表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/23

第22話 封鎖村から届いた赤札

アイベン村へ続く石橋の手前には、赤い封鎖縄が張られていた。


 関所番は私たちを見るなり慌てて帽子を取る。だが彼の後ろに積まれた薬箱は、熱病用ではなく鎮静茶と包帯ばかりだった。


「村人は高熱だと言ったのでは?」


「は、はい。ただ、みなさん熱が上がったり下がったりで……それより手の震えや吐き気がひどく」


 私はジークハルトと目を合わせる。伝染病なら最初に出るのは咳と持続熱だ。震えと吐き気ばかりが揃うのはおかしい。


 村へ入ると、戸口に座る大人たちの顔色は悪いが、寝込んでいる者は少ない。子どもは指先のしびれを訴え、老人は口の中が苦いと言った。どれも人から人へ移る病の広がり方ではない。


「井戸の水は?」


「三日前から鉄みたいな味がするよ」


 若い母親が差し出した水桶から、かすかな金属臭が立った。私は布で濾し、携帯していた試薬草を落とす。液面が鈍く黒ずむ。


「水です」


「病ではなく?」


「病に見せかけた何かです」


 封鎖を命じた文書を確かめると、王都検疫局の名で出された割に、検査医の署名欄だけが空欄だった。急いで作られた命令書だ。


 私はその場で封鎖縄を半分だけ解かせた。


「完全封鎖はしません。井戸を止め、別水源の給水を始めます。熱病扱いは保留」


 関所番が青ざめる。


「でも、王都の命令が」


「責任は私が持ちます」


 言い切った瞬間、背後でジークハルトが短く頷いた。記録が先、恐れは後。そう決めてしまえば、足は止まらない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ