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いつもの日々に  作者: ルウ
副話 第三部隊
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202/209

過去からのアドバイス

お盆休みなのでちょっと早く投稿しました。いつもこのスピードで投稿できればいいのですが、同時進行が多くて休みじゃないと無理なので今回が例外です。


「えっ?強くなりたい?」

「ああ、そうだ。こんな爺が強くなりたいとか笑える話かもしれねぇが、いっちょ頼むわ」


そう言われ青年、水上誠一はちょっと困った顔をした。


「えーっと、ですね…俺はそんなに強くないですよ?」

「はっはっは。お前さん、あれ見たらそうは言えねぇよ」


そう言って坂崎は訓練場の壁を指さす。壁には何かが激しく激突して穴が開いた跡があり、そこを中心として壁にひびが入っていた。


「うちの体術師範と手合わせして吹き飛ばしたんだ、ここの連中は皆あんたの実力は疑ってないさ。…まさか床と水平に吹き飛ぶとか初めて見たぜ」

「は、はは。未熟なだけです…」


これには誠一も苦笑い。以前、鍛錬と称して東哉と鍛錬していた時に、同じように東哉を吹き飛ばしていたのだ。後日、自分の師匠にこの事を話したら功夫不足と叱られて、絞られた記憶を思い出したのだ。


「いやいや、それでもさ。これでも俺は空手の道場を開いていたからな、能力者としての戦いは未熟だが武術じゃ見る目があるんだ。あんたはかなり強いよ」

「…ありがとうございます」

「だから、そんなあんたを見込んで『要訣』とか『奥義』なんて大層なものを望んでいるんじゃあねえんだ。俺が知らねえ能力者としての戦い方、その時に上手くやれるコツって奴を教えて欲しいんだ」

「コツ…ですか」


そう言う風に坂崎が聞けば、誠一は少し迷った後に口を開いた。




一瞬過去の事を思い出していた。一・二秒程度、それは今からやる事のヒントを貰った時の事だ。男も警戒してこちらに踏み込んでてないのには助かった、今の隙でやられる可能性もあったが…ようやく最期の時が来た。

青年は言った、自分の強さはただひたすらに積み上げたモノだと。それは基礎でしかないが、それが無ければ励起法を使ったとしても強くなれないのだと。


「これが最後だ、武術家として付き合ってくれよ!!」

「…良いだろう」


男が初めて声を出した、ストイックな奴かと思ったらノリがいい奴でもある。出会う場所や時が違えば、いい飲み仲間になってたかもなと思いながら一気に励起法を最大に。


「いくぞっ!!」


踏み込むと同時に下段蹴り、左右正拳、左中段回し蹴りの四連撃を放つ。しかし相手の男はさらに上を行く。下段蹴りは歩法で躱されて正拳は潜り抜けるように避けられ、回し蹴りは懐に入られ受けられた。しかもその全ての攻撃にカウンターを喰らい、その全てが急所打ちと丁寧に殺しに来ている。最後の回し蹴りに対して、受け流しながらも鳩尾に肘が入り込んでいた。

坂崎は内心でそれは好都合と笑う。なにしろ自分の身体は、間接以外殆ど結晶化し始めている。急所打ちなんて少しは痛いが、動きを阻害する程ではない。相手も手ごたえが違っているので気付いているだろう。

しかし、気付いたとしてももう遅い。

青年は言った、励起法を伴った武術にとって必要なものは洞察力だと。その点で置いて坂崎はかなりの経験を積んでおり、洞察力にはかなりの自信があった。


「その間合い、待ってたぜぇ!!」

「っ!!何故、いくら体の耐久力が高くても急所の一撃は耐え切れない筈!?」


蟷螂拳は主にスピードと連続技を主体として相手を倒す。励起法で強化され相手のスピードは、坂崎には追い付けない程だ。だが坂崎の固有能力による耐久力はその攻撃力が通らない。相手はそれも計算に入れて、すべてカウンターでダメージを入れてきていた。


「古式空手にゃ骨掛けって言う技があるんだが、それの応用でな?腹の筋肉を動かして鳩尾の周囲の筋肉を使って急所を狭めたんだ…それでも、ちぃと効いたがな」

「化け物かっ、チィッ」

「遅ぇよ!!」


坂崎は下がろうとする男の肘を掴む、同時に膝で同じように腹を狙うが手で防がれる。しかし、それも坂崎の予想通り…膝はダメージを与える為ではない。

手で防いだ男はギョッと顔を強張らせた、ダメージが思ったよりもない上に身体がフワッと空中に浮いたのだ。


「スピードは凄い、だが空中じゃどうだい?」


そう坂崎の読みはこの一瞬の為にある、空中であればあのスピードは殺される。そしてその空中に浮いている数瞬、坂崎は最後の一撃を打つために構える。

青年は言った。励起法の強化は全身に、それで行うのは自分で一番得意な技を全身全霊で撃ち込む事。


「身動き取れないだろう?さあ、俺の全身全霊を喰らってくれや!!」


打つのはただの正拳突き、数えきれないほど打ってきた。空手を始めて誰しもが最初に学ぶ型で、空手の代名詞のような技だ。

だからこそ、この技は自分の一番の得意技で一撃必殺を誇る技でもある。

型は一種のルーティンで、身体の関節が一瞬で緩み全身の力が抜けた。脱力から右足で蹴り左足で踏みしめ、身体を捩じり足からの力を拳に伝える。それを励起法の強化で行うと、拳の速度は音速を越え目にも留まらぬスピードで男の胸を打ち抜いた。


「ゴバァ…み、見事…」


拳は腕ごと男を貫いて、衝撃波は通路ごと入り口付近を爆発するように吹き飛ばした。

こと切れた男から腕を抜こうとすると、肩の部分でボキッと折れて男ごと床に倒れる。


「ははっ、勝ったが…こりゃ、もう駄目かねぇ」


自嘲するように笑うと坂崎の固有能力が止まったのか、身体が縮むと同時に身体がボロボロと崩れ落ちる。


「井上くん…高橋くん…石崎くん、仇は討った。…一緒に酒に飲む約束は、そっちに行ったら果た…せるな」

「ザキさん!!」

「ああ、真治…すまねぇな、俺はここまでだ。…あとは、トシさんを頼むよ」


いつの間にか崩れ落ちた坂崎のここの空間に大きな穴が開き、高田の声が聞こえた。それに応えた坂崎の声には力がない、状況が解った高田は言葉が出なかった。


「我が命 尽きてまだなお 志す…いい辞世の句だろ…」


そう言って坂崎は一気に結晶化して、砕け散った。砂の山になった坂崎の頭の部分に、穴から出てきた煙が覆い赤く染まった輪を持ち上げ穴へと持ち去った。




坂崎が散った、その少し前。そこから離れた場所で戦っていた高田と島田の二人は危機に陥っていた。


「ぐっ」

「健さん!!」

「俺の事は良い!!それより能力を維持しろ!!」


それは突然だった、強い風が吹いたと感じた。その瞬間に健が隣に立っていた高田を突き飛ばす。高田は何をと驚いた次の瞬間、彼がいた場所を透明な何かが切り裂いたのだ。突き飛ばして腕を戻す時に、その透明な何かに引き裂かれたのか健の腕から血が噴き出した。


「一体何が!?」


何があったと周りを見わたせば、暗闇から浮かび上がる様に現れる白い装束の男。黒く長い髪を後ろに流した細身の…鬼のような厳つい男。


「…そこは身体に合わせて、優男とか涼やかな細面とかじゃねぇのかい」

「…余計なお世話だ!!何で揃いもそろって顔・顔・顔!!俺の顔に文句があるのか!!」

「いや、なあ…?」

「私にふらないで貰っていいですか?」


雰囲気的に思ったような顔でなく、裏切られたと言葉を零す健。高田はそれに同意を求められとても困っていた。


「貴様らは任務とは別に殺してやる…この三薙ぎの神官『巫儀(こうなぎ)型信(かたのぶ)』が直々にな!!」


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