5 お祈りメール
「では案内します。ついてきてください。」
受付の男性は入口までだけらしい。
「娘のことは頼んだ…行ってくる。」
とまるで化け物と対峙してもう二度とæないような、そんなセリフを残して普通に帰った。
その後は、シスター服のお姉さんが引き継いで説明してくれるようだ。
「へぇ〜、教会なだけあって流石に広いわね。でもいいの? まだ働くって決めたわけじゃないのに。」
「いえいえ。私たちの大切な家族になるかもしれない方ですから。一人ひとり、大切にしなくては。」
「へー、それはそれは出来た組織ね。私には向いてなさそうだけど。」
「おやおや。明るく活発な方は、場の空気を和らげてくれますから。」
シスターは柔らかく微笑む。
「私だけですと、子供たちに畏怖の念を抱かれてしまいますので……。」
たしかに教会って、なんか怖いよね……。
シスターは、ある扉の前で立ち止まった。
「では、お入りください。」
扉が開く。
ブツブツブツブツ…… ブツブツブツブツ…… ブツブツブツブツ……
「きゃっ!? な、なによこれ……。」
「皆さん、こちらで働かれている方々ですよ。」
広い部屋だった。
……いや。
広いはずなのに、人で埋まっている。
机に向かった人々が、ぶつぶつと独り言を呟きながら、ひたすら紙を書いていた。
「働いてる……?」
よく見ると、皆ひたすら手紙を書いては封へ入れ、また次を書いている。
「な、何を書いてるの……?」
シスターは穏やかに答える。
「それはもう――」
その時、
ひとりの修道女が、死んだ目で呟いた。
「神のご加護がありますように、神のご加護がありますように。(ボソボソ)」
「お祈りメール!?!?!?!?」
「…なんで、ホントのお祈りを書いたメールを書いてんのよ。」
「ご活躍を心よりお祈り申し上げます…と。(カキカキ)」
「やめてっ!!そのフレーズ聞きたくない!!」
ミネルは思わず耳を塞いだ。
「ていうか、そもそもなんでこんなことを手紙で書いてるのよ。」
シスターは少し目を逸らした。
「いえ。なんかいちいち言うのめんどくさいかなって、」
「不純な動機っ!!良いのですか神様!!??」
「も、もちろん、多くの方にお祈りが届くようにと、道で出会う方々のポケットに欠かさず入れてますよっ!!」
「かつ迷惑メールだった!!」




