第21話 『罪人の行方』
その日、世界に激震が走った。
滅びたと言われていた災厄の血が再び現世に蘇ったと言うのだ。それも、偶然に蘇ったのではなく彼の孫だと言う。人々は混乱し、恐怖した。そして、早期に討伐される事を願った。
全世界の国々はそれぞれの対応を迫られるがほとんどの国は討伐隊を結成してもあくまでも自国内で発見された場合に限られるとその意思を確かに示していた。
しかし、それから三日が経ってもデュークの行方は分からなかった。最後にランダムテレポートを使って逃げたと分かっているため、あれの転移範囲は全世界に及ぶため捜索が進んでいない事もあるのだが、一般世論では瀕死の重傷で山奥にでも転移して事切れているであろうとされていた。
もちろん、国やユートを知っている世代は生きている前提で動いている。そうじゃないと、ユートはたった一人で十年もの間全世界を相手に一歩も引く事が無かった。それを受け継いでいる彼もまたそれくらいの事はして当然だ。
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体が引きちぎられそうだ。
既にちぎられていると等しいのだが全身の筋と言う筋が切れて失われていた痛みを感じる。これぐらいなら聖光で焼かれた痛みに比べれば軽いのだが、普通の人ならば激痛で意識を保つ事も出来ないだろう。
だが、デュークは何とかあの場所から脱出する事が出来た。今頃悔しがっているユーナの姿は――思いつかないが、それでも多少は悔しがっているだろう。
しかし、喜んでもいられない。今すべき事は体の治療もあるが、それ以上に現状の確認だ。世界のどこに飛ばされるか分からず負担も大きく使用を禁止されているランダムテレポートを使ったのでまずは焼かれた部分以外が残っている事を確認した。
そして、現実と向き合う事にする。
「これは、やばいな……」
確率論的に極小だと思うが、それでも自分の悪運を恨む。
まず、人気がない。これは僥倖だ。狂血の噂は流行り病よりも伝染力が強い。次に森の中、これもよかったと思う。今は人気がなくても市街地だとどこで見られているか分からない。
それでいて水の音が聞こえる。飲料水の確保は山の中では必須だと言える。そして、太陽の位置がほとんど変わらない。つまり、ランダムテレポートを使ったが酷く遠くまで飛ばされなかったことを示していた。
そう、ここまでならいい。
ここまでなら薬等々がないので治療が難しいが、それでもゆっくり治療が出来る。
――絶壁から生えている木の幹に洗濯物の様に干されている状況でなければ。
「くっ、上は遠いな。それに片腕じゃ突起物のない壁は登れない。下は……」
まだ、普通の谷底ならましだが、そこは川になっていた。水はありがたいがちょっとずれている。そこまで激流ではないのだが、流れてみたい気持ちにはならない。
「どうしたらいいんだ」
このままでは治療も出来ない。狂血を使えばどうにかなったかもしれないが現在負傷箇所の止血及び全身への血液操作に回していて他に回せないし、血が足りなくなったらそれこそ目も当てらない。
「どうなるんだろう……。まあ、なんとなくわかるよ。このままだと確実に助けは来なくて俺が体を滑らせて落ちるか、木が折れて落ちるか、二つに一つなんだろ!」
それを証明する様にびゅーと谷になっているここでは強い風が吹く。ぽろっと絶壁に映えている木の根元部分の石が崩れた。タイミング悪く強い風も吹いた。どうなったかと言えば木が根元から抜けるのと同時に体を滑らせて川に落下していった。
「ほらやっぱり!」
空中でせめてそこまで大きくない木を抱きしめて後はなるようになれ。
そのまま川の奔流に飲み込まれていった。




