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当たり前じゃない世界  作者: 鳳蓮荘
第2章 動き出す世界
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第三十七話 エデン


翌朝。


日本中が一つのニュースで持ちきりだった。


『昨日発生した都内銀行強盗事件について続報です。』


テレビ画面には、煙に包まれた銀行と多数の警察車両が映し出される。


『犯人グループは現金約三億円を奪い逃走しました。』


『さらに銀行システムへ不正アクセスを行い、顧客情報および企業との取引データが流出した可能性があることが判明しています。』


『犯人グループは、自らを"エデン"と名乗り、能力社会を否定する声明を残しました。』


『政府はエデンを危険性の高いテロ組織と断定し、能力犯罪総合対策本部を中心とした特別捜査本部を設置しました。』


テレビが街頭インタビューへ切り替わる。


「エデンって何者なんだ……。」


「また事件が起きるんじゃないの?」


「能力社会を壊すって、本気なのか……。」


SNSでも話題はエデン一色だった。


『#エデン』


『#能力者テロ』


『#銀行強盗』


『隊長でも逃げられたのか……。』


『怖すぎる。』


『早く捕まえてくれ!』


───


昼休み。


湊と小春は教室のテレビでニュースを見ていた。


「昨日の銀行強盗か……。」


湊は複雑な表情を浮かべる。


一方その頃。


能力者育成プログラム。


神童、天城、如月たちも同じニュースを見つめていた。


神童が腕を組む。


「風能力者……か。」


「同じ風能力でも、天城とは全然違うな。」


天城は画面を見つめたまま静かに答える。


「私の風じゃ、あんな真空刃は作れない。」


「風にも、あんな使い方があるんだね……。」


如月も小さく頷く。


「同じ能力でも、人によって全然違うんだね。」


神童は静かに笑った。


「能力の強さじゃない。」


「使う人間次第ってことか。」


その頃、教室では――


小春が窓の外を見つめていた。


「小鳥さんたちが怖かったって言ってた。」


「街のみんなが慌ててたから、動物たちも落ち着かなかったみたい。」


湊は空を見上げる。


「人だけじゃなく、動物たちにも影響してるんだな……。」


───


能力犯罪総合対策本部。


大型モニターには四人の顔写真が映し出される。


「銀行強盗事件の犯人グループについて、身元が判明しました。」


隊員が資料を開く。


「重力能力者。」


「黒神(くろがみ) 零(れい)。」


「コードネーム・グラビティ。」


画面が切り替わる。


「風能力者。」


「疾風(はやて) 迅(じん)。」


「コードネーム・ゲイル。」


次の資料。


「鋼化能力者。」


「鉄堂(てつどう) 剛(ごう)。」


「コードネーム・スティール。」


最後の資料。


「電子妨害能力者。」


「才賀(さいが) 響姫(ひびき)。」


「コードネーム・ノイズ。」


部屋が静まり返る。


御堂は四人の写真を見つめながら口を開いた。


「エデン……。」


「能力だけじゃない。」


「あいつらは組織として完成されている。」


隊員が続ける。


「四名全員を全国指名手配します。」


御堂は静かに頷いた。


「次は逃がさん。」


───


その頃。


人気のない廃工場。


無機質な空間には、銀行から奪われた大量の現金が積み上げられていた。


ノイズがノートパソコンを操作する。


「銀行サーバーへの侵入成功。」


「顧客データ、企業との取引データ、全て回収完了。」


ゲイルが札束を見ながら笑う。


「これだけありゃ資金には困らねぇな。」


グラビティは首を横に振る。


「金は目的じゃない。」


「目的を果たすための手段だ。」


スティールが短く尋ねる。


「政府は?」


その時、通信機からヴォイアントの声が聞こえた。


『政府側の戦力は、おおよそ把握できた。』


『特に能力犯罪総合対策本部隊長・御堂鷹臣。』


『あの男は想定以上だ。』


グラビティは静かに目を閉じる。


「……能力ではなく、人間が強い。」


ノイズが画面を見つめたまま言う。


「銀行データには政府機関や大企業との取引情報も含まれています。」


「利用価値は十分あります。」


ゲイルが不敵に笑う。


「次の作戦が楽しみだな。」


静かな廃工場に笑い声が響いた。


───


その日の夜。


イコル・ヤーレン博士は研究室でニュースを見つめていた。


『政府は本日、テロ組織"エデン"の壊滅を最優先事項とすることを発表しました。』


博士はゆっくりと目を閉じる。


「……始まってしまったか。」


その表情は、悲しみとも後悔ともつかないものだった。


静かな研究室に、その一言だけが残った。


第38話へ続く

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