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第33話 義援金名簿の筆跡

その夜、私は寄付者へ送られた義援金礼状をすべて机へ並べた。


 被害村支援のためと集められた金は多い。だが礼状の書き出しが、どれも同じ癖を持っていた。『拝啓』の払いが右上へ流れる。前の事件で見た、代筆書記の筆だ。


「この字、どこかで」


「王都検疫局の副書記です」


 私は以前受け取った命令書控えを横へ置く。同じ払い、同じ『村』の旁の跳ね。義援金名簿と検疫命令書は同じ手で整えられていた。


「つまり補助金も寄付金も、窓口は一緒」


「ええ。病を作り、金を集め、土地を空ける。全部ひとつの帳場で動いています」


 ジークハルトは無言で封筒を差し出した。伯爵府が押さえた銀行控えだ。振込先はハルバーグ子爵の鉱業代理店、その名義人はブルーノの義弟だった。


「ここまで来ると、もう偶然では済みませんね」


「最初から済ませる気もない」


 私は礼状の筆跡写真をまとめ、証拠綴りの背へ新しい見出しを入れた。


『義援金名簿と検疫命令書の筆跡一致』


 人の善意まで盗む連中には、丁寧すぎるくらい丁寧な証拠がちょうどいい。


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