第二十四射目
大男を引き摺って門まで戻ると、既に列が出来ていた。
こんな荷物を持ってこの長い行列に並ぶのは、人目もあるし凄く辛いんだよなぁ・・・。
ボヤいててもしょうがないので列の最後尾に並ぶと、衛兵の一人が走ってきた。
「君がユウリ君かな?」
「はい、そうですよ」
「ソーラ様から話は聞いている。その男を連れていくからこちらに」
「え?良いんですか?どうぞ」
「・・・・・・すまない。君が連れてきてくれないか?」
「・・・はい」
もしかして普通の人これ引き摺れない?
「ご苦労だったな、ユウリ君」
「これを持ってくるのは大変でしたが、それ以外は問題ないですよ」
「ではモンバル殿、よろしく頼む」
「承知しました。おい、連れて行け」
「はっ!」
大男は三人の衛兵達に連れられて行った。
今からあの男の背後を聞き出すのだろうが、多分無理だろうなぁ。
ああいうやつは口が硬いから死ぬまで情報を漏らさないだろうし、もしかしたらまともな話すら聞いていない可能性もある。
「ユウリ様、私の命を救っていただいて、誠にありがとうございます」
「いや、むしろ見張り役なのに直ぐに察知出来ず申し訳ありませんでした」
「いえ。私の不用心のせいです。扉をノックされてすぐ出てしまいましたから」
「ん?ノックされた?連れて行かれたのではなく?」
「はい。ソーラが起きなかったので、そのまま扉を開けたらいきなり視界を遮られて、気絶させられてしまいました」
「・・・それで、気付いたら馬車の中だったと・・・」
「はい・・・。お恥ずかしながらその通りです」
「フラン様、少し失礼します」
「あっ!?え!?ちょちょちょ、ちょっと!?ユウリ様!?」
「ユ、ユウリ君!?何を!?」
僕は答えること無くフラン様の首元の匂いを確かめる。
「この匂い・・・。ソーラさん!リックさん達は今何処に!?」
「え?宿に待機してもらっているが・・・」
「今すぐ宿に向かいます!ソーラさんもフラン様を守りながら来て下さい」
「一体どうしたのだ?」
「フラン様を呼び出した奴がまだ宿にいるかもしれません。そいつを捕まえに行きます」
「何だと!?」
「それにロビンさんとリックさんが危ないかもしれない!僕は先に行きます!」
「おい!待てっ!」
静止を聞かずに僕は急いで宿に向かう。
道なんて走っている場合じゃないので、申し訳ないけど屋根を飛び移らせてもらいながら最短で宿に。
門を飛び越えて玄関に着くと吃驚されたが、とりあえず今は二人の身の安全だ。
「ロビンさんとリックさんは今何処に?」
近くにいた従業員の女性に声を掛ける。
「えっと、そのお二人なら先程クウネル様と一緒に何処かへ・・・」
「遅かった・・・。因みに地下には何が?」
もう一度嗅覚、そして聴覚を使って場所を探すといきなり途切れてる場所がある。
「地下ですか?地下室には食料の保管庫と寝具の替えを置く倉庫がございますが・・・」
「分かりました。ありがとうございます」
困惑しているが事情を説明している暇はない。
僕は急いで匂いの続く地下室への階段へと向かった。
〜ユウリがフラン様を助け出した頃【ロビン&リックside三人称視点】〜
「副隊長達はフラン様見付けましたかねー?」
「そう願うしかない。我々は待つだけだ」
ロビンとリックは宿で改めて合流した後エントランスで待っていたが、何かあれば知らせると担当の従業員クウネルに言われ、自分達が泊まった部屋で待機をしていた。
口には出さないが、自分達は何も出来ないのかと悔しがっている二人の耳にノックの音が届く。
「クウネルでございます。ソーラ様から伝令が来たので、ご案内したい場所がございます」
「副隊長から?ロビンさん、行きましょう」
「あぁ」
何かしらの情報を得たのだろう。とクウネルに言われるがまま付いていくと、地下室への階段を降りていく。
「地下に何かあるのか?」
「はい、表向きには食料庫とその他倉庫がございます」
「表向きには。ねぇ。じゃあ他には何が?」
「従業員でも一部しか知らないのですが、賊が侵入した時に捕らえとく為の牢と緊急時の脱出用の地下道がございます」
地下倉庫の一箇所の壁の一部にクウネルが魔力を流す。
すると、壁が扉のように開いた。
「こちらでございます」
「流石貴族御用達の宿ってところかねぇ」
「お褒めに預かり光栄です」
更に階段を降りると、クウネルが言った通り牢屋が並んでいた。
「この牢屋・・・。魔導具が使われているのか?」
「左様でございます。魔法が使えないように、魔封じの魔導具が置かれております」
「そんなに厳重にする必要が?」
「貴族の方々の命を狙う不届き者ですから、万が一がないように。ですよ。」
「で?その不届き者はいないようだけど、何でこんな所に連れてきたのかな?」
「それはソーラ様の伝令が・・・」
「伝令が直接私達に何も伝えない訳ないだろう?」
「それに一部しか知らない所をなんで半年前はいなかったあんたが知ってるのかも気になるねぇ」
この宿はディーセス領土内にある街の貴族御用達とだけあり、ディーセス辺境伯も王都への旅の途中で使う事がある。
その際に、護衛として動くので従業員の顔はある程度知っていたのだ。
「・・・流石にそこまで馬鹿ではなかったか。いや、失敬」
「貴様、何者だ」
「何者だと聞かれて答える筈ないでしょう」
「だったら力尽くで!・・・ってまさか、お前!?」
「ようやく気付きましたか。牢の中しか対象でない筈の魔導具・・・。それを何故感じる事が出来たのか」
「魔導具の反転。お前、錬金の加護持ちか」
「御名答。流石、腐っても不沈艦の一員ですね」
魔導具の反転。
本来対象である場所や人物に対しての作用を反転の術式を掛けることにより本来の対象以外に作用を移す事が出来る、高度な錬金魔法。
「そして、そもそも戦闘向きではない加護を封じられたところで私は痛くも痒くもございません」
「それは職種が封じられてない俺達も一緒だ!」
「ふんっ!」
二人が剣でクウネルに斬りかかるも、その場にいなかった。
そして、背後から声を掛けられる。
「所詮《剣術師》ともう一人に至っては戦闘系職種ですらない《調教術師》。これでも私は《暗殺王》です。捉える事も出来まい!」
「くっ・・・」
「リックっ!」
リックの右腕が切り裂かれる。
致命傷は避けたものの、もう満足に剣を振るえそうにない。
英雄級の職種ともなれば騎士団でも団長クラスだ。
上級が二人、そのうち一人は戦闘職種でなく、更に加護も封じられている。
絶望的な状況だが、負けられない戦いが始まった。




