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第18話 診療院の新しい灯り

北辺へ戻ったその日から、私は診療院の再編に取りかかった。


 未提出だった患者を正式登録へ戻し、村ごとの配薬箱に封印番号を付け、慈善寄付は寝台番号ではなく患者本人署名と村監査で二重確認する。派手さはないが、こういう仕組みだけが人を守る。


「主任、今日は薬が足りています」


 マルタの明るい声に、私はようやく息をつけた。


 診療院の夜間灯も増やした。以前は油代を理由に減らされていたが、補助金の流れが正常化した今なら賄える。夜の廊下が暗くないだけで、患者たちの顔が少し柔らかく見えた。


 夕方、フィルン村の母親が快方に向かった子どもを連れて礼を言いに来た。


「この子、昨日はもう笑えたんです」


 私は膝を折り、子どもの額に手を当てる。熱は下がっている。月白根一包が、やっと正しい人に届いたのだ。


 その光景を見ながら、ジークハルトがぽつりと言った。


「あなたが来てから、診療院の灯りが増えた」


「予算が戻っただけです」


「違う」


 彼は短く首を振る。


「人の顔だ」


 不意打ちのような言葉に、私は返答を失った。


 王都では数字を整えても誰も笑わなかった。ここでは、数字が戻ると人の顔色まで変わる。


 その違いが嬉しくて、少しだけ泣きそうになった。


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