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第17話 偽装療養の代償

最終審査は、拍子抜けするほど早く決着がついた。


 クラリッサは最初こそ泣いていたが、食事記録と侍女エルゼの証言が出ると、ついに顔を覆って黙り込んだ。エドガーは最後まで慈善運用上の便宜だと言い張ったが、北辺患者の番号改ざんが単なる便宜で済むはずもない。


「副院長職剥奪、施療院立入停止」


 監査役が処分を読み上げる。


 続けて、薬商会への営業停止勧告、事務長の拘束、クラリッサへの慈善金返還命令。誰も声を上げない。数字があまりにも明瞭だからだ。


 最後に院長が、小箱を私の前へ置いた。


「レティシア・フォーゲル。薬歴官としての印章を返還する」


 蓋を開けると、見慣れた銀の印がそこにあった。指先がわずかに震える。


 奪われたのは地位だけではなかった。十二年積み上げた正しさそのものを疑われたのだ。その証が今、ようやく手元へ戻る。


 監査室を出る直前、エドガーが低い声で言った。


「そこまでして勝ちたかったのか」


 私は振り返らない。


「勝ちたかったのではありません。戻したかっただけです」


 患者に届くべき薬を。私の仕事を。名前を。


 外へ出ると、冷たい王都の風の中でジークハルトが待っていた。


「終わったか」


「ええ」


 私は小箱を見せる。


 彼は短く頷き、それだけで十分だと言うように私の歩幅へ合わせた。


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