表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/10

第五話 三人の居場所

翌日のお昼休み。


朝霧湊は弁当を持って校舎の階段を上っていた。


目指す場所は屋上。


昨日、小春と輝羅から聞いた場所だった。


「……本当にいるのかな。」


少し緊張しながら扉を開ける。


春の風が吹き抜けた。


そして――。


「あっ。」


聞き慣れた声がした。


フェンスの近くで小春が空を見上げている。


その周りには数羽の小鳥が集まっていた。


「朝霧くん。」


「本当に来たんだ。」


小春は嬉しそうに笑った。


「うん。」


「ちょっと気になって。」


湊は小春の隣へ向かう。


小鳥たちは警戒することもなく、小春の肩や手すりに止まっていた。


「すごいな。」


「毎日来てるの?」


小春は頷く。


「うん。」


「この子たちとお話するの楽しいから。」


その時、一羽の小鳥が湊の近くへ飛んできた。


『優しそうな人。』


もちろん湊には聞こえない。


だが小春には聞こえていた。


思わず笑ってしまう。


「どうしたの?」


「ううん。」


「この子が朝霧くんのこと褒めてた。」


「本当?」


湊は少し照れくさそうに笑った。


その時だった。


屋上の扉が開く。


「……なんだ。」


「今日は二人いるのか。」


神童輝羅だった。


「あ、神童。」


湊が手を上げる。


小春も笑顔で挨拶する。


「こんにちは。」


輝羅は軽く頷いた。


そしていつもの場所へ向かう。


「そういえば。」


湊は前から気になっていたことを聞いた。


「なんでいつも屋上にいるんだ?」


輝羅は振り返る。


「蓄電だ。」


「蓄電?」


「俺の能力は無限じゃねぇ。」


そう言うと輝羅は空を見上げた。


「空気中の電気を集めてる。」


湊は驚く。


「そんなことできるのか。」


「できるからやってる。」


相変わらずぶっきらぼうだった。


すると小春が言う。


「だから空が好きなんだね。」


「別に好きなわけじゃねぇ。」


即答だった。


小春はクスクス笑う。


湊は思わず笑ってしまう。


「じゃあ雨の日は大変そうだな。」


輝羅は首を横に振った。


「雨だけならな。」


「だけなら?」


湊が首を傾げる。


「雷が鳴れば話は別だ。」


輝羅は空を見上げる。


「雷雨の日は電気が溢れてる。」


「むしろ一番調子がいい。」


湊は目を丸くした。


「そうなのか。」


「当たり前だろ。」


輝羅は呆れたように言う。


その時、小春の肩に止まっていた小鳥が羽を広げた。


『カミナリの人、今日は機嫌がいい。』


小春はまた笑った。


「どうした?」


湊が聞く。


「この子がね。」


「神童くん、今日は機嫌がいいって。」


「……。」


輝羅は無言になる。


湊は吹き出した。


「図星なんじゃないか?」


「違う。」


即答だった。


しかし少しだけ耳が赤かった。


穏やかな時間が流れる。


気付けば昼休みも残りわずかだった。


湊はふと思い出したように聞く。


「そういえば、能力者育成プログラムって何やってるんだ?」


輝羅は少し考えた後で答えた。


「効率化だ。」


「効率化?」


「少ない電力で、より強い雷を出す。」


「そのための訓練。」


湊は感心した。


「大変なんだな。」


「強くなるためだ。」


それだけ言うと輝羅は立ち上がった。


予鈴が鳴り始める。


「戻るぞ。」


「うん。」


「またね。」


三人は屋上を後にする。


階段を下りながら、湊は少しだけ笑った。


昨日まで知らなかった場所。


だけど今は違う。


ここには小春がいる。


輝羅がいる。


そして小鳥たちもいる。


不思議だった。


けれど悪くない。


そんなことを考えながら歩く。


屋上へ続く扉が静かに閉まった。


――そこは、三人だけの居場所になり始めていた。


――第5話 三人の居場所 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ