第二十三射目
今回はユウリ→ソーラ→フランと視点が変わります。
分けようと思ったのですが、そうなると一話一話が短くなり過ぎるのでまとめました。
結果的に何時もより長くなってしまって結局本末転倒な気が……。
正式にフラン様一行に同行する事が決まった日の翌日、僕はまだ日が登る前の薄暗い中、そっと部屋を抜け出した。
既に受付に人がいるのには驚いたが、宿泊する客層の関係上昼夜問わず常に従業員と衛兵は勤務している。と説明してもらえた。
受付の人にこの時間からでも身体を動かしたり出来る所は無いか尋ねると、既に街中は動き出してるらしく、門番に言えば外に出られるだろうとのこと。
流石商人の街。朝が早い。
宿屋街を抜けて、昨日入ってきた門の門番さんに話し掛ける。
「少しの間外に出たいんですけど、良いですか?」
「あ、昨日の。出るのは良いけど、一応何をするか聞いても良いかい?」
「身体を動かしたいんです。日課なのでやらないと気持ち悪くて」
「確かに何時もやってるのをやらないと一日が締まらないよな。あまり離れ過ぎたり、遅くなるともう一度手続きが必要になるから早めに帰るのをお勧めするよ。はい、これを見せればすぐに入れるよ」
手渡された木札を鞄に仕舞う。
この札は短時間で再入場する場合に渡しているものだそうで、これを使えば、列に並ばず、簡単に中へと入れるらしい。
門番さんにお礼を言って、街の外に出た。
「よし、いつも通り走り込みからしよう。昨日は出来なかったから、少しペースをあげようかな」
軽口準備運動をしてから走り始めた。
ペースは軽めで、走り終わったら各種筋トレをしっかりと行い、弓を取り出す。
そしてここからが本番。
街や街道の方には向けていないが、念の為矢を番えずに弓を引き、弦を弾く。
矢を取り出す動作を取り入れながら、
丁寧に。
最短で。
最速で。
それを何度も何度も。
最初は加護は使わずに自分の力だけでそれを行い、ある程度の回数をこなしたら次に加護を使いながら。
|《多重眼》《マルチ・アイ》で周りを視ながら仮想敵を探し、同じ様に弦を弾いた。
日が昇り、周りが明るくなり始めたところで切り上げて戻ると、まださっきの門番さんがいたので札を返し、お礼を言って街に入った。
まだ朝早いにも関わらず、もう商人達は店を開けたり、仕入れの為に動き始めていて、人通りもかなり増えてきている。
「お腹減ったけど、宿に朝食があるらしいからなー」
嗅覚強化をせずとも、色んな所から美味しそうな匂いが漂ってくるのでつい目移りしてしまう。
すると突然、加護が発動した。
この街で知ってる数少ない匂いと音が近付いてくる。
僕はそれらに合流する為に直ぐ様走り出す。
〜ユウリが丁度門から外に出た位の時【ソーラside】〜
「ロビン!リック!そっちはどうだ!?」
「こちらにはいませんでした!」
「こっちも見つかりません!」
「従業員一同に声をかけましたが、見たものはいないそうです」
「くそっ!ユウリ君はまだ戻らないのか!?」
「フロントに聞いてきましたけどまだだそうですす」
「リック!お前はここに残れ!もしかしたらまだ館内にいるかもしれない。ロビン!私と共に来い!」
「私共はいかが致しましょう?」
「あぁ、騒がせてすまなかった。後は我々で探すから、通常の業務に戻ってくれ」
「かしこまりました。何かありましたらリック様にお伝えします」
「頼む。行くぞロビン!」
私とロビンは扉を開け、街中に出る。
今日の夜明け前。
朝と言うにはまだ外が暗い中、ふと目を覚まし顔を横に向けるとお嬢様がいなかった。
大蛇に遭遇してから気を張り続けていて眠りが深かったのか、お嬢様がいなくなった事に気が付けなかった。
急いでロビンとリックを叩き起こし、従業員に話をして館内を組まなく探すも、見当たらない。
布団を荒らされた形跡は無く、お嬢様が自ら出ていったのなら着替えている筈だが荷物にも特に異常はない。
そうなると誰かに呼び出された可能性がある。
もしや……。
疑いたくはないが、どうしてもある人物の顔が浮かんできてしまう。
もし、もしもだ。
ユウリ君がお嬢様の正体を知って、身代金目的の誘拐なのか違法奴隷として売ろうとしたとしたら……、いや、そもそも最初から気付いていたと言っていたが、気付いたのではなく、知っていたのだとしたら?そうであれば昨夜の反応も不思議ではない。
我々を油断させて近付く為だったのか・・・。
「とにかくお嬢様を探しながらそのまま門まで向かう。途中でユウリ君に会えれば良し。会えなければ門兵にお嬢様を見ていないか聞きそれ次第でどう動くかを考える!」
「はいっ!」
通りに出ると人が増えだしており、その中から目的の人物を探すのは困難に思えたが、そんな事を言っている場合ではない。
やるしかないのだ。
「ん?あれは!?」
「どうした?お嬢様が見つかったか?」
「いえ、お嬢様ではなく……」
ロビンが指差す方を向くと見知った黒髪の少年がこちらには走ってきていた。
〜ユウリとソーラ・ロビンが合流した頃【フランside】〜
暗い。
怖い。
ここは今何処なんだろう?
部屋をノックされて、ソーラが起きなかったから勝手に扉を開けたらいきなり真っ暗になって、お腹に衝撃を受けて気を失って……。
さっき気が付いたら多分馬車に乗せられてるみたい。
声を出そうにも猿轡をされて、手足も縛られているから身動きも取れない。
だが、こんな時下手に刺激すると痛い目を診る。と昔ソーラに言われたので、あえて動かずに機会を待ってみる。
「にしても、まさか辺境伯の娘が大した護衛も付けずに街にいるなんてな」
「どうやら第二王女に会いに行ってたみたいだぞ」
「って事はあれか?王位継承の話か?だから、あの人……」
「おいっ!ベラベラ喋るんじゃねぇよ!」
「大丈夫だろ?誰も聞いてねぇよ」
「いや……」
足音が近付いてきて、無理矢理頭に被せられた袋を外された。
思わず声を出す。
「ほらな、誰が聞いてるか分からねぇだろ?」
「こいつっ!起きていやがったのか!?」
「なぁ、嬢ちゃん。今からお前はどうされると思う?」
「……っ!?」
髪を掴み、大男は強引に私を持ち上げる。
「お前は今から売られるんだよ。お前みたいな成人したてのガキが大好きな変態野郎にな。良い値段で買い取ってくれるだろうよ」
血の気が引いていくのが分かる。
そんな人に売られてしまったらどうなるのだろう?
「しかもそいつ、成人したて以外は興味ないって話だ。そのあとは一体どうなるんだろうな?殺されるのか。またどっかに売り飛ばされるのか。楽しみだろぉ?」
身を捩って逃げようとしても身体に力が入らないし、男の力が強過ぎて全く逃げられそうにない。
「怖いか?怖いだろう?良い面してるなぁ、お前。いっそ俺が先に……」
怖い!誰か!誰か助けて!
恐怖で目を固く瞑っていたが突然馬の鳴き声が聞こえて、馬車が乱暴に止まった。
男達は何事だと馬車から外に出ていってしまった。
今度は一瞬男達の声が聞こえたと思ったら、無音になった。
何があったんだろう?状況を見たくても見ることが出来ない。
今の内に逃げ出したいのに……。
そして馬車の後ろの天幕が外されたと同時に知っている声が聞こえた。
「お嬢様っ!」
ソーラが助けに来てくれたんだ……。
私は安心からか、そのまま意識を失った。
次回よりユウリ視点に戻ります。




