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第31話 北辺診療院公開診察会

公開診察会の日、北辺診療院の中庭には村人と役人と寄付者が集まった。


 私は最初に、流行病の広がり方と鉱毒の広がり方を並べた表を掲げる。人から人へ移るなら家族単位で時間差が出る。だが今回倒れたのは、同じ井戸を使った家ばかりだった。


「こちらがアイベン村の井戸別症状表です」


 南井戸を使う家で、しびれと腹痛が集中している。北井戸を使う家では発症がない。これだけで、病より水を疑うべき理由になる。


 次に私は瓶詰めした水を見せ、簡易反応で黒く濁る様子を示した。見物人のざわめきが一段深くなる。


「つまり村は、伝染病ではなく汚染水によって倒れた可能性が高い」


 ブルーノが割って入る。


「可能性では村を守れません」


「だから補助金台帳も見ます」


 私は重複患者表と空の隔離小屋の支給明細を掲げた。人数の水増し、食料の架空請求、検疫補助の満額支給。病の怖さを盾に、数字が好き放題膨らんでいた。


 沈黙のあと、村の老婆がゆっくり立ち上がる。


「わたしら、病人役だったのかい」


 その言葉が、一番重かった。


 私はうなずき、はっきりと言った。


「いいえ。利用された患者でした」


 記録を見せるのは、誰かを辱めるためではない。自分が何をされたのかを、本人たちへ返すためでもある。


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