限定ケーキと部屋の移動と寂しげな姫
「今日は休日~今日はギルドで採取~依頼~今は~朝の八時~そして~今日も出ないよ~モ~ン~ス~タ~」
シガサ国立学園の休日、赤牙はギルドで複数の薬草の採取依頼を受けていた。
この男には、魔人化出来るからなのかは分からないが、一人でいる時はモンスターがやって来ない。
故に採取依頼は十八番なのだ。
「おっ、向こうに見えるのはあの泉ではありませんか!」
赤牙はあの泉で二回、女の全裸を目撃している。
一人はシガサ王国第四王女、もう一人はシガサ国立学園二年の生徒会長。
しかもその後必ず魔人と出会っている。
「つまり、あの泉に行くのは危険!と言う訳でスルーが吉!さよなら~」
赤牙は泉を避けて採取に向かった。
「はい、こちらが報酬になります。」
「ありがとうございま~す。」
午後二時三十分、赤牙は採取を終え、ギルドに納品し、報酬を受け取った。
そしてご機嫌で部屋に戻る為に歩き始めた。
「おやつでも買おうかな~・・・ん?」
赤牙はふと、向こうの掲示板に目が留まった。
赤牙は視力に自信があるので、何百メートル先の誰かの頭のフケの数すら分かる。
「本日午後三時、お菓子屋スウィで、百個限定ショートケーキ発売・・・?」
すると赤牙は少し震え、
「た・・・食べた~い!」
と叫び、お菓子屋スウィへ走った。
「うわっ!!!こんなに並んでるのかよ~!!!!!」
限定品と言えば行列が付き物だ。
発売されるギリギリの時間に来たのでは、買える可能性はほぼ皆無だろう。
「しかも最前列が姫様だ・・・」
お菓子を買い食いするエイルが最前列と言う事は、よっぽど美味しそうなのだろう。
「貴方は確か・・・アカキバさんですよね?」
話しかけて来たのはどこかで見た事がある様な人物だ。
「そう言う貴方は・・・確かレインでしたよね?」
そう、肝試しを止めに来た、幻属性部所属、白髪で背が小さいレイン・ファストラだ。
「こんなにギリギリの時間に来て、間に合うとでも思ったんですか?」
レインが嫌味を言って来たが、アカキバは笑っている。
「何がおかしいんでしょうか?」
「甘いですね~レインさん、ケーキだけに。」
赤牙が、別に上手くも無い事を言って、最前列へ向かった。
(最前列の人に譲ってもらうのかな?)
レインの予測が外れた様に、赤牙が戻って来た。
「・・・何をして来たんですか?」
「ちょっと耳貸してください。」
赤牙がレインの耳に顔を近づけた。
「ゴニョゴニョゴニョゴニョゴニョ。」
「本当ですか?」
「疑うならついて来ますか?」
レインが少し首を傾げたが、赤牙について行った。
「出来ましたよ!!」
「・・・まさか本当に作ってしまうとは。」
ここは赤牙の部屋、材料を買い、お菓子屋の限定ショートケーキを作った。
「一個のケーキより一個のケーキの材料費の方が多いなんてことは絶対にありませんからね、自分で作れば安上がりと言う訳です。」
「でもお菓子屋よりは味が劣るのではありませんか?」
「本当に甘いですね~ケーキだけに、食べましょう。」
赤牙は、レインにケーキを差し出した。
「ただいま帰りました!アカキバさ~ん!限定のケーキ買って来たので食べま・・・」
丁度その時、エイルが帰って来た。
レインがキョトンして、赤牙は頭を抱えている。
「・・・ただいま?」
「つまり、二週間前からアカキバさんを強くする為にここに住まわせていると・・・」
「「はい、その通りです。」」
「・・・・・・・・・・」
レインにも思う所はあるのか、悩んでいる。
「アカキバさんはどうしたいですか?」
「周りの視線が気になりますので同じ部屋はきついな~とは思っていますけど、金払わなくて済んでいますのでこのままでもいいかなぁ~とも思っていますね。」
「きついと思っていたのですか・・・」
エイルがこう呟いたが、
「え?」
赤牙にはよく聞こえなかった様だ。
「何でもありません。」
「・・・分かりました、アカキバさん、僕の寮の二人部屋に来てください。」
レインがそう提案した。
「なるほど、良い考えですね。」
赤牙も納得している。
「・・・私もそう思います。」
エイルが少し顔をしかめながらそう言った。
「そうと決まればすぐにでも・・・」
「レインさん、姫様、その前におやつにしませんか?」
レインと姫様が頷いた。
一つ余るので、紙を三つ持ってきて、一つに星を書き、裏返しにして、シャッフルし、星を書いた紙を選ぶ事が出来た人がもう一つ食べれる事にした。
結果はレインの勝ちだ。
食べてみたら赤牙が作った物の方が美味しかったらしい。
赤牙曰く、焼く時間と量を考慮したらしい。
そしておやつを食べ終え、赤牙は二人部屋へ向かった。
「また明日会いましょう・・・・・」
寂しげな表情でエイルが見送った・・・




