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第六話 神童の重圧

昼休みが終わり、放課後になる。


朝霧湊たちが帰宅する頃、神童輝羅は学校とは別の施設へ向かっていた。


能力者育成プログラム。


国が将来有望な能力者を集めて育成する特別プログラムだ。


広い訓練場には、様々な能力者たちが集まっている。


炎を操る者。


風を操る者。


身体能力を強化する者。


その中でも、神童輝羅は特別な存在だった。


「神童が来たぞ。」


「今日もトップだろ。」


「いいよなぁ、才能がある奴は。」


周囲の声が聞こえる。


輝羅は聞こえないふりをした。


慣れている。


物心ついた頃からずっとそうだった。


天才。


神童。


将来を期待される能力者。


誰もがそう呼ぶ。


だが、その言葉が好きになれたことは一度もなかった。


訓練が始まる。


輝羅は屋外の訓練エリアへ向かった。


教官が声をかける。


「今日は電力効率の測定だ。」


「はい。」


輝羅は静かに頷く。


能力を発動する。


指先から小さな電流が走った。


だが教官は首を横に振る。


「無駄が多い。」

「もっと削れ。」

「……はい。」


再び集中する。


電力を抑える。


必要最低限まで絞る。


そして放つ。


バチッ――!


先程よりも強い雷が標的へ命中した。


教官が頷く。


「良い。」

「少ない電力で威力を上げる。」

「それがお前の課題だ。」


輝羅は汗を拭った。


能力が強いだけでは駄目だ。


より効率的に。


より正確に。


より強く。


それを求められる。


訓練が終わる頃には、空は赤く染まっていた。


周囲の能力者たちは帰り支度を始める。


そんな中、教官が輝羅を呼び止めた。


「神童。」

「はい。」

「最近、学校で友人ができたそうだな。」


輝羅の眉が少しだけ動く。


「それがどうかしましたか。」


教官はタブレットを操作する。


そこに表示された資料を見て、輝羅は目を細めた。


朝霧湊。


その名前が書かれていた。


「朝霧湊……。」


教官が静かに言う。


「世界で唯一の無能力者。」


輝羅は黙っていた。


「興味深いと思わないか?」

「別に。」


即答だった。


しかし教官は続ける。


「能力がない。」

「それなのに、能力物流事故で真っ先に飛び込んだ。」

「普通なら出来ることではない。」


輝羅は第2話の事故現場を思い出した。


泣き叫ぶ少女。


暴走する荷物。


そして――。


何も持たないまま飛び込んだ少年。


「……あいつは変わってるだけです。」

教官は小さく笑った。

「かもしれんな。」


そう言いながら資料を閉じる。


しかし最後に一言だけ残した。


「能力だけが、人の価値を決めるわけではない。」


帰り道。


夕焼けの空を見上げながら、輝羅は歩いていた。


神童。


天才。


期待される能力者。


そう呼ばれ続けてきた。


だが今日、教官の言葉が妙に頭に残っていた。


能力だけが、人の価値を決めるわけではない。


ふと湊の顔が浮かぶ。


能力がないのに、人を助けた少年。


輝羅は小さく息を吐いた。


「……変な奴だな。」


誰に聞かせるでもなく呟く。


夕陽が沈み始める。


そして明日もまた、屋上で昼休みが始まる。


第6話 神童の重圧 完

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