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8 大宮駅(2) (山田さん)


「えっ学校やめるって……えええええ?なんで!?」


「なんで、って聞かないのも条件に追加ね。あと僕が学校にいなくなるからって手は抜かないでね。ペナルティも考えておくから」


「ペナルティあるとか知らない。それ聞くなみたいに言っておいて、あと出しなんてズルじゃん」

「いいよ、じゃあ、まだ購入前みたいだしこの話やめる?」


 樹神(こだま)くんが目線を送った先は桜井先生で、窓口待ちはあと1人だった。


「樹神くん、思ってたのとなんか違った」

「僕だっていろいろあるんだよ」

「ペナルティって……犯罪とかは無理だからね、いじめみたいなのもさ」

「さすがに反社なことはしないよ」


 またふと気がかりが生まれる。樹神くんは特進からさらに優秀者を取り出した選抜クラスだ。


「樹神くんって特進選抜だよね? そこが空いても意味ないんじゃないの。私さすがに選抜は無理」

「いま特進の子が選抜に1人移って、そのぶん特進が空くって聞いたよ」

「そうなんだ」


 そんなことまで詰めてあるんだ、学校と。やめる話が具体的なものだと実感する。それに樹神くんが学校をやめるって聞いて、桜井先生が妙に彼を修学旅行に行かせたがっているのが、理解できる気がした。


「最終、やるのやらないの」

「あ、やります! お願いします!」


 私は従順に答えながら考える。

 まあ、樹神くんの考えるペナルティなんてたいしたことないだろう。ダークサイド樹神くんが一生懸命考えた条件だって、結局、勉強に関することだもの。なんか漫画とかドラマであったよねそういうの。ハッパをかけるだけでじつはペナルティなんてないのかもしれない。

 そうタカをくくって私は樹神くんの条件を呑んだ。


 話が成立したので桜井先生のほうを確認すると、窓口に立ちながら、何やら電話をかけている。また何かトラブルでもあったのだろうか。

 

「買えたー」


 発券された切符を軽く持ち上げて、桜井先生が嬉しそうにこっちにやってくる。


「予約した便わりとすぐに出ちゃうし、これ落とすと本数かなり減るから、ちょっと急ごうか」


「先生、私、お昼の用意してなくてコンビニ寄ってもいいですか」

「それは僕も行きたいです」

「いーよ行かなくて」

「ええと、私、恥ずかしながら朝ごはんもまだで」


「大丈夫! 時間ないし、これ弁当ついてるから! あと1回盛岡で降りるから」

「「なんでですか!?」」

「わんこそば食べたいなって思って。俺、食ったことないし」


 なんだこの人、自由すぎる。しかも盛岡は後半の旅程に入ってるんだけど。先に行っちゃっていいのかな。私たちの修学旅行はまず東京駅から新函館北斗まで新幹線で行く。函館で宿泊して、それからまた海峡を渡って今度はバスで少しずつ東北を南下する。


 その時はわけがわからないと思ったのだけど、私は後からあのとき盛岡に行って良かったな、と思うことになる。樹神くんは函館から折り返しの復路コースで盛岡に立ち寄る前に、修学旅行を離脱する。


「スポンサーから許可下りたから! とりあえず乗ろう」


 スポンサーって誰?と思うが桜井先生はずんずん歩いていく。私はキャスターバッグがあるから質問しようにも追いつけなかった。


「先生、僕、着替えとかも何にもないんですけど」

「それも盛岡で! 駅ナカはきっとこっちと変わんないよ、たぶん……県庁所在地だし……たぶんだけど」

「そこは言い切ってほしいです」


 この人について行って大丈夫かな?と二人で一抹の不安を覚えながら、先生から切符をもらって、そこに書かれた10号車に向かった。



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