第27話 『神ノ焔』
家の中は多分普通な間取りだ。多分って言うのは、デュークはワンルームの部屋しか住んだ事が無いので一般家庭も知らないし、ましてや別荘の間取りに詳しいはずもない。
「なっ!」
家に入って驚いたのは数人のメイドがいたのだ。しかし、その誰もから生気を感じない。
「使い魔よ。本当は違う姿なんだけど今はメイドになっているわ。絶対に離れないで、あれは熱や動くものを感知していて感度は結構大雑把だから一緒に居れば見つからないわ」
「あ、ああ」
ここまでくれば彼女も何か特殊な状況に置かれているのは想像できた。じゃないと監視をつけたりはしない。平屋建ての別荘の一番端の部屋がリサの自室らしい。扉を開けてゆっくりと閉めた。
「もういいわ。監視はこの部屋とトイレ、お風呂にはないから。一応プライベートを意識しているのかしらね。変なところで真面目なんだから」
「箱入り娘か」
「そうとも言えるし、違うとも言えるわ」
リサの自室は何というか質素だった。置かれているのはベッドと本棚ぐらい。後は何もない。
「あんまり女の子の部屋をじろじろ見ると好感度下がっちゃうわよ」
「あ、ごめん。あの、座っても」
「いいわよ」
許可を得てベッドに座る。リサも車椅子をベッドの横に着けると慣れた手つきでか体を起こしてベッドに座り直した。
「まず、俺の体に何をしたんだ」
「そんなに怖い顔をしないで、その質問に答えるには私の『神ノ焔』について説明をしないといけないわね」
「いいのか。手の内をバラすんだぞ」
「その代わりデュークの狂血についても教えてね」
「いいけど」
どうにも調子が狂う。自分を受け入れた事もそうだが、警戒心が薄いと言うか常に緊張している自分の方がおかしい様な錯覚に陥っている。
「私のエクストラは簡単に言えば治癒能力。私は死なないの。どんなことをされてもね。心臓を貫かれても首を跳ねられても思いつく限りの事をされても死なないわ」
「不死、だと……。それはパワーバランスを崩すんじゃないのか。くそババア――憎たらしいユーナが言うのは俺等の力はどれも単純なものが多いって。まあ、死なないって言うのは単純かもしれないけど、酷く恐ろしいな」
「羨ましい……?」
「どうだろうな。ユーナが間違った事を言いそうもない。つまり、何かしらの代償を求めて来るんだろう」
表情を少しだけ曇らせた。
「そうよ。求められるのは激痛。経験があると思うけど、さっきの焔に焼かれる痛みはちょっと違うの、あれは能力の代償として痛めつけているだけ」
「なんでそんな事を」
「知らないわ。そういうルールなだけ。死ねないと言えばいいかもしれないけど、再生には受けた傷の痛みは倍になって跳ね返ってくるの。たまに思うわよ。素直に死ねた方が楽だってね」
「んじゃ、俺の体が再生したのは」
腕や足を見てみるが傷跡は一切残っていない。怪我なんてまるでしていなかったみたいに。
「狂血は他者の血を吸って自分に還元する事が出来る。広く周知されている事だわ。だから、確証はなかったけど私の血を吸えば一時的にだけど治癒能力をあなたに渡せるんじゃないかなって思ったの。結果としては万々歳」
「道理で酷く苦しかったわけだ」
「助かったのよ。感謝はされても文句を言われる筋合いはないわよ」
ちょっと不機嫌になった顔がかなり可愛かった。悟られない様に顔を逸らしたがタイミング的にかなり微妙だ。
「でも、まあ、感謝するよ。このままだったどこかで野垂れ死ぬしか未来はなかったから」
「ふふー! もっと感謝していいのよ」
「ありがとうありがとう」
「むっ、なんか安っぽい」
「どうしろってんだよ」
自分で言うのもあれだがデュークは女の子の扱い方を知らない。そもそも物心ついた頃には狂血である事を知っていたため出来る限り周りと付き合わなかったので特に女性関係は驚くくらいにない。
「――なあ、リサの治癒の焔は外傷だけなのか、疾患とかには効かないのか」
「どうだろうね。でも、病気とは縁知らずだな~」
「だったらさ、その足はなんで治っていないんだ。治癒はどこへ行ったんだ」
「これね。これはね……」
自分の動かない足を優しく撫ぜる。
「私が発現したのは十年前、八歳の頃。それ以降に受けた傷は全部癒せたけど、この足は生まれてすぐにちょっとした事故にあってこうなったの。発現以前の怪我に関しては癒しの効果が得られなかったの。だから、この足はこのまま」
きっと、リサも自分が治癒のエクストラを持った時に足が治ると思っていて、付きつけられた現実に悔しい思いをしただろう。ちょっと軽率な発言だったと反省をしておく。
「えっ、リサって俺よりも年上なんだな」
「デュークは何歳なの」




