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当たり前じゃない世界  作者: 鳳蓮荘
第2章 動き出す世界
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第六十話 守るべき未来


十五年前――。


能力犯罪が続けて発生してから一週間。


ニュースでは連日のように事件が報じられていた。


『能力関連事件 第23号。』


『能力を利用した殺人未遂事件が発生。』


『現在、警察が詳しい状況を調べています。』


『能力関連事件 第24号。』


『能力を利用した器物損壊事件。』


『能力関連事件 第25号。』


『能力を利用した恐喝事件。』


事件番号は日を追うごとに増えていた。


テレビを見つめる蓬萊は、小さく息を吐く。


「こんなにも早く……。」


---


その日。


ZEROは地域の公民館で講演会を開いていた。


蓬萊は集まった人々へ静かに語り掛ける。


「ここ数日。」


「能力を利用した事件が立て続けに発生しています。」


会場が静まり返る。


「事故は、不注意で起こることがあります。」


「ですが。」


「犯罪は違います。」


「人の心が引き起こすものです。」


参加者たちは真剣な表情で耳を傾けていた。


蓬萊は続ける。


「能力は便利です。」


「だからこそ。」


「責任があります。」


「このまま何もしなければ。」


「能力犯罪は、もっと大きな事件へ発展するかもしれません。」


会場の空気が張り詰める。


「皆さん一人ひとりが。」


「能力と向き合ってください。」


「未来を守れるのは。」


「私たち自身です。」


大きな拍手が響いた。


---


講演終了後。


詩織が蓬萊へ温かいお茶を差し出した。


「今日も素敵なお話でした。」


蓬萊は微笑む。


「ありがとう。」


義一も静かに口を開く。


「少しずつですが。」


「皆さんの表情が変わってきた気がします。」


蓬萊は頷いた。


「焦らず続けるしかありません。」


---


その頃。


イコル・ヤーレン研究所。


博士は政府関係者へ資料を渡していた。


「能力教育は急務です。」


「学校教育へ組み込むことを強く提案します。」


議員の一人が尋ねる。


「そこまで必要でしょうか。」


博士は迷うことなく答えた。


「必要です。」


「能力は。」


「教えなければ、必ず誤った使い方をする人が現れます。」


「だからこそ。」


「学校で学ばなければならないのです。」


議員たちは静かに資料へ目を落とした。


---


夕方。


ZERO本部。


詩織が新聞を広げる。


「今日だけで三件……。」


義一も表情を曇らせた。


「事件が増えるペースが早すぎます。」


蓬萊は静かに新聞を閉じる。


「まだ止められます。」


「止めなければいけません。」


その瞳には、まだ強い意志が宿っていた。


---


その頃。


政府庁舎。


会議室。


机の上には一枚の資料。


『能力犯罪対策準備室 設立計画』


官僚が口を開く。


「能力犯罪は今後さらに増えると予測されます。」


「専門組織の設立を急ぎましょう。」


全員が静かに頷いた。


会議室の外。


一人の青年が資料へ視線を向ける。


『能力犯罪対策準備室』


その文字を見つめ、小さく呟いた。


「能力犯罪専門か……。」


青年はわずかに口元を緩める。


「面白そうだ。」


そのまま静かに歩き去っていく。


誰も、その青年の存在には気付かなかった。


---


夜。


ZERO本部。


一本の電話が鳴る。


蓬萊が受話器を取る。


「はい。」


電話の向こうから震える声が聞こえた。


「蓬萊さん……。」


「また事件です。」


蓬萊は静かに目を閉じる。


「今回は……。」


「何があったんですか。」


電話の向こうで、ゆっくりと言葉が続く。


「能力を使った殺人未遂です。」


「被害者は……。」


「小学生の男の子です。」


部屋の空気が凍り付く。


詩織は思わず口元を押さえた。


「そんな……。」


義一も拳を握り締める。


「子どもが……。」


電話の向こうの声は震えていた。


「命に別状はありません。」


「ですが、あと少し発見が遅れていたら危なかったそうです。」


蓬萊は静かに受話器を置いた。


部屋には重い沈黙だけが流れる。


詩織の目から、一筋の涙がこぼれた。


「どうして……。」


「子どもまで巻き込まれなければならないんですか……。」


蓬萊は何も答えられなかった。


窓の外では、能力を使って無邪気に遊ぶ子どもたちの笑い声が聞こえる。


その笑顔を見つめながら、蓬萊は強く拳を握った。


「守らなければ……。」


「この子たちの未来を。」


その決意とは裏腹に。


能力犯罪は、確実に社会へ広がり始めていた。


第61話へ続く

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