↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
当たり前じゃない世界  作者: 鳳蓮荘
第2章 動き出す世界
PR
35/74

第三十五話 隊長


東都銀行。


規制線の外には報道陣が押し寄せ、テレビカメラが銀行の入口を映し続けている。


上空では報道ヘリが旋回し、緊迫した空気が街全体を包み込んでいた。


その時、一台の黒い特殊車両がゆっくりと現場へ到着する。


車体には白い文字で刻まれていた。


能力犯罪総合対策本部。


警察官たちの表情が変わる。


「来た……。」


ドアが開き、一人の男が静かに降り立つ。


黒いコートを羽織り、無駄のない足取りで銀行へ向かう。


その男こそ――


御堂(みどう) 鷹臣(たかおみ)。


能力犯罪総合対策本部隊長。


「隊長。」


現場責任者が駆け寄る。


「犯人は四名。能力は重力、風、鋼化、電子妨害です。」


「人質は約五十名。」


「現在も銀行内に立てこもっています。」


御堂は銀行を見つめたまま、小さく頷く。


「状況は把握した。」


短い返事だった。


しかし、その一言だけで周囲の警察官たちの緊張が少し和らぐ。


---


銀行内。


風能力者が入口へ目を向け、不敵に笑った。


「やっと来たか。」


電子妨害能力者がイヤホンに触れる。


「ヴォイアント様。」


『見えている。』


静かな声が全員のイヤホンへ流れる。


『能力犯罪総合対策本部隊長――御堂鷹臣。』


『予定通りだ。』


『風と鋼化で迎え撃て。』


『重力は人質を確保。』


『電子妨害は通信を維持しろ。』


「了解。」


---


重力能力者が人質へ手を向ける。


一人の女性の身体がゆっくり宙へ浮かび上がった。


「きゃああぁっ!」


銀行内に悲鳴が響く。


重力能力者は入口に立つ御堂へ視線を向ける。


「一歩でも近付けば、この女を地面へ叩きつける。」


御堂は女性を見上げた。


表情は変わらない。


「人質を利用するか。」


重力能力者は静かに笑う。


「利用?」


「違う。」


「強い能力を持つ者は称賛される。」


「弱い能力しか持たない者は見下される。」


「能力の優劣だけで人間の価値が決められる。」


「そんな世界を、お前たちは守っている。」


銀行内が静まり返る。


御堂は一歩だけ前へ出た。


「……能力がある社会も悪くないぞ。」


エデンの四人が御堂を見る。


重力能力者が眉をひそめる。


「何だと?」


御堂は落ち着いた声で続けた。


「腐らせているのは能力じゃない。」


「人間だ。」


その言葉に、風能力者が舌打ちする。


「綺麗事だ。」


御堂は首を横へ振る。


「違う。」


「能力は道具だ。」


「使う人間が一流なら、一流の能力になる。」


「逆に、どれだけ優れた能力でも、使う人間が三流なら、その能力も三流だ。」


重力能力者は鼻で笑う。


「道具だと?」


御堂は真っ直ぐ重力能力者を見据えた。


「強い能力じゃない。」


「強い人間がいるだけだ。」


その言葉を聞いたヴォイアントが、小さく笑う。


『……なるほど。』


『それがお前の答えか。』


---


御堂は静かに右手を前へ差し出した。


「来い。」


眩い光が右手へ集まり始める。


現場の警察官たちも、銀行内のエデンも、その光景を見つめる。


部下の一人が息を呑んだ。


「今回は……。」


光が弾ける。


御堂の手に握られていたのは――


一本の薙刀。


御堂は軽く薙刀を振る。


ヒュン――。


鋭い風切り音が銀行内へ響いた。


その瞬間。


ヴォイアントの声がイヤホンから流れる。


『気を付けろ。』


『あの男は……能力ではなく、人間が強い。』


風能力者が笑う。


「面白ぇ。」


鋼化能力者が拳を鳴らす。


「なら試してやる。」


御堂は薙刀を静かに構えた。


そして、互いの視線がぶつかる。


次の瞬間――


戦いの幕が上がろうとしていた。


第36話へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。