2食目・前
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前回の解決レシピ:宝くじ一等当せんから異世界へ!? チートな魔法屋台と相棒の地竜を手に入れ、最高の隠居(?)スローライフがスタート!
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地竜の「ベア」がのっそりと足を止めたのは、街道の脇にある一本の巨大なブナの木の下だった。
「ここにするか。見晴らしもいいし、風通しも最高だ」
俺――アキラは、六億円が化けた魔法のキッチンカー『アキラのキッチン』の側面を跳ね上げた。
カチリ、と真鍮の留め具が外れる音が心地いい。
内装は磨き上げられたステンレスと温かみのある木材で構成されており、異世界のものとは思えない清潔感に溢れている。
俺はエプロンを締め、まずは自分たちの昼飯の準備に取り掛かった。
前世でのコンサル仕事は、常に分単位のスケジュールに追われる地獄だった。
だが今は違う。時計を見る必要さえない。
「さて、まずは基本の『コンソメ』からだな。これさえあれば、何にでも派生できる」
神様から与えられた初期在庫の牛肉と香味野菜を、魔法の寸胴鍋に放り込む。
煮込み始めて数時間。
アクを丁寧に取り除き、極細のネル生地で濾すと――
鍋の中には宝石のような、透き通った黄金色のスープが溜まった。
その時だ。
「……あの、すみません」
消え入りそうな声がした。
顔を上げると、そこにはボロボロの服を着た、十歳くらいの少年が立っていた。
頬はこけ、目は真っ赤に腫れている。
「いらっしゃい。……と言いたいところだが、うちはまだ準備中でね。何か用かな?」
「あの、すごく……いい匂いがしたので。でも、お金は持ってないんです。ただ、その……」
少年は俯き、声を震わせた。
「村のヤギを……僕が当番だったのに、逃がしちゃって。見つからなかったら、僕はもう村にいられなくなるんです。おじさん、ヤギ、見ませんでしたか?」
俺はコンサル時代に培った、無意識の「現状分析」を開始した。
少年の足元。靴には湿った黒土がついている。このあたりは赤土のはずだ。
少年の腕。鋭い茨で引っ掻いたような傷がいくつもある。
少年の表情。絶望というよりは、極度の混乱と疲労。
「なるほど。ヤギの捜索か。……坊主、名前は?」
「……ニールです」
「いいか、ニール。混乱した脳は、目の前にある正解を見落とす。まずは座れ。話はそれからだ」
俺は、黄金色のスープを木製のカップに注ぎ、そっと差し出した。
「あ……でも、お金が……」
「これは『コンサル料』に含まれる経費だ。飲め。温かいものは思考をクリアにする」
ニールはおずおずとカップを手に取り、一口啜った。
その瞬間、彼の目が見開かれた。
「……おいしい。すごく、あったかくて、体に染み込んでくるみたいだ……」
「牛肉の旨味と、セロリに近い薬草の香りを閉じ込めてある。滋養強壮にもいい」
スープを飲み干す頃には、ニールの顔に赤みが戻っていた。
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