第三十射目
2023/1/13
コメントにて、本文の会話にある
修正前
「そういえば、お昼はどうするの?」
「せっかくだから食堂で食べるよ」
「じゃあ時間になったら降りてきてね」
の部分において、「何故時間が分かるのか?」もご指摘いただきましたので、下記の様に加筆・修正を行いました。
修正後
「そういえば、お昼はどうするの?」
「せっかくだから食堂で食べるよ」
「じゃあもうすぐ出来ると思うから、少し休んだら降りてきてね」
ご指摘いただきありがとうございます。
無事アリアに着いた僕達は貴族用の入口からあっさり街に入った後、解散となった。
フラン様達はそのままお屋敷に帰り、不沈艦の三人は辺境伯や上司に事の顛末を報告するらしい。
その後情報の精査を行い、僕への報酬を渡す為に屋敷に出向いてもらうとの事。
別れ際にリックさんに宿と冒険者ギルドの場所を教えてもらい、日程が決まり次第宿かギルドに使いを出すから行き先を必ず伝えておくようにと言われた。
「ギルドに顔を出してから宿に向かおうかな」
まずはギルドに向かい、活動拠点の変更を申し出る。
問題なく受理され、今後は分からないが今日はとりあえず依頼は受けずにそのまま宿へ。
リックさんに紹介してもらった宿【白猫亭】。
いや、ソーラさんやロビンさんに聞くとまた高級宿言われそうだし、フラン様はそういうのにそもそも疎いだろうからね。
「すみませーん!どなたかいますかー?」
「はいはーい、ちょっと待っててねー」
「はーい、ゆっくり大丈夫ですよー」
「ありがとねー」
カウンターの奥から女性の声が聞こえた。
この宿の女将さんかな?奥を覗くと厨房で朝食の片付けか昼食の準備をしていて忙しそうだ。
リックさん曰く、宿泊客じゃなくて昼と夜は食堂として利用可能で、いつも賑わっている人気の宿みたいだし。
「出直しましょうかー?」
「大丈夫、大丈夫。お待たせー」
エプロンで手を拭きながら出てきたのは、ふくよかな女性だった。
見た感じ、母上と同じかもうちょい上くらいかな?
「食事ならもう少し待ってもらわなきゃいけないけど」
「いえ、宿ならここが良いと紹介してもらったんですよ。宿泊お願いしたいんですけど、部屋は空いてますか?」
「宿泊ね。部屋は空きがあるからうちは大歓迎さ。素泊まりなら一泊銅貨三十枚、朝食付きなら銅貨四十枚で昼も夜もここで食べてくれるなら料理が一品と飲み物一杯サービスするよ」
「じゃあとりあえず朝食付きで十泊、その後はまたその時でも良いですか?」
「勿論。じゃあ合わせて銀貨四枚、前払いで良いかい?」
「はい、お願いします」
「ありがとう。おい、ニーナ!お客さんを部屋に案内しておくれ!」
「はーい!」
厨房からトコトコと出てきたのは僕と年齢があまり変わらない女の子。
「うちの娘のニーナだ。歳は十七だからお客さんとあまり変わらないだろう?」
「僕が十五歳なんで二つ上ですね。よろしくお願いします、女将さん、ニーナさん」
「成人したてなのにしっかりしているねぇ。それに比べてうちの娘ときたら……」
「もう、私だって充分しっかりしてますよーだ。じゃあお客さん、部屋に案内するね。あ、お客さん名前は?」
「ユウリって言います」
「ユウリね。私の事はニーナって呼び捨てで良いよっ!あと敬語も無し!年が近いんだし仲良くしよっ!」
「分かった。ニーナ、改めてよろしく」
「うんっ!じゃあお部屋にご案内しまーす」
「お願いしまーす」
そういえば年の近い友達みたいな関係の人って今までいなかったから新鮮だなぁ。
世間話をしながら、階段を上がって一番奥の部屋に案内された。
「ここがユウリの部屋だよ。ロウソクは無くなったらお母さんか私に言ってくれれば持ってくるから。あと、身体を拭きたい場合はお湯が入った桶を持ってくるか裏の井戸で身体を流しても良いよ」
「分かった。ありがとう」
「そういえば、お昼はどうするの?」
「せっかくだから食堂で食べるよ」
「じゃあもうすぐ出来ると思うから、少し休んだら降りてきてね」
そう言ってパタパタと扉を出て廊下を小走りで走っていった。
「久々の個室だー」
鞄を降ろして外套を椅子にかけると僕はそのままベッドに倒れ込んだ。
正確には数日程度だったのだが、とても濃縮されて長く感じた。
「そうだ。今の内に浄化をしとこう」
ふと思い付き、ベッドから起き上がって衣服や防具と一つの魔道具を取り出す。
短い棒の先に小さい魔石が取り付けられたこれは、浄化の魔法が使える魔導具。
浄化とは本来死霊系の魔物に使ったり、毒や呪いに蝕まれた場合に使うのだが、実は衣服等の汚れも落とせる万能魔法。
因みに、こんな事してるのを教会関係者に見付かれば大変な事になるだろう。
聖魔法系統の加護はとても貴重でその殆どを教会が独占し、必要な際には高額なお布施という名の請求をされる。
その為、人目がある所では使うなと爺ちゃんに言われた。
そんな事を思い出してる間に全ての浄化が終わる。
綺麗になってはいるものの、やはり身体を拭いたり流したりはしたくなるのは僕だけなんだろうか?
「とりあえず……お腹減った。昼食楽しみだなぁ」
アリアで始めての食事に期待しながら、昼食迄の時間を久し振りにベッドでダラダラ過ごす僕だった。
昼食の時間。
「ふぅー。全部美味しかったぁ。食べられ無いかと思ったよ」
「もう、時間になっても来ないから見に行ったら寝てるんだもん」
「ごめん、ごめん。気が抜けたら眠くなっちゃって」
いつの間にか寝てしまっており、危うく昼食を逃すところだったのをニーナが起こしに来てくれて、どうにか食べることが出来た。
「直ぐに夜の支度しなきゃだから、早く部屋に戻って」
「あ、じゃあお詫びに何か手伝おうか?二人だと大変でしょ?」
「え?良いの!?助かるー!」
「駄目だよ、ニーナ。お客さんにそんな事させられないよ」
「だってユウリから言ってくれたんだよー?良いじゃんー」
「僕も何もしてないより身体動かしてる方が好きなので」
「そうかい?じゃあ……」
そうして、ここにいる間の昼と夜の食事が無料になる代わりに手伝いをする事が決まった。
そう、これが間違いだった。
この宿、めちゃくちゃ忙しい。
一瞬たりとも立ち止まる時間が無い夜の時間が終わって、美味しい賄いを食べつつも早速後悔する僕だった。
作者は飲食店でバイトしたこと無いので分からないのですが、昼と夜ってどっちが忙しいのかな?とか考えながら書いていました。




