくんね!」
「あにふぁってに」
「私の事はそうだな……なんて呼びたい」
「ますふぁなしてくれ」
「あー、ごめんね」
自由になった口をパクパクさせて顎が外れていないか確認をする。
「それで、なんて呼びたいの」
「何でもいいだろ、リサで」
「う~ん、面白みに欠けると思うけど、まあいっか」
「よっと」
「おい!」
抱き留められているデュークの手を離れると少し一人で歩いてみた。生まれたての小鹿の方がまだうまく歩けると言った具合で覚束なくて自重を支えるだけの筋肉を持ち合わせていない。だから、よろけて、こける。
「無茶をするな。治ったばかりだし、筋肉も足りていないんだぞ」
「そう、うん、分かってるわ。でも、嬉しくて、じっとしていられないのよ」
子供の様に無邪気に歩き回りそうになるリサを抑えてベッドに座らせる。
本人はまだ物足りなさそうにしていたが、デュークにはまだ訊きたい事があった。




