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当たり前じゃない世界  作者: 鳳蓮荘
第2章 動き出す世界
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第三十六話 人を守る者


「作戦を開始する。」


コードネーム:グラビティ 重力能力者の静かな声が銀行内に響く。


エデンでは本名を呼ぶことはない。


組織に所属する者には、それぞれ能力にちなんだコードネームが与えられ、その名で呼び合うことが決まりだった。


「ゲイル。」


「了解。」


コードネーム:ゲイル 風能力者が不敵に笑う。


「スティール。」


コードネーム:スティール 鋼化能力者が無言で一歩前へ出た。


「ノイズ。」


「通信妨害、開始。」


コードネーム:ノイズ 電子妨害能力者の女性がイヤホンに触れる。


店内の監視カメラが次々とブラックアウトし、警察無線にもノイズが混じり始めた。


「行くぞ。」


その一言と同時に、ゲイルの姿が消えた。


「速い!」


警察官が叫ぶ。


次の瞬間――


ズバァッ!!


鋭い真空刃が御堂へ襲い掛かる。


御堂は薙刀を一閃。


キィン!!


金属音が銀行内へ響く。


真空刃を受け流した勢いのまま、御堂は体を回転させる。


「はぁっ!」


鋭い薙刀の一撃がゲイルへ向かう。


ガキィィン!!


その刃を、横から現れた男が腕で受け止めた。


火花が散る。


スティールだった。


銀色に輝く腕は鋼へと変化している。


そのまま鋼の拳が御堂を襲う。


御堂は後ろへ飛び退いた。


ドォン!!


床が砕け、コンクリート片が飛び散る。


「へへっ!避けたか!」


ゲイルが笑いながら再び高速で駆ける。


左右へ。


上下へ。


残像すら見えるほどの速度。


「見失え!」


ヒュッ!


ヒュヒュヒュッ!


幾重もの真空刃が飛ぶ。


御堂は薙刀を自在に操り、次々と弾き返していく。


しかし――


ヒュッ。


一枚の真空刃が頬をかすめた。


ピッ……


赤い血が、一筋流れる。


その場の警察官たちが息を呑む。


「隊長が……。」


「傷を……。」


御堂は親指で血をぬぐう。


そして小さく笑った。


「……いい連携だ。」


「まだ余裕かよ!」


ゲイルが再び突っ込む。


御堂も迎え撃つ。


薙刀が閃き、ゲイルを捉えた。


だが――


ガキィィン!!


スティールが腕を鋼化し、その一撃を受け止める。


さらに足も鋼へと変化させ、そのまま鋭い回し蹴り。


ドン!!


御堂は柄で受け止めるが、数歩後退した。


「腕……。」


「足……。」


御堂は静かに二人を見る。


「なるほど。」


「まだ部分的にしか鋼化できないのか。」


スティールの表情がわずかに動いた。


御堂は薙刀を構え直す。


「なら、狙う場所は決まった。」


初めてスティールが口を開く。


「……見抜かれたか。」


その様子を見ていたグラビティは小さく息を吐いた。


(一瞬で弱点を見抜いたか……。さすが能力犯罪総合対策本部隊長。)


その頃。


ノイズが通信機へ耳を傾ける。


「グラビティ。」


「交渉班が正面入口まで五十メートル。」


「北側に狙撃班。」


「裏口にも警察車両を確認。」


グラビティは静かに頷く。


「予定通りだ。」


すると通信機からヴォイアントの声が響いた。


『目的は達成した。』


『全員、撤退。』


ゲイルが舌打ちする。


「チッ……もう終わりか。」


スティールも静かに後退する。


グラビティは御堂を真っ直ぐ見つめた。


「今日はここまでだ。」


その瞬間。


銀行内へ大量の煙幕が広がる。


「逃がすか!」


御堂が踏み出そうとした、その時だった。


「きゃああっ!」


人質の女性が倒れる。


「ママぁ!」


幼い子どもの泣き声が響く。


御堂は煙の向こうを見る。


追えば追える。


だが、その視線はすぐに人質へ向いた。


薙刀を静かに消す。


「全員、人質の救助を最優先!」


迷いなく女性へ駆け寄る。


煙の向こうでは、四つの影が静かに姿を消していった。


遠く離れた場所。


その光景を見届けていたヴォイアントは、小さく目を閉じる。


「……やはり、お前はそういう男か。」


銀行には、救急隊のサイレンだけが鳴り響いていた。


第37話へ続く

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