第2話 転機と出会い
高校1年の間は、本田と向井に合わせて生活していたせいか、自分で自分が分からなくなっていった。
女好きの軽い男のフリをしてたら、周りに集まる人も同じタイプの人ばかり。来るものを拒まずにいたら経験人数ばかり増えていき、心は荒んでいった。
「なぁなぁ!俺は理系選択だけど2人は?」
1年の終わり頃、本田にそう聞かれた。
「俺も理系ー。三峰は?」
本田も向井も理系らしい。
自分は将来何をしたいか決まっていなかったし、文系でも理系でもどっちでも良かった。
(ここは2人に合わせて理系にするか...)
「えっ!俺文系だ。来年クラス別れるのかー」
気付いたら、そう答えていた。あまりに自然に出てきた言葉に自分でも驚く。
その時ようやく自分の本心を理解した
(そうか。俺、2人と別のクラスがいいのか...)
2人の事自体は嫌いじゃない。だが、好みの違い、周りの環境、そして何より断れない自分が嫌だったのだ。
進級すると、思っていた通り2人とは別のクラスになった。
心機一転、2-Bの教室に入ると、中学時代の友人が居た。
「桃ー!!」
「お!雪弥じゃん!」
いえーい!と2人でハイタッチをする。
ここでも合わない友達が出来たらと思うと心配だったが、中学時代の友人なら安心だ。
「あ!こっちは佐伯 航」
「よろしく。」
桃こと桃山 雄一郎に紹介されたのは知らない人だった。
去年の事があるので初対面の相手には若干警戒心が高まる。
「航、こっちは三峰 雪弥。中学からの友達!」
「よろしくー」
「雪弥も航も靴好きだから、多分話合うと思うよ」
昔から知ってはいたが、桃山は人当たりが良く、間を繋ぐのが上手いと改めて思う。
初めましての2人の為に共通の趣味まで教えてくれた。
桃山の助力もあり、佐伯とはすぐに打ち解けて話し込んでいるとHRの時間になった。
「ほらー、お前らさっさと座れー。」
扉が開き、担任が部屋に入って来る。
「やった!ヤマセンじゃん!」
誰かの喜んでいる声が聞こえるが気持ちは分かる。やる気は無さそうだが、教え方が上手くて、面倒な事はさせない。生徒にとっては当たりの先生だ。
「はいはい。ありがとね。じゃあ1限目は始業式で、2限に諸連絡と自己紹介するから、そのつもりで。」
さらっとしたHRが終わり、体育館へ向かった。
始業式を終えて教室に戻ると、すぐに2限目が始まった。教科書やプリントが一通り配られて、自己紹介に入る。出席番号順で話していくので、自分の出番は後の方だ。
「佐伯 航です。家がど田舎で通学に片道2時間かかるので、家が近い人が居たら定期的に泊めてください。よろしくお願いします。」
中々ウケの良い自己紹介をしていて舌を巻く。佐伯は大人しそうに見えて結構ふざける性格のようだ。
(真顔でボケてくるタイプね。面白いじゃん)
三峰はミなので気を抜いていたが、あっという間に自分の番が来た。
「三峰 雪弥です。えーっと...中学では剣道部だったけど、高校に無かったのでコン部の幽霊部員やってます。どうぞよろしく。」
準備不足で当たり障りのない自己紹介で終わってしまった。
「桃山 雄一郎です!陸上部入ってます。スポーツ全般大好きなので、休み時間とか一緒に運動してくれる人募集中です!ちなみに今日はバスケします!!」
「気合い十分なとこ悪いけど、今日は午前で終わるから帰ってねー。」
ヤマセンのツッコミも入り、くすくすと笑い声が聞こえる。
自己紹介も残り2人となった。
「柳です。よろしくお願いします。」
それだけ言うと席に着く。たまに名前だけ言う人居るよなーと思いつつ聞き流す。
「四ツ谷 海です。四ツ谷だけどホラーは苦手です。よろしくお願いします。」
最後の1人は童顔な男子だった。黒髪マッシュで小柄なのに大きめの制服を着て萌え袖をしている。
完全に偏見だが、女好きそうな雰囲気を感じ取り近寄らないでおこう、と心の警戒アラームが鳴る。
自己紹介は滞りなく終わり、時間も余ったので3限目は委員会決めに移った。
楽な委員会は人気なので取り合いになるが、狙っていた図書委員会は拘束時間が長く不人気だったため、簡単に決まった。
佐伯は自己紹介効果か、ちゃっかり楽な委員会を譲って貰っていた。
桃山は張り切って体育祭実行委員になっている。地獄の忙しさだが、1年の頃もやっていたらしく、筋金入りの運動好きだ。ここまで来ると凄いを通り越して呆れてくる。
授業が終わると、みんな帰り支度を始めたが
「ねぇ!この後行けそうなメンツでメシ行かない?佐伯もちょっとだったら行けるっしょ?」
桃山が全体に向けて発信する。こういう臆さない所は素直に尊敬する。
「私は行けるよー!せっかくの午後休だもんね!食べ終わった後バスケする?」
自己紹介で小松 柚香と名乗っていた女子が乗ってくると、他の女子達も付いてきた。
桃山はクラスの半数以上をゾロゾロと引き連れて近くのバーガーショップに向かった。
「佐伯...それ、食い過ぎじゃね?」
トレーいっぱいにバーガーを乗せた佐伯に思わず突っ込む。
他のクラスメイトも爆笑したり、写真を撮ったり大盛り上がりだ。当の本人は真顔でポーズを決めている。
ふざけて大量に買っただけかと思いきや、本気だったらしく、普通にぺろりと平らげてしまった。
「いつも家に帰る途中めっちゃお腹空くから、買い食いって最高だよね。」
幸せそうな顔をしている。周りは面白がってポテトやナゲットを与えているが、それも完食した。
「ありがとー。毎日買い食いしてたらお金無くなっちゃうからたまにしか出来ないんだよね。」
この量食べてたらそりゃあすぐに財布が空になるだろう。何だか色々奢ってあげたくなるな。と、無いはずの母性本能がくすぐられた。




