現実を見ない先輩と、自己犠牲な俺と・・・
「あ~疲れが取れない~」
「昨日は大変だったそうだね。」
俺は、同居人のレインと通学路を歩いていた。
このレインと言う男子はチビに見えて三年生だ。
そんな事はどうでも良い、気になるのはあの人間を魔人にした薬だ。
さすがに一日で城の奴らがなんか分かるとは思えない、気長に待つとしよう。
「いや~それにしてもゴーレムタイプがゾンビタイプをぶん投げるところとか、走る姿とか凄かったよ。」
「多分大勢の人がそう思っているでしょうね。」
正体が俺です、なんて言えやしない。
言ったら解剖とかされるに違いない、下手したら戦争の道具にされるかもしれない。
「レイン先輩、失礼かもしれませんけど・・・」
「何?」
「何でそんなに背が低いんですか?」
俺は昔から、自分を犠牲にして情報を得るのが仕事みたいな物だった。
だからこんな失礼な事を聞いてボコボコにされるのには慣れている。
「あー、やっぱり気になってたか。」
だが、レイン先輩に怒る様子は無かった。
「ジューンとメイの話知ってる?」
ジューン、メイと言うのは地球で言う英語で、それぞれ六月と五月と言う意味だ。
「知りません。」
「その二人は僕らと同じ位の歳になっても背が低いままだったんだ、ジューンとメイはお互いを愛していたんだけど、結婚出来る年齢になっても親から結婚を許されなかった、それで、二人は駆け落ちしたんだ。」
「へ~なるほど。」
子宮の容量の問題とかで結婚を許されなかったのかな?
「駆け落ちした先で子を作ったんだけどね、その子供が普通よりも大分小さくて軽かったんだよ、どうやら遺伝子上そうなるらしくてね、それ以来二人は同じ境遇の仲間を集めて国を作ったんだ。」
「仲間って・・・そんなに沢山背が低い人種がいるんですか?その国には。」
「いや、普通の人間もいるよ。」
「え?どうしてですか?」
「片方が背が低い人種で、もう片方がアカキバ君たちみたいな普通の人種が子を作っても背が低い人種の子が生まれるんだ、ちなみに背が低い人種をジューンとメイにちなんでジュメイ種と言うよ。」
(ロリ&ショタで孕ませが合法になってる訳か・・・)
レイン先輩の説明を聞き終わる頃には、学園に着いていた。
「じゃあまた帰る時に。」
「また会いましょう。」
俺とレイン先輩はそれぞれの教室へ向かった。
「それで、一週間後の席争奪戦についてだが・・・」
一年風組の教師と、赤牙が部長をやっている部活の顧問をやっているアベル・ロードが一週間後に迫っている、月の一度の、席替えとバトルロワイヤルを混ぜ合わせた席争奪戦について話していた。
「アカキバの席は対象外となった。」
「「「「「何――――!!!!!」」」」」
「その気持ちは良く分かる、アカキバがあの生徒会長の寝言で起こった事件の翌日、学園長に・・・」
アベルが学園長から聞いた事を再現する為に恨みの顔をした。
「学園長~~~昨日の壮絶な鬼ごっこは知っていますよね~俺は十五年の人生で、あれ程死ぬかもしれないと思った事は山の奥の古びた豪邸を探索して斧を持ったキリカさんに襲われて命からがら逃げ出した夢を見て以来ですよ~しかも俺の席まで奪われかけたとなったら今度の席争奪戦は俺だけ参加せずに次の席争奪戦までそのままにしておくのが道理ってもんでしょうよ~~~~」
アベルが恨みの顔から普通の顔になった。
「てな感じでこうなった。」
「あんまり似てませんね~」
(((((似てるよ!似すぎて一瞬本人かと思ったよ!)))))
赤牙の感想に、赤牙以外の風組全員が突っ込んだ。
「さて、無駄話はこれ位にして授業を始めるぞ。」
こうして、今日も授業が始まった。
場所は変わって三年闇組。
「え?行方不明者?」
レインは友達に、闇組の生徒の一人が来ていない事を聞かされた。
「そうなんだ、カレンとか言う同じ組の生徒なんだけど、昨日体調を崩して女子強制参加の踊りに参加出来なかっんだ、でも踊りが始まる少し前に体調が治ったから会場に見学に行ったそうだ、それ以来行方不明なんだと。」
「へぇ~。」
レインが話しを聞いていると、担任が来たので生徒全員席に着いた。
(アカキバ君にカレンさんがいなかったか聞いてみよう・・・)
時間は昼、場所は食堂。
「特徴は、銀髪で、ショートヘアなんだけど・・・」
「!!??」
俺は驚愕した、その特徴で思い当たる人物は他でも無い、ゾンビタイプにされたあの女子だ。
「何か心当たりでもあるのか?」
レイン先輩と一緒に俺に聞きに来た先輩がそう言った。
「・・・驚かずに聞いてください。」
そして俺は、昨日俺が見た出来事を包み隠さず言った。
「「「「「・・・・」」」」」
レイン先輩だけで無く、食堂で聞いていた全員が驚いていた。
「嘘だ!!」
食堂にいた一人がそう叫んだ。
「カレンがあのゾンビタイプ!?嘘に決まってる!」
「この人は誰ですか?」
俺は質問した。
「僕はシヴァ・コールド!カレンの許婚だ!」
「許婚・・・ですか、と言う事はこの方も先輩ですね、シヴァ先輩、俺の力が足りないばかりにカレン先輩を・・・魔人にしてしまって申し訳ありませんでした。」
俺はゾンビとは言わず、魔人と言っておいた。
「違う!違う!アレがカレンな訳が無い!出鱈目を言うな!」
シヴァ先輩は混乱している、無理も無い・・・良し、ここはこうしよう。
「ですが、俺の見た限り、カレン先輩は既に死んでいたのだと思います。」
「なんだって!?」
怒ったな、さらに続けて・・・
「仮に俺が魔人にする前に死体を回収し、貴方の目の前に見せても貴方は偽物だとか出鱈目だとか言うんですか?」
「黙れ・・・」
シヴァ先輩の言葉を聞かず、俺は喋る。
「だからですね、カレンなんて化け物はもう諦めて、また新しい出会いを探して下さい、あの化け物もそれを望んで・・・」
「黙れ――――!!!!!!」
シヴァ先輩が俺の制服の襟を掴んだ、そして拳を振り上げ、俺を殴ろうとする。
(俺・・・怪我するな、でもそれが一番正しいと思う、そうだ、そうに決まって・・・)
シヴァ先輩の拳を、誰かが止めた。
「止めろシヴァ、俺の生徒に手を出すな。」
それはアベル先生だった。
「話して下さいアベル先生!こいつは、俺のカレンを化け物と・・・」
「そのカレンを化け物にしたのはコイツなのか?」
アベル先生はシヴァ先輩に質問した。
「それは・・・」
「そのカレンを化け物と呼んだ奴はコイツだけだと思うか?」
また質問した。
「俺の個人的な意見だが・・・コイツの言う事は正しい、こうした方がシヴァの為だ、どうしても殴りたいんだったら・・・お前のカレンを化け物にした奴を殴れ!」
アベル先生が喝を入れた。
「化け物にした奴を捕まえて、お前がコイツの言う事を聞かずにカレンだけを愛し続けていたら・・・その時は、化け物にした奴を思いっきり!気が済むまで殴れ!分かったな!」
「はい・・・わがり・・・ました・・・」
シヴァ先輩は泣きながらアベルの言葉を了承した。
シヴァ先輩は食事に戻った。
「おい・・・」
アベル先生が俺に声を掛けた。
「何ですか?」
そしてアベル先生は少し呆れた声でこう言った。
「何でお前はそんなに自己犠牲なんだよ・・・」
「・・・・・・・・」
俺は何も言い返せなかった。




