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当たり前じゃない世界  作者: 鳳蓮荘
第2章 動き出す世界
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第四十四話 第二段階


脅迫メールの期限まで、残り十二時間――。


東洋未来ホールディングス本社。


社長は能力犯罪総合対策本部、政府関係者と向かい合っていた。


重苦しい空気が会議室を包む。


社長が静かに口を開く。


「……私は記者会見を開きます。」


政府関係者が顔を上げた。


「要求を受け入れるのですか?」


社長は首を横へ振る。


「いいえ。」


「私はエデンには屈しません。」


「ですが、社員やその家族を危険にさらすこともできません。」


写真立てに映る社員たちを見つめる。


「私一人の命ではない。」


「社員にも、守るべき家族があります。」


御堂は静かに頷いた。


「社長。」


「あなたの決断は、我々が必ず守ります。」


社長は深く頭を下げた。


「お願いします。」


───


能力犯罪総合対策本部。


作戦会議室。


大型モニターには記者会見場周辺の地図が映し出されていた。


篠宮が口を開く。


「会見会場までのルートは三つ。」


「通常なら全て封鎖します。」


御堂は腕を組んだまま答えた。


「奴らなら、それも読んでくる。」


篠宮は頷く。


「では護衛車両を増やしますか。」


御堂は静かに首を横へ振った。


「それも読まれている。」


会議室が静まり返る。


御堂は地図を指差した。


「囮を使う。」


「本物とは別に、同じ車両を三台走らせる。」


「エデンが動けば、その瞬間を叩く。」


隊員たちの表情が引き締まる。


「了解!」


───


廃工場。


ヴォイアントは静かに通信を開いた。


『政府は動き出した。』


『第二段階を開始する。』


「了解。」


グラビティが短く返事をする。


その隣ではブレイブが通信機材を操作していた。


「通信、全て正常です。」


ノイズが微笑む。


「上出来。」


ブレイブは少し照れくさそうに笑う。


その瞬間――。


スティールが箱を持ち上げる。


「あれ?」


「いつもより軽い……。」


グラビティも小さく目を細めた。


「身体が軽い。」


ブレイブ本人は気付いていない。


鼓舞の能力が、無意識のうちに周囲へ影響を与えていた。


ヴォイアントは静かにその様子を見つめる。


『成長しているな……ブレイブ。』


───


廃工場の奥。


二つの人影が静かに立っていた。


一人は工具を片手に、無数の武器を見つめている。


もう一人は、黒く鈍く光る金属へ静かに手を添えていた。


ヴォイアントが声をかける。


『フォージ。』


「準備は終わっています。」


『アルケミスト。』


「特殊金属の精製も完了しました。」


二人の姿は逆光に包まれ、その表情は見えない。


───


学校。


昼休み。


教室では先生が真剣な表情で話していた。


「現在、能力犯罪組織エデンによる事件が続いています。」


「放課後の寄り道は禁止。」


「不要不急の外出も控えてください。」


教室がざわつく。


「そこまで危ないのか……。」


「怖いな。」


小春は窓の外を見つめた。


「事件が、こんなに近くなるなんて……。」


湊も静かに外を見る。


「遠い世界の話じゃなくなった。」


「能力社会は、みんな繋がっているんだ。」


───


古い喫茶店。


博士は元ZERO関係者から一枚の古い写真を受け取っていた。


そこには若き日の蓬莱良樹が映っている。


笑顔で荷物を運ぶ姿。


老人が静かに話す。


「蓬莱さんは貿易商だった頃から、人を助けることが好きだった。」


「能力者も無能力者も関係なかった。」


「誰にでも手を差し伸べる男だったよ。」


博士は写真を見つめる。


「人を救いたかった男が……。」


「どうして、ここまで変わってしまった。」


老人は静かに首を横へ振った。


「変わったんじゃない。」


「世界が変わったんだ。」


博士はその言葉を胸に刻んだ。


───


夕方。


テレビ各局で速報が流れる。


『東洋未来ホールディングス社長、本日午後七時より緊急記者会見を行うと発表しました。』


全国がそのニュースに注目する。


廃工場。


ヴォイアントは静かに目を閉じた。


『始まる。』


『第二段階を開始する。』


その言葉と共に、エデンのメンバーたちが静かに動き出した。


第45話へ続く

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