第二十三射目
またもや少し長くなりましたが、許容範囲内!
「ソーラさん!ロビンさん!」
前から走ってきた二人に合流しようと声を掛けた。
向こうもこちらに気付いていたのか、真っ直ぐにこちらに駆け寄ってきたので、話を聞くために立ち止まるとそのままソーラさんに胸倉を掴み上げられた。
「お嬢様を何処へやった!正直に言わないとその首斬り飛ばすぞっ!」
「副隊長、落ち付いて下さいっ」
「ソーラさん!?何があったんですか!?」
「君が一番よく知っているだろう!?早くお嬢様の居場所を教えろ!」
「だから何の事ですか!?説明して下さいよ!」
「まだ白を切るつもりなら容赦は出来んぞ!」
駄目だ。
今のソーラさんに何を言っても通じる気がしない。
だって手を離したと思ったら、槍をこちらに向けて構えてるし、穂先は炎が燃えている。
周りからも、「何だ?」「喧嘩か?」と声が上がり、人が集まり始めている。
申し訳ないけどこうなったら……。
「副隊長、こんな所でそれを使ったら周りに被害が!」
「黙れ!」
「ですが!」
「黙れと言っている!お前はお嬢様の……っ!!」
乾いた音が響いた。
ソーラさんが僕から目を離した瞬間、僕は触覚強化の加速で近付き、頬に平手打ち。
一瞬の事で、混乱しているソーラさんに改めて話し掛ける。
「ソーラさん、冷静になって下さい。フラン様の身に何かがあったのは分かりましたけど、詳しくは分かりません。ただ、今貴女がやるべき事はこんな事じゃないでしょう?」
「副隊長……」
「……すまない。目的を見失っていた……」
「何かあったのか!?」
この街の衛兵が数人走ってやってきた。
周りの誰かが通報したのだろう。
ソーラさんはロビンさんにその場を任せて、僕を連れて走り出す。
「先程はすまなかった」
「いえ。そんな事よりもどんな状況ですか?」
ソーラさんは詳細を話してくれた。
「確かに僕が出ていってからそんなに経ってないから疑われますね」
「それは本当に……」
「もう過ぎた話です。それに急げばまだ間に合います」
「何故だ?」
「僕が西門か出た時にはまだ馬車の出入りはありませんでした。その後も西門付近にいましたが、近くを通れば僕の加護で分かる筈です」
「そうなると他の入口か」
「もし相手が商人を装って最短で街を出るのなら……」
「商人街から1番近い北門か!」
「可能性が高いのはそこだと思います。それに僕が戻った時間くらいから馬車が増えたので、街を出てまだそこまで時間が経ってないと思います」
「ではすぐに北門に向かう!」
「はい!」
僕の予想は当たってくれてると良いけど……。
北門に着き、ソーラさんが門兵に事情を説明する。
不沈艦の名前が出て門兵も吃驚していたが、迅速に対応してもらい、ロビンさんとリックさんへの伝令と街の外へ出る許可が出た。
「あとはどちらに向かったかだな……」
「あ、ちょっと待って下さいね」
ソーラさんは焦れったそうにこっちを見ていたが、方向を間違えたらフラン様の身がより危険になるから少しだけ待ってほしいと伝え、僕は嗅覚強化を使って、フラン様の行方を追う。
視覚は距離が遠すぎた場合視えないし、聴覚は他の雑音が多く、距離が分からないので、残った匂いを頼りにすることした。
「…………いた」
「分かったのか!?」
「はい!ここから街道沿いを真っ直ぐ北に進んでいます!」
「それは不味い。そのまま進むとディーセス領から出てしまう!そうしたらこちらでは手が出せなくなる!」
「つまりそれまでに確保すれば良いのですね」
「距離は!?」
「正確には分かりませんが、五・六キリルは進んでいると思います」
「急いで門兵に馬を……」
「いえ、こうした方が早い……、失礼します。よっと」
「きゃあっ!?な、な、何を!?」
「走ります」
「へ?」
「しっかり僕に掴まってて下さいね?落ちちゃいますよ」
「どういうこ……、きゃああああああぁぁぁぁ!!」
最速で行くならこれしか無い。と僕はソーラさんを抱え(所謂お姫様抱っこ)、割と自重無しで走る。
だって馬よりもこっちの方が早いし、僕は馬に乗った事もないからね。
それにしても、ソーラさんも女の子っぽい悲鳴を上げるんだな。
少し走ると直ぐに馬車が視えた。
音も匂いも間違いない、あれだ。
「視えました!前方一キリルちょっと前にいる馬車です。降ろしますよ」
「はえ?いや、最低五キリルはあったのだろう?それに見えたって何処にそんな……」
「ソーラさん!ここから全力で走って下さい!」
「え?わ、分かった!君は?」
「僕は……、ここから射ちます」
指輪から古代樹の弓と矢筒を取り出し、呼吸を整えながら矢を番え、弓を引く。
何か言いたそうなソーラさんだったが、僕の雰囲気が変わったのを察して、行動に移してくれた。
「…………後で、色々と話してもらうからな」
「はい」
迷彩大蛇の時と同じ距離。
でも的は小さいし、せめて一人は生かしておかなければならない。
僕はまた海の底に沈む。
キィィィン
「…………ふっ」
集中状態に入り、矢を放つ。
狙いは馬。
まず、馬車の動きを止め、御者を仕留める。馬は悪くないのに、ごめんね。
そのまま、周りにいる数人の護衛の頭を次々に射抜く。
馬車が止まり、周りを見ようと出てきた五人の男達。
どうやらあの指示を出してる大男がリーダーか。
そのまま続けて、大男以外の頭を貫く。
そして、生かしておく大男は急所を外し、手足を射抜いて動けない様にしつつ、僕も駆け出した。
それでもモゾモゾと動く度に牽制で薄皮一枚かする程度に矢を放ちながら、ソーラさんに駆け寄り、
「ソーラさん、外にいた御者と護衛四人と中から出てきた残りの五人の内、リーダー以外の奴らは全員倒しました」
「はい?いや、リーダーばどうし……、うわっ!」
「すみません、リーダーらしき大男は四肢を射抜いて、動く度にこうやって、動けない様にとしています」
「そ、そうか……」
「それより急ぎましょう」
「あ、あぁ!」
流石にソーラさんも早い。
直ぐに馬車に到着し荷台の天幕を開けるとフラン様を見付けて抱き締めていた。
僕?僕は水を差したくなかったので、周りを視ながら大男を縄で縛り上げていた。
正しい縛り方とか知らないからとりあえず傷口に縄が擦れるように縛り上げる。
一段落したので、ソーラさんとフラン様は残っている馬に乗り、先に街へと帰ってもらった。
僕は大男を運ぶのだが、僕の体格と比べると残念ながら大き過ぎるので、そこそこの速さで引き摺りながら街へ帰った。
街まで歩いていく間、後ろからずっとなにかが聞こえていた気がするけど、気の所為だと思う。




