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罪人の孫  作者: レム
第1章 『災厄、再び』
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第23話 『目覚め』

 それはまるで水面から顔を上げた時のような色の無かった景色に一気に着色されていくような不思議な感覚。


「うぅ……」


 酷く体が重い。意識がはっきりとしない。ぼんやりと微睡の中に自分がいた。目をゆっくりと開けてみる。視界が狭い。どうしてなんだ。それよりもここはどこだ。ダメだ。頭が回らない。俺はこれまで何をしていたんだ。

 背中に感触がある。どうやら自分はどこかの草原に仰向けで寝ているらしい。視界の先に女性が映った。誰だろう。記憶にない。何かを離しているのか口を動かしているが聞こえない。耳が腐ったのか右側からは何となく聞こえるが左からは聞こえない。それよりも待て。ここはどこなんだ。俺はどうしてこんなところにいる。

 確か俺は狂血を宿している事が周りにバレて戦って、くそババアに負けて逃げて――

 最後は川に流れたんだ。


「――!!」


 そこまで考えるとまるで頭の中に電流が流れる様にすべての記憶が繋がり意識も一気に覚醒した。体も思い出したかの様に痛みを取り戻していく。


「うわわわ、起きたよ~。これからどうすればいいのよー!」


 キョドキョドしながら目の前にいる女性が声をかけて来る。


「あの~、だ、大丈夫ですか」


「――!」


 彼女は敵かも知れない。

 そこまで考えが及ぶとデュークは石の様に固まっている体に鞭を打って動かすと、その場から飛び跳ねて彼女と距離を取った。一瞬ポカンとされてしまったが、苦笑いをして気まずそうに頬を掻いた。


「誰だ貴様は!」


「あの、私は敵じゃないよ」


「そんな事っ!」


 突然、体にこれまで以上の痛みが走って来た。慌てて体勢を立て直そうと思ったがこけてしまう。ここでようやく片足がない事に気付いた。飛んだ時にはつい忘れてしまっていた。


「ダメだよ! すごい怪我なんだから。正直生きているのが不思議だよ」


「そこから動くな!」


「は、はい!」


 ――どうやらこの女はすぐには危害を加えてきそうにないな。出来る限りの情報を引き出さないと。


「今はいつだ」


「十と十四です」


「あれから三日か……」


 どうやら自分は三日間も流れていたらしい。途中でどっかに引っ掛かっていた可能性もあるのでどれだけ進んだのかは分からないが。


「それよりもお前は誰だ」


「あ、そうでした。申し遅れました。私はリサ。リサ・エルガテ・ゲルフ。ゲルフ王国の第一王女です」


「ゲルフだと」


 と言えばイスルギの隣国。案外、近くに飛ばされていたんだ。しかし、厄介な事になった。


「今はそれよりも治療を――」


 そう言ってリサが近づいてくる。彼女が王国側の人間だとすれば接近させない方がいい。

 出来るか、随分失ってしまったが。

 狂血は血を利用するが自分の血を作り出すのはかなり時間がかかる。だから、他者から吸収すれば効率よく変換できるのだが、あれから三日多少は回復しているだろう。


「近寄るな!」


 片腕と片足がない四つん這いの状態で狂血を使う。残った腕や足、腹部、顔に亀裂が入り裂傷し黒い血が溢れ出してくる。戦いを前提としていないので警告用として少しだけ。


「それって……」


 案の定、吃驚している。 

 この間に考えないといけない。

 運悪く飛んだ先は王国領のしかも王族の領地だった。もうテレポートはない。あったとしてもランダムテレポートでは確率論的に海が一番高い。次にやれば生命活動できない場所に飛ぶ可能性は非常に高い。だからと言って目的地を決めて飛ぶテレポートは魔力をバカみたいに食ってしまうのでどのみち使う事は出来ない。


 じゃあどうすればいい。


 恐らく世界規模で俺の討伐計画があるだろう。国に他国が介入してくるとは思えないけど、油断はできない。ここで彼女を殺して逃走するか。いや、そんな事をすればバレて火に油を注ぐだけ。「あの~、聞いていますか」なら、人質にして、待て待てゲルフと言えば第一王子と第二王女に継承権があると聞いた。理由は知らないけど第一王女は空気姫と呼ばれて実権を持っていない。「無視しないでください」そもそも俺が表に出るわけには行かない。彼女を脅してここで過ごせばその内死亡扱いに――ならないだろうな。国連中は死体を欲している。「無視されるのって結構辛いんですよ」一番の方法は彼女を何かしら利用するなんて事は考えずにこの場から逃走する事だけど、現実的じゃない。この体ではまず満足に歩けない。彼女の車椅子を奪うか、いや、この体だと負ける恐れがある。狂血なら、でも、万が一にでも使い過ぎれば死に直結する。「なんで無視するんですか、私だって怒るんですよ」それに、ここがどこだか分からない。隣の国と言っても環境は全然違うし山の中か。ここで諦めてどうする。彼女に協力を求める――ダメだって、国側の人間だ。表面上では賛成してくれるかもしれないけど、いつ憲兵を呼ばれるか分からない。それ以前にだ。ここにいるのは王女だ。つまり、どこかで監視されていて俺が何かしたら飛びかかって来るんじゃ。「ふ~ん、そっちがそんな態度をとるならこっちにだって考えはあるんだからね!」とにかく情報が欲しい。彼女を洗脳でも出来れば――


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