14 盛岡駅前
「100杯目!」「100杯目〜!!」
お祝いの言葉をかけられる。100杯クリアしたようだ。100杯超えると何かあるんだろうか。
「すごいよ樹神くん!」
「無理しないでね? 夕食もバイキングみたいな感じだから」
「いえ、大丈夫です。まだ時間あったらもうちょっと食べてもいいですか」
「まだいけるんだ、どうぞ……若いっていいね」
結局、124杯で終了した。
今日は午前中だけ学校に行って、昼休み前に帰宅する予定だったから弁当も持ってきてないし、朝も軽く済ませた。グランクラスの軽食はおしゃれでちんまりしていたからあまりお腹に溜まらなかったし。
意外とお腹が空いていたんだな?と渡された杯数のメモを見て思う。
もうちょっと食べても良かったけど、僕が食べている間に、山田さんが桜井先生とくだけた雰囲気になっていたから警戒してこのへんにしようと思った。
記念の手形をもらってお店を出る。
「まだ時間あるけどどこか行けるかなー」
「小岩井農場って行けますか?」
「あー、ちょっと行って戻ってくるのは厳しいかな」
「近そうに見えるのに」
「山田さん、岩手県って日本で二番目に広い都道府県で」
「知ってるよ」
「東京が7個入るくらいで」
「はははは! 思いのほか無茶苦茶広かった!」
山田さんはけっこう笑い上戸かもしれない。でも、自分の言った言葉に女子が笑ってくれるというのはなかなかいいなと思った。
「じゃあ盛岡城とか行く?」
「先生、お城好きなんですか」
「全然」
「ふふ、じゃあなんで提案したんですか」
なんだか先生と山田さんが妙に打ち解けている。なんでだろう。
先生は観光案内所でもらったチラシにざっと目を通しながら目を輝かせる。
「あ、銀行いきたい、俺こういうの好き」
「銀行ですか?」
「うん、たしか全員で行く時は中を全部見なかったはずだから」
僕と山田さんは観光チラシを覗き込む。文化財になっている岩手銀行・旧盛岡銀行の建築物だった。
「東京にあるじゃないですか、これ」
「似てるね、東京駅に」
「あれは大部分が復原でしょー」
「へー」
「音楽会とかもやってるんですね」
「やってる日に来たかったよね」
「じゃあ岩手銀行に決定」
「あっ決まっちゃった」
先生はすかさず手を上げてタクシーを止めた。
「こういうのって学習として路線バスとかで行くもんじゃないですか」
「滞在時間あまりないからね、いいよそこで苦労しなくても」
そう言って先生はタクシーの運転手さんに「赤レンガ館まで」と伝えた。こういう妙に合理的なところが桜井先生の面白いところだなと僕は思った。
タクシーは先生が助手席、僕と山田さんが後ろに座った。先生はタクシーの運転手さんとあれこれ話している。
僕は山田さんに話しかける。
「桜井先生の行きたいところにいく旅行になってきたね」
「はは! でもパッパと決めてくれるから楽」
「わかる。班行動の自由時間のルート決め、すごい揉めたから」
「へぇ選抜組でも揉めるんだ」
「あるね、いろいろ。みんな一過言あって行きたい場所が全員違うんだ」
「なんか高尚だ……うちは男子グループと女子グループの組み合わせパターンで揉めたよ」
「いいじゃない、青春ぽくて」
「そう言われると、あのぐだぐだなホームルームも思い出の1ページだと思えてくる!」
そう言って山田さんは笑った。そうやっていちいち笑ってくれる彼女を見て、ああ、山田さんとおんなじクラスだったら良かったのにな、と僕はちょっと思ってしまった。




