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当たり前じゃない世界  作者: 鳳蓮荘
第2章 動き出す世界
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第四十七話 囮と真実


東洋未来ホールディングス本社。


記者会見終了から数時間後――。


重役たちは慌ただしく社長室へ集まっていた。


「社長、このままでは危険です!」


「ご家族を安全な場所へ避難させましょう!」


社長は静かに立ち上がる。


「分かっている。」


窓の外を見つめ、小さく息を吐いた。


「私が迎えに行く。」


重役たちは一斉に立ち上がる。


「社長!」


「お気持ちは分かります!」


「ですが、お一人では危険すぎます!」


「能力犯罪総合対策本部へ相談してください!」


社長は静かに首を横へ振る。


「政府に相談している時間なんてない。」


「私は父親だ。」


「必ず家族を守る。」


そう言い残し、社長室を後にした。


───


能力犯罪総合対策本部。


御堂鷹臣は作戦室のモニターを見つめていた。


「社長は動く。」


篠宮玲司が地図を広げる。


「護衛車両を増やしますか?」


御堂は首を横へ振った。


「いや。」


「囮を使う。」


隊員たちが顔を上げる。


「社長一家は別ルートで移動。」


「こちらが用意した車列は全てダミーだ。」


篠宮が静かに頷く。


「エデンを誘い出すわけですね。」


「そうだ。」


「今回は、こちらが奴らを読む。」


───


都内某所。


高層ビル屋上。


グラビティが通信機を耳に当てる。


『政府が動いた。』


ヴォイアントの声が響く。


『予定通り、第二班は囮へ向かえ。』


『本隊は別行動。』


「了解。」


ノイズが監視カメラへ侵入する。


「監視映像、停止。」


「警察無線にも妨害を開始。」


ゲイルが笑う。


「また鬼ごっこか。」


ブレイブは少し緊張した表情で通信機を握っていた。


「通信状態、良好です。」


その瞬間。


ゲイルが肩を回した。


「今日も調子がいい。」


グラビティも拳を握る。


「能力出力が上がっている。」


ノイズも静かに頷く。


「集中力まで上がってる。」


ブレイブは不思議そうな表情を浮かべた。


「僕……何もしてませんけど。」


誰もその理由を知らない。


ただ一人、ヴォイアントだけが静かに微笑んでいた。


───


都内。


護衛車列。


先頭車両へ突風が吹き抜ける。


ヒュオォォッ!!


「来た!」


隊員が叫ぶ。


ゲイルが高速で車列へ飛び込む。


その瞬間。


御堂が日本刀を構えた。


ガキィィン!!


真空刃と日本刀が激しくぶつかる。


グラビティも地面へ降り立った。


「また会ったな。」


御堂が静かに笑う。


「前回より力が増している。」


「短期間で、ここまで強くなるとは思わなかった。」


グラビティは表情を変えない。


「こちらも成長する。」


その背後ではブレイブが通信を続けていた。


「全員、通信良好です。」


誰も気付かない。


鼓舞の能力が静かに仲間たちを支えていることを。


───


能力犯罪総合対策本部。


通信班が叫ぶ。


「ノイズを逆探知!」


「捕捉率十八パーセント!」


ノイズが小さく眉を動かした。


「……前回より速い。」


篠宮がモニターを見つめる。


「通信経路を予測しました。」


「このまま追います!」


ノイズは静かに笑った。


「切り替えます。」


通信経路が一瞬で変更される。


「逃げられた!」


通信班が悔しそうに声を上げる。


御堂は静かに頷いた。


「いや。」


「十分だ。」


「奴らも完璧ではない。」


───


その頃。


学校帰り。


湊、小春、神童の三人はスマートフォンでニュース速報を見ていた。


『能力犯罪総合対策本部とエデンが交戦中。』


神童が画面を見つめる。


「また始まったか。」


小春は不安そうに呟く。


「誰も傷つかなければいいけど……。」


湊は静かにニュースを見つめた。


「戦いは、何も生まない。」


「早く終わってほしい。」


三人は黙ったまま空を見上げた。


───


都内。


護衛車列。


グラビティが最後の一台のドアを開ける。


車内には誰もいなかった。


「……ダミーか。」


御堂は静かに日本刀を鞘へ納めた。


「今回は私の勝ちだ。」


その瞬間。


通信機からノイズの声が響く。


「グラビティ。」


「本物を発見しました。」


グラビティは静かに目を閉じる。


「……さすがだ。」


ヴォイアントの声が短く響く。


『見えていた。』


その一言だけだった。


グラビティは静かに向きを変える。


「本隊、移動する。」


エデン最後の作戦が、静かに動き始めた。


第48話へ続く

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