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当たり前じゃない世界  作者: 鳳蓮荘
第2章 動き出す世界
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第三十九話 カウントダウン開始


エデンから脅迫メールが届いて翌日――。


都内に本社を構える大企業「東洋未来ホールディングス」。


社長、副社長、役員たちが緊急会議を開いていた。


会議室には重苦しい空気が流れている。


「……どういうことだ。」


社長が机を叩いた。


「裏金の証拠を握られているだと?」


副社長が青ざめた表情で答える。


「銀行から流出したデータを解析された可能性があります。」


「証拠も添付されていました……。」


役員の一人が震える声で言う。


「要求を受け入れますか?」


社長は首を横に振った。


「あり得ん。」


「テロ組織に屈すれば終わりだ。」


副社長が小さく呟く。


「しかし……。」


「家族のことまで書かれていました。」


会議室が静まり返る。


社長は深く息を吸った。


「警察と政府へ極秘連絡だ。」


「この件は絶対に外へ漏らすな。」


「はい!」


役員たちは慌ただしく動き始めた。


───


能力犯罪総合対策本部。


御堂の前には大量の資料が積み上げられていた。


「メールの送信元は?」


隊員が答える。


「海外サーバーを複数経由しています。」


「発信元は特定できません。」


別の隊員も報告する。


「銀行から奪われた現金も追跡しましたが、途中で完全に途切れています。」


御堂は腕を組んだ。


「計画的だな。」


「銀行強盗の時点で、ここまで想定していたのか。」


隊員が頷く。


「さらにSNSで新たな動画が投稿されました。」


大型モニターへ映像が映る。


黒い画面。


姿は見えない。


聞こえるのはヴォイアントの声だけだった。


『能力社会に絶望した者へ。』


『能力によって差別された者へ。』


『能力によって人生を奪われた者へ。』


『この腐った世界を変える覚悟があるなら、我々を探せ。』


『エデンは覚悟ある者を歓迎する。』


映像が終わる。


部屋が静まり返った。


御堂は静かに呟く。


「仲間を集める気か……。」


───


その頃。


イコル・ヤーレン博士は研究室で古い資料を広げていた。


表紙には大きく書かれている。


『ZERO 能力反対組織 機密資料』


博士はゆっくりページをめくる。


そこには十年前の写真。


若き日の蓬莱良樹。


そして、その横には博士自身も写っていた。


博士は目を閉じる。


「蓬莱……。」


「やはり、お前だったか。」


さらに資料を読み進める。


「ZEROの残党が……エデン。」


「ならば、次の標的は……。」


博士の表情が曇る。


「私だ。」


静かな部屋に、その言葉だけが響いた。


───


学校帰り。


湊と小春は並んで歩いていた。


「ニュース、毎日エデンばっかりだね。」


小春が少し不安そうに言う。


「うん……。」


湊が頷いた、その時だった。


白衣姿の老人が二人の横を通り過ぎる。


イコル・ヤーレン博士だった。


博士は湊の横を通り過ぎた瞬間、足を止める。


「……。」


一瞬だけ湊を見る。


だが、何も言わず歩き去っていく。


湊は首を傾げた。


「今の人……。」


「知り合い?」


小春が尋ねる。


「いや。」


「初めて会ったと思う。」


博士は振り返ることなく、小さく呟いた。


「……もう時間がない。」


───


夜。


小さなアパート。


一人の青年がスマートフォンを見つめていた。


画面にはエデンの動画。


青年は能力を理由に幼い頃から笑われ続けてきた。


「そんな能力、役に立たない。」


「ハズレ能力。」


何度も浴びせられた言葉が頭をよぎる。


ヴォイアントの声が静かに響く。


『能力社会に絶望した者へ。』


青年はゆっくり拳を握った。


「俺みたいな奴でも……。」


その瞳には、小さな決意が宿り始めていた。


───


その夜。


ニュース速報が日本中へ流れる。


『政府はエデンからの要求について、テロ組織とは交渉しない方針を固めました。』


その数分後――。


インターネット上へ、一枚の資料が公開される。


そこには政治家と企業の裏金の一部が記されていた。


日本中が騒然となる。


廃工場。


ヴォイアントは静かに時計を見つめる。


「カウントダウンは始まった。」


「世界は、変わり始める。」


第40話へ続く

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