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当たり前じゃない世界  作者: 鳳蓮荘
第2章 動き出す世界
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第四十八話 守るべきもの


社長一家の避難先――。


能力犯罪総合対策本部の隊員たちが建物の周囲を警戒していた。


御堂鷹臣は静かに腕時計へ目を落とす。


「社長はまだ到着しないのか。」


篠宮玲司が通信を確認する。


「社長は護衛車両でこちらへ向かっています。」


「到着まで約五分です。」


御堂は小さく息を吐いた。


「……嫌な予感がする。」


---


その頃――。


社長は護衛車両の中で落ち着かない様子だった。


「本当に、この場所で家族は無事なんだろうな。」


護衛隊員が答える。


「ご安心ください。」


「御堂隊長が最も安全と判断した場所です。」


社長は険しい表情を浮かべる。


「本当に政府を信じていいのか……。」


「記者会見まで止められなかった。」


「今度も間に合わなかったらどうする。」


隊員は静かに答えた。


「必ず、お守りします。」


社長は首を横へ振る。


「私は待つだけの父親にはなれない。」


「家族は、この手で守る。」


---


都内某所。


高層ビル屋上。


グラビティが通信機を耳に当てる。


『本物の位置を確認。』


ヴォイアントの声が響く。


『予定通り進める。』


『家族を傷つけるな。』


『目的は確保だ。』


「了解。」


ノイズが端末を操作する。


「監視カメラ停止。」


「周辺通信、妨害開始。」


ゲイルが笑う。


「じゃあ、一気に行くか。」


ブレイブが通信状況を確認する。


「全回線、良好です。」


グラビティは拳を握った。


「今日も力がみなぎる。」


ゲイルも笑う。


「身体が軽い。」


ノイズも小さく頷く。


「集中力も上がっている。」


ブレイブは嬉しそうに微笑んだ。


「皆さんのお役に立てているなら良かったです。」


ヴォイアントは静かに告げる。


『開始。』


---


避難先周辺。


突風が吹き荒れる。


ヒュオォォォッ!!


「敵襲!」


隊員たちが一斉に構える。


ゲイルが建物の前へ降り立つ。


続いてグラビティがゆっくりと歩み出る。


御堂は静かに日本刀を抜いた。


キィン――。


御堂は目の前の男を見据える。


「……重力能力者、黒神零か。」


グラビティは静かに頷く。


「能力犯罪総合対策本部隊長、御堂鷹臣。」


「ようやく会えたな。」


御堂は刀を構えた。


「こちらも、お前を止めるために来た。」


グラビティは低く答える。


「お前を倒すことが目的ではない。」


「邪魔をするなら排除するだけだ。」


次の瞬間。


二人が同時に踏み込む。


ガキィィィン!!


日本刀と重力をまとった拳が激突する。


激しい衝撃が地面を砕いた。


互角――。


しかし御堂は違和感を覚える。


(強い……。)


(風能力者、疾風や鋼化能力者、鉄堂と戦った時とは明らかに違う。)


(能力が底上げされている……?)


グラビティは静かに口を開く。


「さすが隊長だ。」


「だが、今日は負けられない。」


---


能力犯罪総合対策本部。


「電子妨害能力者・才賀響姫を逆探知!」


通信班が叫ぶ。


「追跡率三十五パーセント!」


篠宮がモニターを見つめる。


「少しずつ捕捉できています。」


ノイズは静かに笑った。


「政府も学習していますね。」


通信経路を切り替える。


「逃げられました!」


篠宮は落ち着いていた。


「構いません。」


「次は、もっと追い詰めます。」


---


その頃。


社長は避難先へ到着していた。


玄関の扉が開く。


「パパ!」


娘が涙を流しながら駆け寄ってくる。


社長は娘を強く抱き締めた。


「もう大丈夫だ。」


「必ず守る。」


その瞬間――。


バキィィン!!


窓ガラスが砕け散る。


ゲイルが室内へ飛び込んだ。


護衛隊員が前へ出る。


「下がってください!」


社長は近くに落ちていた鉄製の消火器へ触れる。


黄金色の光が走る。


ギィィィン……


消火器は一瞬で純金へと変わった。


社長は黄金の盾を構える。


「この力は……。」


「家族を守るために使う!」


真空刃が盾へ激突する。


ガァァン!!


重い衝撃音が響く。


グラビティはその様子を見つめる。


「……守るための能力か。」


---


その時だった。


煙幕が室内へ広がる。


ノイズが通信を遮断する。


ゲイルが突風を巻き起こす。


視界が真っ白になる。


「しまった!」


護衛隊員が叫ぶ。


煙が晴れた時――。


娘の姿だけが消えていた。


「パパ!!」


遠ざかる娘の声。


社長は必死に手を伸ばす。


「待てぇぇぇ!!」


外では御堂とグラビティが激突していた。


ガキィィィン!!


日本刀と拳が火花を散らす。


グラビティが一歩下がる。


通信機からヴォイアントの声が響く。


『第三段階、完了。』


グラビティは静かに頷く。


「撤退する。」


ゲイル、ノイズもすぐに離脱した。


社長はその場へ崩れ落ちる。


「……すまない。」


娘の名前を呼ぶ声だけが、夜の静寂へ響いていた。


第49話へ続く

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