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あの日、あの時、あの場所で。【BL】  作者: 杷木 うきは
第1章 三峰と四ツ谷

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第5話 テニスコートで。



 土日を挟んで、週明けに学校に行くと、佐伯も桃山もすでに登校していた。


「おはよ。2人とも体調は大丈夫?」

「おはよう、雪弥!俺は元から元気だったよ!」

「おはよー。土日でやっと元気になったー。」


 佐伯は結構辛そうだったが、2時間の通学が出来るくらい回復したようで安心した。



「もうマジで焦ったんだから、体調悪い時はちゃんと言うんだぞ!」

「俺も、なんかいつもより寒いなぁ位にしか思ってなかんだよ...」


 佐伯がまた無理をしないように念押ししたが、しょんぼりしてしまった。


「まぁまぁ、みんな元気になったし良かったじゃん!雪弥も1人で寂しかったんだろー?」

 そう言われて、チラリと四ツ谷の方を見た。実際は四ツ谷のおかげで寂しいよりも、楽しい事の方が多かった。


「なんか良いことでもあった?」

 桃山が不思議そうにこちらを見ている。


「いーや。何でもない。」

 別に2人には話しても問題ないのだが、四ツ谷との時間は大切に仕舞っておきたい気分だった。





 次の体育の授業


 今回は佐伯も桃山も揃っているので、3人で準備体操をしてコートに入った。徐々に風邪から復帰する人も増えて、使える場所が少なくなっている。


 今日の佐伯はジャージを1枚ずつだけなので動く気がありそうだ。ラケットをブンブン振って肩慣らしをしている。



 3人で打ち合うとなると分け方に悩むので、四ツ谷が空いていたらそっちに行こうかと思ったが、残念ながら柳とまったり練習していた。


(俺との時とテンションが違うな...)



 今までは関わりがなく、意識して見たことが無かった。なので、知らなかっただけで、いつもニヤニヤケラケラしているのかと思いきや、柳と居るときは静かだ。


 より話しかけにくい雰囲気のため、諦めて桃山を1人にして、佐伯と2人でボールを打ちまくる事にした。


「ちょっ!!流石に無理だって!」

 スポーツマン桃山も 2対1 はキツいらしい。だからといって止めはしないが。




「練習終わりー。次は試合するぞー。」


 教師の呼びかけでゾロゾロとコートから出る。今回の試合形式はシングルスだったので、他の人と組むこともなく無事に授業が終わった。




 その後も話しかけようとしては断念し、四ツ谷と関わることはなく、日々が過ぎていった。




ーーーーーーーーーーーーーーー



「俺さ、勉強ガチるわ。」

 珍しく真剣な表情で桃山がそう宣言したのは、冬休みが明けて、修学旅行が終わった頃だった。


「受験勉強にしては早くね?」

 桃山に対して勉強が出来ないイメージは無いが、どちらかというとスポーツ寄りで、勉強が出来るイメージも無い。

 大会で良い成績を残していると聞いた事もあるので、勝手にスポーツ推薦なんだと思っていた。



「絶対に負けたく無い奴が居てさ。そいつが2-Aなんだよ。だから来年は俺も3-Aになりたいんだ。」

「...ん?クラスって成績順なの?」

 佐伯の疑問と全く同じ事を考えていた。うんうん頷きながら桃山の返事を待つ。


「えっ?!知らんかったの?文系はA組が1番頭良くて、理系はF組が1番頭良いんだよ。C組D組、つまり真ん中にアホが集められてんの。」


 衝撃の事実に佐伯と顔を見合わせる。


「じゃあ俺達は2-Bだから...」

「まぁ普通って事だな。」



「1年の時は文理で別れてないし、ランダムらしいけど、2 , 3年は前年度の最後のテストの成績順だからガチりたい。」


 特に引き留める理由も無いので、佐伯と2人で応援する事にした。

 中々気軽に遊べなくなるが仕方がない。3年生になってから思う存分遊ぼうと約束をして解散した。


(言われてみれば、桃山って徐々にテストの順位上げてたな。)


 2年に進級した際に、その負けられない相手がA組でさぞ悔しかったのだろう。


 悔しさをバネにして頑張れる所は素直に尊敬するが、全力になれる事を見つけられているのは羨ましかった。


 何事も程々に出来るからこそ、何かに固執した事も全力を出した事も無い。

 だからいつも物足りないのかもしれない、と自分の人生に対して漠然とした不安に襲われた。




 勉強をする為にさっさと帰る桃山を尻目に、佐伯と帰りに買い食いをする。佐伯は可愛がり甲斐がある性格をしているので、定期的におやつを買い与えている。


「三峰〜。いつもありがと〜。」

 頬いっぱいに肉まんを詰め込んで幸せそうに微笑んでいる。


(熱くないのかな...)


 自分は猫舌ではないが、肉まんは熱くてすぐには食べられない。

 モワモワと湯気を立てている肉まんを見つめていると、

「食べないならちょうだい!」

と言って佐伯が飛びかかってくる。



 この1年の付き合いで、何度もその手を食らってきたので華麗に避けて肉まんを頬張る。

 あぁぁ...と残念そうな声を聞きながら急いで平らげると、軽く口の中を火傷してしまった。


「もー!焦って食べたら火傷したじゃん!」

「えー?そんな熱かった?」

 くだらない会話をしながら佐伯と帰路に就いた。




ーーーーーーーーーーーーーーー



 あっという間に学年末考査が全日程終了した。桃山は完全に燃え尽きた様子で、ぐったりしている。


「桃山くんお疲れ〜。テスト終わったし、もうすぐ2年も終わるから、みんなで遊びに行かない?」

 クラスメイトが疲れた桃山を心配して声をかけてくる。相変わらず人望があるな、と感心する。


「行く!!絶対行く!!体動かしたいからスポッチャ行こうぜ!」

 ガバッと起き上がり、目を輝かせている。ワイワイと他の人達も集まって日程を決めたり、予約をしたりしている。


 ボーっと成り行きを眺めていたが、クラスメイト全員行ける事になったらしい。自分と佐伯は予定を聞かれていないが、桃山が行くので勝手に勘定に入れられているようだ。

 良い事なのか悪い事なのか分からないが、バイト以外の予定は無いので問題ない。佐伯も何も言わないので問題ないのだろう。



 クラス替えを控えて、寂しさと緊張。そして期待感の混じった複雑な気持ちでクラス会の日を迎えた。











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