表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
14/40

第14話 病室に来た嘘

王都へ最終監査へ向かう前夜、クラリッサが北辺診療院へ現れた。


 厚い外套をまとい、青白い化粧で頬を薄くしている。けれど長旅の疲れはなく、侍女を二人従えた歩き方も安定しすぎていた。


「レティシア様と二人で話したいの」


 案内室で向かい合うと、彼女は初めて泣かない顔を見せた。


「私だって、最初は少し倒れるふりをするだけだったの」


「それで終わらなかった」


「エドガー様が、あなたより私のほうが守る価値があるって言ってくれたから」


 私は静かに息を吐く。


「価値を測るために、北辺の患者の薬を使ったの?」


「私は本当に苦しい時もあったのよ。誰かの中心でい続けないと、消えてしまいそうで」


 その言葉だけは少しだけ本音に聞こえた。けれど本音があるからといって、他人から薬を奪っていい理由にはならない。


 私は机の上へ一枚の処方比較表を置く。


「あなたが飲んだとされる量の月白根を、本当に病人が飲めば脈拍と体温が必ず変わる。あなたの記録には一度もその変化がない」


 クラリッサの目が揺れた。


「だから?」


「明日、王都で全部出します」


「エドガー様はあなたを愛していなかったのに?」


 刺すような声だった。けれど私はもう、そこを急所にはされない。


「ええ。だからもう、あの人に証明してもらう必要がないの」


 沈黙の後、クラリッサは笑った。ひどく歪んだ笑いだった。


「あなた、変わったわ」


「元に戻っただけよ」


 彼女が去った後、案内室の扉の外でジークハルトが待っていた。


「聞いていたのですか」


「必要なら入るつもりだった」


 その答えに、私は小さく首を振る。


「大丈夫です」


「顔色は悪い」


「怒っているだけです」


 そう言うと、彼は黙って私の肩へ外套を掛けた。


 もう一人で耐える必要はないのだと、その重みが教えてくる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ