行先はどこ?
放課後 私立高見原学園 屋上コテージ
「お前らに協力するのは俺の役目だ。そもそも、俺の所属は何処だ?第三だぞ、復讐とか言ったら必要だろ?」
そりゃそうだと東哉は納得した。元々桂二は後ろから色々と支援してくれていた。本人もそう言っているので、今回の話は彼にとって今更の事だ。
「すまない桂二…いや、この場合はありがとう…だな」
「そうだな…誠一にそんな改まって言われると、ちょっと恥ずかしいだろ」
「なーにやってんのさ、見てるこっちも恥ずかしいよ」
その横ではイーゼルを立ててキャンバスにデッサンしている拓海が、デッサンから目を離さず桂二と誠一のやり取りを揶揄する。本人たちは友情ありきの会話だったのだが、そっち系の話にも聞こえるだろう。どうも女性陣も同じ様に聞こえたのか、部屋の隅でヒソヒソと話している。二人はそれを見て苦い顔、桂二は現実逃避し誠一は女性陣を睨む。
「違うからな…」
ボソッと誠一が言うも、まだチョッと怪しいなと天子と彩は半目で見ていた。拓海はその状況を見て筆をおくと、発言の責任を取るために話を逸らすべく話題を変える。
「あー、僕も協力するよ。莉奈さん桂二がいる所で働いているんだろ?間接的でも彼女の為になるならやるに決まってるだろ?」
「お前と言い東哉と言い…ブレないな」
「意見は同じだが、こいつと一緒にするな!!」
「それは僕のセリフだ!!」
額を突き合わせて威嚇しあう二人。それを見て誠一は相変わらず仲悪いなこいつらと溜息を吐くと、部屋の隅で話している天子がチョイチョイと手招きしていた。
「あの二人相変わらずだねぇー。まああの二人は放っておいて、風文さんから新たな依頼だって」
「依頼?」
昨日の告別式内での演説で風文は、今回の一件で第三部隊が少々表に出てきてしまっているので三か月ほど隊の活動を最小限だけにして痕跡を消すと言う。にもかかわらず、依頼とは?と誠一は頭を捻る。
その答えは、横にいる彩が答える。
「なんか外注と言う形でやるみたいよ?部隊と私達は違う組織って事にしているって。その実、七瀬さんが第三部隊との窓口になっているから微妙なんだけど…」
「まあ、俺が第三部隊の匂いを出さなきゃいいだけだ。ああ、彩さん俺の事は桂二で良い」
「ん、ありがと。まあ桂二…君が言ってるなら大丈夫だと思うけど。それよりも…斎さんテレビつけて動画サイトを起動してもらっていい?」
「解った…えーっと、大手の動画サイトで良いか?」
「それでお願い…えーっと風文さんからこの時間のニュース速報を見ろって、あーこれだ」
斎にリモコンで操作してもらって、スマートテレビで有名動画サイトからニュース速報ライブと書かれた動画をみる。
動画のタイトルは『速報 若き大関!!突然の引退 スポーツ界などの若きホープが若くして引退する謎の流れに迫る!!』だった。
10分後
「これはなんか…大変な事になってるな?」
「最近忙しかったから、あまりニュースの方に気をかけてなかったけど…大変な事になってる」
動画を見た後に喧嘩を止めて見ていた東哉と動画を見ながらスマホで情報収集している斎が眉間に皺を寄せながら呟いた。
動画の内容は概ねこうだ。
三か月ほど前の事だ、有名な格闘技興行団体の若き新進気鋭の選手が電撃引退したらしい。。それは珍しい事ではなく、故障などの様々な理由があって引退する事はよくある事だ。問題は将来を期待された選手だった事と、その理由を誰も知らない事だ。しかもご丁寧な事に、引退後は誰もその姿を見ていない事もこの話を大きくする。
「行方が分からない?」
「ネットニュースではそう言う事になってるけど…桂二何か知っているか?」
「いや、こっちもあまり情報がないんだ。…そもそも、この件を調べる事になったのは最初の引退した選手から始まって、三か月で15人程同じ道を辿ったからなんだ」
「同じ道って、引退したのか?」
「そう言う事だ。それで、今回の選手が引退する事が一週間前になって情報が入って来て、妙な事だと片手間に調べていたら…この試合動画を見つけたんだ。テレビに映すから見てくれ」
桂二が手元の端末経由でテレビの画面を変えると、試合風景が映し出される。胴着を来た二人の男が、各々の構えをして睨みあっている。
「画面左がベテランファイターの新見忠司、空手やレスリング…あとキックボクシングを使う選手。右側が高宮忍新進気鋭の若手21歳、こっちは柔道とレスリングと空手を使うらしい。…ほら、試合が始まる」
試合開始。先手を取るのはベテランの新見、牽制と様子見とばかりの左ジャブ。それを高宮は避けジャブからのローキック、彼はガードの下からじっと冷静に観察していた。お互いに有効打がないまま第3R、高宮の戦い方がガラリと変わった。先ほどまでの慎重な戦い方と違い、ガンガンと前に出ていく高宮。そこで誠一と彩・天子はピクリと目を見張る。新見の攻撃が一切当たらなくなり、その攻撃はすべてカウンターで彼に打ち込まれていた。
「すべてカウンター…一般人としては凄い洞察力だな」
「そうね…ただ、それは普通の人間ならと言う前提。多分『識者』ね」
「あの場所にいたら低出力の励起波が感じられたかも、じゃないとあの反応速度は一般人には無理ねー」
「だろうな、そうじゃないと説明つかない場面がいくつかある」
この場における戦闘職三人が冷静に分析する。動画は審判に手を挙げられ歓声を全身に受ける高宮、それを見ながら三人は、この選手は能力者だと断定する。
「って事は、そいつは能力者って事で良いのか…ん?能力者ってこう言う大会に出てないよな?」
「東哉が言う通り普通は出ない。と言うか、能力者が作っているコミュニティは数あるけど、ほとんどのコミュニティは公式の大会などには出場しない様にしている。…第三の方ではこの案件は、これが原因じゃないかと言われている」
「…?それじゃ今回の依頼ってなんだ?」
慌てるなと東哉を止めた桂二は端末を操作して、数人の人物の顔写真を映し出し本来の説明を始める。
「事前に調査したところ、この三か月で連続して引退した15人は全員能力者だろうと予想した。しかし裏どりを取って全員の過去を洗ったが、その傾向どころか能力に関する予兆は一切なかった」
「それは…、妙なんじゃないか?最近覚醒した私も、手を洗うと水が粘土みたいになって手から離れないとか、シャワーで溺れかけたりもしたぞ」
「…それは大変だったねー」
「斎さんの言う通り、能力者は覚醒直前何か妙な感覚で変な言動や行動をしたりする。だが彼らは揃ってそんな予兆は無かった」
「それじゃあ…まさか、『偽神薬』か!!」
誠一がそう言うと、桂二は無言で頷く。桂二の予想では、彼らは全員『偽神薬』によって能力を一時的に使っているか、『偽神薬』によって能力が本当に覚醒したかもしれないという事だった。
「たしかに、それだったら全員一気に能力者になるなんて事が起こりうるな…」
「でも、そうだったら問題は何?」
「『偽神薬』の出どころだ。半年ぐらい前にスポーツ界で薬物が蔓延しているって噂があったんだけど、薬物検査もしているからその噂は否定されてたんだ。一時は新型の筋力増強剤かと言われていたんだけど、それもない」
「だから『偽神薬』か…、こうやって依頼してくるって事はその出所を探るって事か?」
「概ね間違っていない。本当は我々第三部隊がそれを調査するつもりだったんだが、飯田さん達の件でこの件は一時凍結して、後日に再調査する予定だった」
そこまで言うと再び端末を操作し、監視カメラの映像を映し出す。そこには同じ建物に入って行く男女の引退したアスリートたちがいた。
「凍結する前に、引退したアスリート達が同じように同じ場所に行く姿を撮れた。この建物は最近起業した船会社『綿見クルーズ』の事務所だ。そして、彼等の行先は恐らくコレだ」
続けて映された画像には、大きな白い宮殿が海に浮かんでいるかのような荘厳な雰囲気を醸し出す船。船首は鋭く尖り、幾重にも重なった甲板が空へ向かって伸びている。側面には数多の窓が整然と並び、その一つ一つに海を望む客室が設けられていた。
最上甲板にはプールと庭園、夜には灯りのともるレストラン。船体中央から船尾にかけては、幾層ものデッキが階段状に連なっている。
誠一達はその船に見覚えがあった、最近テレビの地方ニュースでピックアップされた一週間後高見原に入港する豪華客船。
「日本一周するクルーズ船『神楽』だ」
予約投稿を間違えて、投稿してしまった…投稿してしまったのは仕方がないのでこのまま投稿します。
しくじったー




