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第37話 王都査問会は北辺で

査問会は王都ではなく、北辺伯府の大会議室で開かれた。


 逃げたくても井戸も村も見える場所で、嘘をつかせるためだ。王都から来た査問官たちは最初こそ不満顔だったが、証拠綴りの厚さを見ると黙った。


 私は水質、患者表、死亡台帳、義援金名簿、鉱区契約、雪橋で押さえた銀貨箱まで順に提出する。


「流行病は存在しませんでした。存在したのは、水路汚染と補助金不正、そして土地買い叩きの計画です」


 ブルーノは最後まで形式違反を主張した。だが自分の白手袋から検出された封蝋片の色まで並べられると、さすがに目を伏せる。


 ハルバーグ子爵は国益を口にした。だから私は静かに返した。


「国益は、病人を増やした数字の上には立ちません」


 その一言で、会議室はほとんど決まった。


 査問官は閉山鉱区の即時停止、検疫命令の撤回、補助金と義援金の差押えを宣言する。ブルーノは職権停止、子爵は王都召喚。村の封鎖は正式に解除された。


 私はようやく息を吐いた。記録が人を救う瞬間は、いつも派手ではない。ただ、奪われたものが静かに元の場所へ戻るだけだ。


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