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当たり前じゃない世界  作者: 鳳蓮荘
第2章 動き出す世界
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第四十六話 揺らぐ正義


ヴォイアントの映像が消えた直後――。


東洋未来ホールディングス本社。


静まり返った記者会見場。


ヴォイアントの映像が消えた後も、誰一人として口を開けなかった。


やがて社長がゆっくりとマイクの前へ立つ。


「……先ほど公開された資料について、お話しします。」


会場中の視線が集まる。


「資料の内容は事実です。」


どよめきが広がった。


「私の能力は、物質を金へ変える能力です。」


フラッシュが一斉に光る。


「ただし、生物を金に変えることはできません。」


「私が触れた無機物だけが対象です。」


「一度金になった物は元には戻らず、一度に変えられる量にも限界があります。」


社長はゆっくり息を吐いた。


「私はこの能力を利用し、会社を大きくしました。」


「資源探知能力者の協力により世界中で資源開発を行い、多くの利益を得ました。」


「その利益の一部が政治家へ流れたことも事実です。」


報道陣が一斉に質問を浴びせる。


「裏金を認めるということですか!」


「政治家の名前を公表する考えは!」


社長は静かに頭を下げた。


「全て私の責任です。」


「ですが……。」


「社員には何の罪もありません。」


「どうか社員と、その家族だけは守ってください。」


深く頭を下げる社長の姿に、会場は再び静まり返った。


───


首相官邸。


緊急対策本部。


大型モニターにはニュースが映し出されている。


「社長が全て認めました。」


その一言で会議室が騒然となる。


「今すぐ証拠を回収しろ!」


「いや、自首すべきだ!」


「ここで隠しても意味がない!」


「黙れ!」


政治家同士が激しく言い争う。


隠蔽派。


自首派。


政府内部は完全に二つへ割れていた。


───


東洋未来ホールディングス本社。


営業部。


海外事業部。


電話が鳴り止まない。


「契約停止の申し入れです!」


「こちらもです!」


「欧州企業からも……!」


社員たちは必死に頭を下げ続ける。


「どうか契約だけは……!」


「必ず信頼を取り戻します!」


誰一人として諦めてはいなかった。


───


廃工場。


グラビティたちは静かにニュースを見ていた。


ブレイブが小さく呟く。


「本当に……世界が変わっていく。」


ヴォイアントの声が通信から響く。


『恐れる必要はない。』


『世界が変わる時、人は必ず混乱する。』


『その混乱から目を背けた結果が、今の社会だ。』


ブレイブは静かに頷いた。


まだ迷いはある。


それでもヴォイアントの言葉を否定することはできなかった。


『第二段階は終了。』


『最終段階へ移行する。』


グラビティたちの表情が引き締まる。


「了解。」


───


能力犯罪総合対策本部。


篠宮が解析結果を御堂へ報告する。


「逆探知は失敗しました。」


「ですが、一つだけ成果があります。」


「通信経路の一部を記録しました。」


御堂は資料へ目を通す。


「十分だ。」


「奴らも完全ではない。」


「必ず痕跡は残る。」


篠宮は静かに頷いた。


「追跡を続けます。」


御堂はモニターに映るヴォイアントの映像を見つめる。


「次は……こちらから動く。」


───


翌日。


学校。


教室では昨日のニュースが話題になっていた。


「エデンのおかげで政治家の悪事が明るみに出た。」


「でも、テロは絶対に許せない。」


「いや、やり方はともかく結果は正しかったんじゃないか?」


教室でも意見が真っ二つに割れていた。


湊は静かにその様子を見つめる。


そして小さく呟く。


「正しいことのために……。」


「間違った方法を選んだら。」


「それは本当に正義なのかな……。」


誰にも聞こえないほど小さな声だった。


───


廃工場。


ヴォイアントが静かに立ち上がる。


『グラビティ。』


「はい。」


『最終段階へ移る。』


一拍置き、静かに告げる。


『東洋未来ホールディングス社長一家を確保する。』


グラビティは迷うことなく答えた。


「了解。」


静まり返る廃工場。


ついに、エデン最後の計画が動き出そうとしていた。


第47話へ続く

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