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いつもの日々に  作者: ルウ
副話 第三部隊
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209/209

老兵達との別れと続く道

高見原中央区 サイファ警備保障高見原支社 大会議室


いつもの会議室とは違い、周囲の窓はカーテンが閉められ念入りにパーテーションを立て外から見えない様にしていた。パイプ椅子が並べられ、部屋の一番奥には額縁に入った写真が五枚並べられ花で囲まれていた。その写真の前には机があり、五つの桐の箱が置いてある。

写真に写るのは、飯田忠利・坂崎浩平・立科善三・高田真治・島田健の五人。それぞれの写真は全員が笑って映っていた。

これは告別式、今回の戦いで散って行った故人に最後の別れを告げる式だ。

ビル内で一番広い会議室を使い告別式をする事になったらしい。

部屋の扉が開かれ、儀礼的な服を着た集団が入り口から整然と歩いて入ってきた。

儀礼服の基調は神職の意匠を取り入れた深い墨黒、首元からは白を覗かせ上衣の墨黒その間に青灰の色を重ね、喪の静けさと祭祀の清浄さが同居している。

背中には第三部隊の月下美人の意匠とした隊章。

それを後ろから見ている同じ服を着た莉奈は、その幽玄かつ厳粛な雰囲気の中で悲しみに包まれていた。涙こそ流れていないが被衣(かづきと言って日本のヴェールのような物)の下では、目には涙を溜めて唇を締めていた。


「飯田さん…」


飯田達は東京本部での基礎鍛錬の時にかなりお世話になったし、同じ鍛錬メニューをした仲間でもある。同じ食堂でご飯を食べて、自分達は食べれないからと皆でデザートをくれたり。鍛錬のキツさや上手く行かない固有能力の錬成で落ち込んでいた時も、色々な話を聞いてくれ慰め励ましてくれた。みな不器用ながらも声をかけてくれたり、自分達は寿命が少ないからと孫娘の様に接してくれと頼まれたり…短期間ながら家族の様な気がしていた。

そんな彼らが死んだ、自分達の復讐相手に一矢報いて。


「…貴方達は私の幸せを願っていたかもしれません…でも、私はあいつ等を許せません」


そう莉奈は呟いた。莉奈はもう悲しみで胸が潰れそうだった、短いながらも絆を結んでいた人が死んだのだ。その切っ掛けになった桃山を許さない、自分の様な被害者や死んだ仲間、命を弄び人を消耗品の様に使う奴等。

莉奈は以前、夕暮れのバスの中で考えた事を再び決心した。

その時部屋に一人の男が入る。皆と同じような儀礼服、青灰色の紙で出来た花を胸に一つ。

第三部隊の統括、大隊長『三剣風文』その人が祭壇の前に立つと全員が申し合わせた様に姿勢を正し目を伏せる。


「…このような場は初めてではないが、私は何度でも言おう。生きて帰ってこないとは何事だと。指揮する私が言う言葉ではないとは思うかもしれない、だが仲間とはそう言うモノだ。あっちに行ってもこの言葉を覚えておいてくれ、貴方達は我々のかけがえのない仲間だという事を。」


この部屋、そしてこの告別式を配信して見ている全員が解っていた。皆は復讐・報復・応報の為に集まった者であり、飯田達の気持ちを知って理解できる者達でもある。


「そしてそれを解った上で言いたい、復讐の一矢になりよくぞ報いた。勇敢に戦った貴方達は我等の誉れである。安らかに眠って欲しい…黙祷」


風文の号令と共に全員が胸に手を当て、黙祷を始め…二分ほどで壇上を向いた。

壇上の風文が五人の写真を背にマイクを持つ。


「諸君。我々は、仲間を五人喪った。彼らの死によって我々は一歩進んだ。だからこそ我々は今一度立ち返らなければならない。君達がこの隊に入った理由はなんだ?子供を喪った者・恋人を亡くした者・友人を傷つけられた・未来を失った…様々な理由があるだろう、だが、それを引き起こしたものは一つ。我々はその一つに対しての復讐者である。」


復讐者、その言葉に莉奈は肌が泡立った。自分の在りように、今更気付いたような感覚。


「我らは復讐者だ。だから!!これ以上奴らに奪われるな、我等の命を相手に渡すな。我らが目指すは、完膚なきまでの復讐を!徹底的な復讐を!徹頭徹尾、容赦なく、悉く奴らの思惑を・欲望を・願いを潰す!!」


周りの空気が熱い、死者を送る雰囲気ではない。これは死んだ者へ決意を伝える炎。


「皆、旅立った仲間に誓うぞ!!我らの復讐は成し遂げると!!」


部屋の中が怒号の様な肯定の声に震えた。莉奈は拳を強く握りしめる。

 



安曇島 サイファグループ保養地 『海神』 シアタールーム


そこでは東哉と誠一、斎・天子・彩がLIVEで今も続く風文の言葉を聞いていた。東哉は感化されて零しを握り、誠一は目をつぶり哀悼の意を表していた。斎は目を見張り、天子は悲しそうに目を伏せ、彩は涙を流し泣いていた。


「誠一、俺は許せない…お前もそう思うだろ!!」

「おい、落ち着け」

「俺こそは、俺らこそは怒らなきゃならない。あんな、地獄を見た…おれらは!!」

「東哉!!」


立ち上がって怒り出す東哉、誠一は彼の肩を掴みながら落ち着けと促す。しかし東哉は止まらない、彼は思い出していたからだ。あの何も出来ない、無力で死を待つだけの実験動物の様な毎日を。


「…じゃねぇと、あいつら…浮かばれないだろ。そうだろ、お前だってそうだろう…誠一」

「…解ってるよ。気持ちは俺も…天子さんも、あの時の事はずっとずっと忘れない」


それを聞いて少しだけ落ち着いたのか、東哉はした唇を噛みいすに座り直す。誠一はこいつも自分と同じだと思った。自分の理不尽な事から人を守りたい、その気持ちもあの地獄の様な光景が根底にある。


「そうだよね、私達はあの時の光景を忘れない…ううん、忘れることが出来ない…。だからこそ、私も理不尽を切り伏せる為に力を付けた…」

「俺ら皆同じ気持ちなんだ。それに風文さんも言ってただろう、俺らもやるぞ?」


椅子に座り込んでいた東哉がポカンとした顔で見上げると、ニヤリと笑った誠一と目が合った。


「復讐をか?」

「そうだ。風文さんじゃないけど、俺らには復讐が必要だ。人を傷付けることじゃなく、守る事・暴く事・止める事で行う復讐だ」

「…都合よくない?」

「天子、シャラップ」


思わず口出ししてしまう天子だったが、誠一に睨まれ斎に怒られ手で口を押さえて黙り込む。まったくと溜息を吐きながら誠一は話を継ぐ。


「天子も言ってたが都合のいい言葉には聞こえるだろう。だけどな、俺はもうあいつ等のせいで心を乱されたくもないし悩みたくもないんだ。風文さんの言葉を借りるなら、あいつ等に何も奪われたくない。ストレスで憂鬱な日々を過ごしたくないってな」

「誠一…、フフッそうだよな。あいつらの所為で、俺らの普通の日々が失われるのも嫌だもんな………よしっ、その話乗った!!」

「…ああ、やろう」

「あー男だけでやるの?私も入れてよ!!」

「最近出会ったばかりだけど、私も入れて」

「友達だからな、私も協力する」


四人は顔を見合わせながら、病院の時とは少しだけ違う再度の約束。

もう一度みんなで学校の上で、この話をしようと誠一が提案すると全員が頷く。これで一区切りだと息を吐いた時、誠一は東哉がまだ演説中の風文さんを妙に釘付けなのを気付いた。


「東哉?」

「…やっぱりだ!!」

「どうしたの?」

「莉奈だよこれ!!元気そうだなぁ!!」


そう言って東哉は画面の左下で見切れている、被布を被った頭を指さして興奮していた。それを見た東哉以外は、執着とかそんなものを越えたモノとか何で解るんだよとかで引いていた。


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