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出会いと姉

……………


 ヴィルベルト様と初めてお会いしたのは七歳の誕生日のことであった。姫という立場は結婚相手をなるべく早く探して決めておく必要がある。だから婚約者候補の顔合わせであったように思う。

「アマリリス姫殿下と同い歳でございます、ルヴィエ公爵が子息、ヴィルベルトと申します」

 貴族と言えど、七歳という年齢に似つかわぬしっかりした丁寧な口調で、優雅に微笑まれたその表情にトクリと胸が高鳴った気がした。別に一目惚れしたわけではない。私だって顔だけで惚れたりはしないのだ。

 その後月に一度、交友という名目のもと、顔合わせは続いた。

 そんな中、事件は起こった。何人かの子息令嬢が集められ、お母様である王妃主催の茶会が開かれた。ひとりずつその子息令嬢に合わせた菓子が作られた。その時、例のごとく地味な私の菓子だけが忘れられ、用意されなかった。

 今ではそれほど気にしないでいられるが、当時はまだ幼く、しかも忘れられる事件が連続してあった。そんな背景があり、涙が零れてしまった。王女としては人前で泣くことなどあってはならず、情けないこととして教えられていたので、恥ずかしく思い、けれどさらに涙が止まらなくなってしまった。

 逃げるようにしてその場を離れた私に、ヴィルベルト様は追いかけて来てくださった。一人泣く私にハンカチで涙を拭ってくださった。そして、落ち着くまで一緒に居てくださり、お菓子の代わりだと、後日ネックレスを贈ってくださった。

 そんなヴィルベルト様の優しさに好きになってしまったのだ。

 政略結婚とはいえ叶わない恋ではないかもしれない。けれどこのまま行動しなければゲーム通り何も起こらないままこの恋は終わってしまうだろう。

そのときになってヴィルベルト様がヒロインと恋に落ちていたとしたら私は何もできないに違いない。

好きな人だからこそ好きな人の恋を邪魔するなんてできない。ならばヒロインと出会う前に私自身を好きになってもらうしかない。目指せ、正式婚約である。


………………


「おはようございます!姫様!」

 目を開けると眩しい朝日と共に目に入ったのはアンジェラのにこやかな笑顔だった。

「……おはよう……」

「さあさ、姫様。お召し物を選びましょう」

 アンジェラは非常にウキウキとしながら着替えを急かすが、私は前世も今世も低血圧なので、もう少しゆっくり起こして欲しい。追い立てられるようにして着替えの部屋に行くと侍女がずらりとドレスや靴を並べていた。

「姫様どれになさいましょう」

「髪飾りやネックレスもいろいろご用意していますよ」

「メイクは如何様にしますか?」

「……お任せでお願いします」

 侍女達に次々と投げ掛けられる言葉にようやっと返せたのはその一言だけだった。

 本来ならば自分でドレスから小物まで選ぶべきなのだが、前世から地味な私はオシャレというものから程遠かった。いつものことだが、アンジェラ達に任せておけば心配はない、と思う。

「姫様、色だけでも選んでくださいな」

 アンジェラの諭すような口調に、思い出す。

私は変わろうとしているのだ。全て任せきりでは今までと何も変わらない。アンジェラの言う通り、色だけでも頑張ってみよう。

「……ベ」

「ベージュは却下です」

 絞り出した声は直ぐ様アンジェラに却下された。

まだ言い切ってすらいないのに。眉を下げて悲しげな表情でアンジェラを見るが首を横に振られる。

「じゃあ、淡い、紫がいいわ」

「わかりました、今日のところはそれに致しましょう」

 ようやく合格が出て一息吐く。

私の要望に、侍女達はさくさくと靴やアクセサリーを用意していく。いつもより念入りにメイクされやっと解放されたときには少し疲れていた。外に出るわけでもないのにこれほどオシャレしてどうするのか。外に出るときを考えると物凄く怖い。

 ソファに凭れながら、アンジェラの用意したモーニングティーを飲んでいるとバタバタと騒がしい足音が外から響いた。

「アマリリス!」

 透き通った大きな声と共に部屋の扉が勢い良く開かれる。腰まである真っ直ぐなピンクプラチナの髪が風で舞い上がる様はその勢いを良く表していた。

「サフィニア姉様……おはようございます」

「ああ、そうね、挨拶を忘れていたわ。おはよう、アマリリス」

 部屋に飛び込んで来たのはアマリリスの上から二番目の姉であった。若干吊目で上がった眉はその快活な性格を今日もよく表していた。

「そんなことより!聞いたわよ!貴女、脱地味宣言したそうじゃない!」

 身を乗り出して話しかけてくる姉に少し引き気味になる。というか宣言まではしていない。

「姉様ちょっと落ち着いて。確かに変わりたいとは思っているけれど……」

 姉様とは違い、兄弟姉妹の中で一番真っ赤な自分の髪の毛先をいじる。自分の名前の由来にもなった自分の中で最も派手なのがこの髪だ。けれどこんな派手な髪の色でも地味さはさらに上を行く。例えどんなに派手に着飾ろうとも地味からは逃れられないというように。

「はあ、貴女はその内気で根暗をどうにかしないとどうしようもないわねぇ」

 そこで、とウインクひとつと共にされた提案に目を見開く。

「私主催のお茶会に出席なさいな」


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