表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
11/40

第11話 公開問診会

北辺診療院では、月に一度、主要寄付者向けの公開問診会を開く。


 私はその場で、重複患者と虚偽診断の差を示すことにした。人前で感情をぶつける必要はない。実在患者と偽装療養者の記録を並べればいい。


 会場には領内の夫人たち、薬商会、修道院関係者が集まった。王都からはエドガーの代わりに監査役が来ている。クラリッサ本人も、顔色の悪い化粧で現れた。


「本日は寄付の適正使用をご説明します」


 私は最初に、実在患者アンナの診療経過表を示した。発熱、投薬、数値変動、回復までがきれいにつながる。


 次にクラリッサの表を出す。高熱は続くのに脈拍は安定、薬の増減もなく、検査値の記載欄だけが空白で補われている。


「これは病状の記録ではありません。役割の維持です」


 会場がざわめく。


 クラリッサは悲鳴のような声を上げた。


「私だって苦しかった! エドガー様が、私が倒れていれば全部うまくいくって……」


「なら、あなたは知っていたのですね」


 私が静かに問うと、彼女は唇を震わせた。


「少しだけ……少しだけ大げさにしていただけ」


「北辺の患者の薬を奪ってまで?」


 返事はなかった。


 代わりに監査役が青ざめた顔で私を見る。


「原本処方箋を確認したい」


「その必要があります」


 私は頷いた。


「ここにあるのは写しです。原本が出れば、誰が後から改ざんしたかもっと明確になります」


 クラリッサはその場で崩れるように椅子へ座り込んだ。


 可哀想な病人という仮面が、とうとう人前で割れた。


 けれど私は勝った気がしなかった。本当に欲しいのは、彼女の転落ではなく、奪われた患者たちの薬と、自分の仕事を戻すことだけだったから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ