第26話 『正体』
その時だった。
デュークの全身を青い炎が包んだ。リサの表情が緩む、まるでこれを待っていたみたいに。
不思議と発火していると言うのに熱くない。もしくは熱いよりも痛みが激しすぎて感じていないだけかもしれないが、服や皮膚に火傷は現れない。
「大丈夫よ。その炎があなたを癒してくれる」
言うと同時に全身に合った無数の傷や打撲痕が消えていく。傷がなくたった部分の炎は消えて最後、顔の半分と左腕、左足に炎が集中していった。
「がぁああ……」
それは非現実的な光景だった。燃える青い炎はやんわりと腕と足の形をすると、逆再生を見ているかのように腕と足が生えてきた。そう言うしかできないのだが、炎の中再生していく腕と足、忘れていた感覚も徐々に戻って来る。
左目や顔の左半分も炎が揺らめいたと思ったらすべてを癒していく。抉れた頬は元に耳も形を取り戻して、肝心の左目も元に戻った。視力は時間がかかるのかぼんやりとしか見えていないが、さっきまでは蒸発して失っていたのだ。
そうしている間にも腕と足の再生が終わり五体満足となる。衣服の再生は行われないのでえらく不格好になったが、そんな事どうでもいいくらいデュークの頭の中には「?」が浮かんでいる。
「あなたは言ったわよね。なんで私が自分のメリットにならず、加えて匿っていたことが見つかれば確実に私も処罰対象になる。なのに、どうして助けようとするのかって、理由はね以外に簡単なの。――だって、私とあなたは同じ穴の狢。だから、私はあなたを見過ごす事が出来なかったの」
「同じ、だと……」
気が付けば全身を絶え間なく襲っていた激痛が消えていた。痛みのない身体の素晴らしい事、文字通り体が軽くなった気がする。
「ええ、そうよ」
そう言うと長い銀髪を手で軽く整える。
「改めて自己紹介をするわね。私はリサ。デューク、あなたと同じ『番外なる(ス)血統・神ノ(レイ)焔』を身に宿しているわ。だから、迫害される同じエクストラを黙って見過ごす事は出来ないのよ。これが私の理由」
上品な作法で車椅子に座りながらだが丈を持って頭を下げて来る。予想をしていなかった展開にデュークは言葉を失う。
「神ノ焔だと、確認されている四十二種の中にはそんな能力はなかったはずだ」
「確認されている中ではないわよ。でも、未確認のエクストラはそれと同じ数存在しているとされているわ。私はその内の一人」
「あんたはゲルフの王族だろう。エクストラの発見報告は国際条約に盛り込まれている最優先事項の一つだ。あんたの存在を王国が知らないわけがないのにどうして……」
「ふふっ」
「何がおかしい」
「あら、ごめんなさい。警戒心が強くて立派な男の子だと思ったけど、まだまだ純真なんだなって思って」
酷く男心を抉られた気がしてならない。だから、少しむくれてしまうけどこれは決して悔しいとかそんなじゃない。
「その条約を忘れているわけではないわよ。でも、発見したエクストラでしょう。発見していなければ報告の必要はないわ」
「あ~、そう言う事」
つまりは犯罪もバレなきゃセーフって奴だ。
「俺に話せる情報はいくらでも話す。だから、リサも色々と教えてほしい」
「ん、信用してくれる気になったの」
「一応回復できた俺はそうそう負けないし、義理は果たす主義だ」
「うん、そんな男の子も嫌いじゃないわよ。でも、ここではちょっとね。ボロボロの服も取り替えてしまいたいしついてきて案内するわ」
「ああ」
前を歩くリサに付いて行く。激痛も消えて五体も揃ったため改めて周りを見てみるが見た事が無い景色だ。ゲルフには行った事が無かったので当然と言えばそうなのだが、その中でもここは外界との交流を遮断されている。周りを見ても道らしい道がない。
「ちょっと待って」
玄関の前で止まらされた。
「別荘の中では不用意に動かないで私の後ろから離れずについてきて言う事を聞かないと最悪の事態を起こりうるからね」
「は、はい」
強い声で言われてただ頷く事しかできない。




