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当たり前じゃない世界  作者: 鳳蓮荘
第2章 動き出す世界
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第六十三話 迫る足音


十五年前――。


ZERO本部。


脅迫。


器物損壊。


放火未遂。


それでも蓬萊は活動を止めなかった。


会議室には緊張した空気が流れている。


蓬萊はメンバーを見渡した。


「今日から。」


「一人で行動することは禁止します。」


「必ず二人以上で行動してください。」


全員が静かに頷いた。


「皆さんの命も。」


「未来を守るために必要です。」


---


会議が終わる。


義一は蓬萊へ近付いた。


「蓬萊さん。」


「少し相談があります。」


蓬萊は振り返る。


「どうしました?」


義一は真剣な表情だった。


「ここ最近の事件を見ていて思いました。」


「今の警備では足りません。」


蓬萊は黙って聞いている。


「もしよければ。」


「うちの警備会社から応援を出せます。」


「休日になりますが、何人か協力してもらえると思います。」


蓬萊は少し驚いた。


「そこまでしていただく訳には……。」


義一は静かに首を振る。


「これは仕事じゃありません。」


「俺自身が、この活動を守りたいんです。」


少し沈黙が流れる。


蓬萊は深く頭を下げた。


「ありがとうございます。」


「皆さんにも相談してみます。」


義一は小さく頷いた。


---


その頃。


能力犯罪対策準備室。


担当者たちが資料を広げていた。


「ZEROへの脅迫。」


「器物損壊。」


「放火未遂。」


一人が静かに言う。


「能力犯罪は、人だけではありません。」


「思想を標的にする事件も増えています。」


別の担当者が頷く。


「社会の分断が始まっています。」


会議室は静まり返った。


---


午後。


詩織は資料を届けるため、一人で研究所へ向かっていた。


歩きながら小さく笑う。


「義一さん。」


「心配しすぎなんだから。」


その時。


背後で小さな足音がした。


詩織は振り返る。


誰もいない。


「……気のせいかな。」


再び歩き始める。


少し離れた電柱の影。


一人の青年が静かに立っていた。


帽子を深く被り。


表情は見えない。


青年は詩織を見つめたまま動かない。


やがて詩織が見えなくなると、小さく呟いた。


「……まだだ。」


---


夕方。


山奥。


中村一徳は伐採作業を終えていた。


切り倒された木々を見渡す。


「能力って。」


「本当に便利だ。」


軽く手を振る。


鋭い風の刃が飛ぶ。


枝が音もなく切り落とされた。


一徳は静かに笑う。


「能力を否定する人間に。」


「未来なんて語る資格はない。」


新聞記事を見つめる。


『ZERO 能力教育講演』


その文字を握り潰した。


「能力は。」


「人を幸せにする。」


「邪魔する奴はいらない。」


その瞳には、揺るぎない信念が宿っていた。


---


夜。


ZERO本部。


義一は一人、建物の外を巡回していた。


街灯。


駐車場。


裏口。


非常口。


異常はない。


だが。


胸騒ぎだけが消えない。


「……誰かいる。」


義一は振り返る。


建物の影で何かが動いた。


「誰だ!」


義一は一気に駆け出した。


路地を曲がる。


階段を駆け上がる。


屋上へ飛び出す。


しかし――。


誰もいない。


風だけが静かに吹いていた。


義一は辺りを見渡す。


「……逃げられた。」


その頃。


少し離れたビルの屋上。


青年が静かに義一を見下ろしていた。


義一は、その存在に気付いていない。


青年は小さく笑う。


「勘はいいな。」


「でも。」


「もう遅い。」


青年は夜の闇へ静かに姿を消した。


義一は屋上に一人立ち尽くしていた。


胸騒ぎだけが、さらに大きくなっていく。


第64話へ続く

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