第6話 冬過ぎて、春。
休日のスポッチャは混んでいる。そこに1クラス分の人数が増えるので、本日の場内は激混みだ。
いつの間にかクラスメイトが更に他のクラスの友人を呼んでおり、50人くらいの団体客になっていた。
取り仕切っていた桃山が団体予約をしてくれていたおかげで、入場も楽だし料金も安い。
面倒ごとを率先してやってくれてありがたいな、と心の中で桃山に手を合わせる。
人気者の桃山はいろんな場所に引っ張りだこにされているので、仕方なく佐伯と2人でふらふら場内を巡る。
何ヶ所か周った後に、ローラースケートに行き着いた。
「佐伯!めっちゃ内股になってるじゃん!」
「三峰も腰が引けてるよ!」
慣れないローラースケートで子鹿のようになる様子をお互い笑いながら滑っていると、桃山が後ろから滑ってきて、いきなり肩を組んできた。
「「うおっ!」」
佐伯と同時にすっ転んでしまった。
「えっ!ごめん!まさかそんなに下手だったとは...」
手を差し伸べられるが、最後の一言が引っかかったので、自力で立ち上がる。
「急に来られたら転ぶわ!!」
「あはは!ごめんって!2人を見かけたからついテンション上がっちゃって。」
明らかに反省はしていなさそうだが、理由が理由なだけに怒る気が失せてしまった。
ようやく3人揃ったので、心ゆくまで滑った。
そうこうしている内に12時を過ぎて、お腹も減ってきたので休憩がてら昼食をとることにした。
「この際だから言うけどさ...雪弥とこんな仲良くなれると思って無かったわ。」
唐突に桃山が切り出し、佐伯もそれに同調した。
「えっ?!桃山は中学の時も遊んでたじゃん...?」
思いもよらない話題に焦る。
「いやー...そうなんだけど、さ。雪弥高校入ってから悪い噂しか聞かなかったから...グレちゃったのかなって思ってた。」
気を遣ってか言葉を選んでくれているが、言いたいことはよく分かった。
(あぁ...女癖が悪いってことか...)
まさかそこまで噂が広がっているとは知らなかったので軽く衝撃を受ける。
「手を出すのは早いけど、絶対誰とも付き合わないーとか、抱けそうな女リスト作ってるーとか聞いたことある。」
佐伯は全く言葉を選ばず色々教えてくれた。
事実もあるが、中々に尾ひれが付いていそうだ。
「流石にそこまで酷く無いけど...まぁ、高1の頃は結構荒れてた。」
「うーん......新しい環境でストレス溜まってたのかもね!」
自分が悪いことをしていたとしても、桃山も佐伯も、過去の行動を人格に紐付けないで捉えてくれる。
本当に良い友達だ。
不本意ながら少し涙が出たので、バレないように必死に隠す。
「俺は2人と友達になれて良かったよ。」
なんとかそれだけ絞り出すと、桃山と佐伯は顔を見合わせて笑っている。そのまま2人から頭を撫でられたので、弱々しく抵抗した。
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楽しかったクラス会が終わると、さらに時間があっという間に過ぎていき、ついに春休み前最後の日になった。
修了式が終わり、2-B最後のHRが始まる。
「1年間、大きな問題も起こさず偉かった。いい生徒だったよ。」
担任からの言葉は、最後もさらっと終わったが、珍しくスーツを着て真面目な事を言うので、ちらほら泣いている生徒も居る。
しっとりとした雰囲気に、終わりを意識させられる。桃山のおかげか、クラス全体的に仲が良かったので名残惜しい。
それに、まだ確定ではないが来年は桃山とクラスが別れる予定なので、寂しさで胸が詰まった。
桃山はどうしているのか、と思い見てみると思いっきり泣いていた。佐伯の方は相変わらずボケーっとしている。
2人があまりに “らしい” 反応をしていて思わず笑ってしまった。
ふと四ツ谷の方を見る。
四ツ谷はつまらなさそうに窓の外を眺めていた。結局、関わったのは一瞬だったので掴みどころがなく、どんな性格なのか分からないまま終わってしまった。
春休み中は桃山、佐伯と頻繁に出かけた。花見や小旅行、お泊まり会など、休み期間は短かったが予定を詰め込んで、ほとんど一緒に過ごした。
充実した春休み明け、クラス替えの張り紙をワクワクした気持ちで見に行く。
(桃山は無事、3-Aになれたかな?)
自分のクラスより3-Aの記載を熱心に見る。名簿の最後の方に “桃山 雄一郎” の文字を見つけて、思わずガッツポーズをした。
ようやく3-Bの記載を確認する。自分の名前はすぐに見つけたが、佐伯が見当たらない。
何度も確認するが見つからず、徐々に冷や汗が出てくる。
もしやと思い3-Cを見ると“佐伯 航”の名前があった。
(.........は?)
成績順のクラス分けなので、たいして顔触れが変わらない筈なのに、想定外のことが起こってしまった。
とりあえず桃山に『おめでとう』、佐伯に『何してんの?』とメッセージを送って3-Bに向かった。
教室に入ると、2年からの持ち越しメンバーが既にグループを作っている。
今更友達作りもしんどいので、ぼっちを覚悟して席に着くと後ろから話しかけられた。
「よう、三峰。今年もよろしく。」
驚いて振り返ると後ろの席に四ツ谷が座っていた。
「うわっ!...よろしく。あれ?柳くんは?」
「あいつは格落ちしたよ。」
昨年度四ツ谷と一緒に居た柳は、佐伯と同じく3-Cに行ったらしい。
「そうだったんだ...」
自分と同じく独り身、しかも喋った事のある四ツ谷が居てくれて安心した。
高校3年生。この日から四ツ谷との日々が始まった。




