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【完結】流星を放つ鷹【鷹の眼の射手】  作者: まっしゅ@
第三章 出会いと激変

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第三十一射目

 アリアに到着して五日が過ぎた。

 食堂の手伝いも慣れ、お客さんと話す余裕も出てきてたので色んな話を聞いたりもした。


 手伝いの合間にアリアにあるモイ商会にも顔を出してみると、既に僕が作り方を教えた下級回復薬が並んでいた。

 遥か昔、今より錬金術が栄えた国で使われていた調合をディーセス辺境伯家が長年の研究の末に解明した回復薬。って設定だった。

 その名を【古式(アンティーク)回復薬(ポーション)】。

 そもそもディーセス辺境伯家って歴史に強い家柄なのかな?

 でもそれ以上に格好良い名前になったなぁ……、ユウリ印の回復薬って名前だったのに。

 個人名出されたら困るから配慮してくれたんだろうけど。


 そして今日は女将さんから、「まだ来たばっかりで、街を見てないんだろう?今日は一日アリアを楽しんでおいでよ」と言われたので街を見て回ってる。


 シンフォニア王国、東の副都アリア。

 王国で唯一海に面しており、海産物が獲れる港町でその港からは他国の商品が入ってくる。

 西もラ・ミリアム聖教国に面しているのだが、あちらは高額の通行税や流通商品の制限により商人の往来は少ない。

 他国との物流を一手に担っている反面、裏を返せば他国からの侵略の可能性が高く重要度が高いとも言えるので、街の造りは中々に特殊なものとなっている。

 特に目立つのは外壁だ。


「外壁が外から来る敵よりも街中から外に出ないように工夫されてるのは面白いけど、不思議な光景だよなぁ」


 本来外壁は街中に敵を侵入させないのを主な目的とするが、アリアに関してはどちらかというと、港から入ってきた敵を外に出さない様な防衛体制を敷いている。

 仮想敵の侵入ルートを考えてだろう。

 勿論、壁外を疎かにしている訳でもない辺り、衛兵や門兵の練度が窺える。


「お昼ご飯どうしようかなー」


 なんの目的も無く大通り沿いを色んな方面に歩いていたらいつの間にか昼近くなっていたので、何を食べようかキョロキョロしていると、見知った人影を発見した。


「リックさーん!」


 手を振りながら声を掛けるとこちらを振り向いて、手をひらひらと振り替えしてくれた。


「おぉー、奇遇だねぇ。ここの生活はどう?」

「リックさんの教えてくれた宿屋、ご飯も美味しいし、良い人達だしで凄く楽しいです」

「それは何より。ギルドで依頼は受けたりした?」

「それが今昼と夜だけなんですけど、白猫亭の食堂で手伝いをしてるので、ギルドには初日に顔出しただけなんですよ」

「何でまたそんな事を……」


 事情を説明すると笑いながら、「ユウリならやりそうだね」と納得されてしまった。


「昼飯は?食べてないなら一緒にどう?」

「今から探そうと思ってたので是非!」

「よし、じゃあ美味しい所あるから案内するよ」


 リックさんに付いていくと、狭い路地の先にある小さな店に着いた。


「ここだよ。少しボロいけど味は保証するから」

「はい、楽しみです!」


 扉を開けると取り付けられた鈴がなる。

 店内は年季は入っているものの、清掃が行き届いたお洒落なお店だった。


「はい、いらっしゃ……なんだ、お前か」

「お前かはないでしょ、父さん」

「え?えっ?」

「紹介するよ、俺の父親だ。ここは俺の実家の食堂」

「全く……。そこの愚息の父親のカインだ。よろしくな」

「はじめまして、ユウリと言います」

「おう、よろしくな。空いてるところに適当に座れ。何か食いたいの物はあるか?」

「父さんに任せるよ」

「じゃあ僕もお任せで」

「了解。おい、リック水はお前が出せ」

「え〜。俺客として来たのに〜」


 文句は言いつつも直ぐに水を出してくれるリックさん。

 まさかリックさん実家が食堂だなんて思わなかっし、お父さんとリックさん全く似てないし……。


「似てないでしょ、俺と父さん。俺は母親似なんだよ。まぁ母さんは俺を産んで直ぐに死んじゃったらしいから俺は見たことないんだけどね」

「そう……なんですね」

「そんな暗い顔するなよ。もう昔の事だからな」

「そうだぞ。ほら出来たから取りに来い」

「はいはい」


 リックさんが持ってきたのはご飯の上に生魚の切り身が乗っていて、それにタレがかかっている。


「生の魚は初めてか?普通は食えないが獲ってすぐにちゃんと血抜きしたら臭みは無くなる。それとこの辺で採れる香草と特性のタレで漬け込んだんだ。美味いぞ」

「初めてです。じゃあいただきます!」

「俺もいただきますよ」


 初めての生魚の味は吃驚するくらい美味しかった。

 世界には色んな料理があるんだなぁ。

 きっとここだからこんなに美味しいんだろう、少なくとも白猫亭では魚料理は多くても生は見たこと無かったから。


 食後に紅茶をいただきながらリックさんが思い出したかのように、


「あ、そういやユウリ。明日は宿にいるの?」

「はい、特に何もなければ宿で手伝いをするつもりです」

「分かった。なるべく忙しい時間帯は避けるが、お館様から屋敷に招待する旨を伝えに行くと思うから」

「リックさんが来るんですか?」

「多分俺が行くと思うよ。顔知ってるから話が早いし」

「分かりました。女将さん達にも伝えておいて良いですか?」

「まだ駄目だ。正式には決まるのは今日の筈だからね」

「じゃあ何でリックさんはあんな所に?」

「副隊長と先輩と俺は今日迄半分休みだったんだ。」

「半分?もう半分は?」

「お嬢様を二度も危険な目に合わせた謹慎ってところ」


 まさか褒められるどころか謹慎処分になるなんて、ディーセス辺境伯は厳しい方なんだなぁ。

 なんか会うのが怖くなってきた。


「因みに謹慎処分を言い渡したのはお館様じゃなくて俺ら不沈艦の団長だよ。因みに辺境伯との面会の時はいると思うから」

「うえぇ……」

「まぁ御二方とも基本は優しい方だから心配しなくて大丈夫。ただ……」


 フォローするか不安を煽るかのどっちかにしてもらえませんかね?

 煽られるばっかも嫌だけど。

 そして、ただ……何んですか?


「覚悟していた方が良いと思うよ」


 リックさんは僕から目を逸らし、遠い目をしながら呟いた。




 アリアでののんびりした生活はとうとう終わりになるのかな?

 一抹の不安を抱きながら、リックさんと元来た道を戻り、大通りで別れた。


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