第13話 ライバル
「「かんぱーい」」
少し遅れて飲み会の会場に着くと、既に出来上がっている先輩も居て騒々しかった。
「すみません。急に参加してしまって...」
「良いのよ〜!むしろドタキャンの人が居たから、来てくれて助かる〜」
今回の飲み会の幹事をしている、ゆるふわ系の先輩に代金を渡しながら話をする。
「そういえば、普段見かけない人も居ますね。」
「そうなの〜。他の大学の似たサークルと合同だから人数多いの〜」
なるほどと思い辺りを見回していると、聞いたことのある声に呼びかけられた。
「あれー?三峰じゃん。久しぶり。」
「...?!向井っ!」
そこには三峰にとって黒歴史、高校1年の時の友人、向井が居た。
向井とは別の大学の筈だが、偶然にも似たサークルに入っていたようだ。
「三峰もやっぱこういう系のサークル入ってたんだ。」
「うん。まぁ、運動好きだし...」
「ははっ!運動って!面白すぎるでしょ!」
何が向井のツボに入ったのか分からず、困惑しつつしばらく話をしていると、話がだんだん噛み合わなくなった。
「--で、普段はシーズンに合ったスポーツをしてて...」
「あーなるほどね。そっちはそれを隠れ蓑にしてる訳だ。こっちはそのまんまビール部って名乗ってるよ。」
「隠れ蓑...?」
ケラケラ笑いながら向井がこっちを見てくる。
「だからー!飲みサー兼ヤリサーだけど、堂々と言ったら取り潰されちゃうでしょ?三峰、今は純情キャラで女喰ってんの?」
「いや、まぁ...そんなところ。」
確かに飲み会の頻度は多いと思っていたが、スポーツの後は飲みたくなるものなんだろうと思って気にしていなかった。
今まで未成年だからと、スポーツイベントは参加して飲み会は不参加にしていたので、健全な部分しか目に入っていなかったらしい。
(はぁ...マジかよ。またこんな感じになるのか、俺...)
高校時代に散々後悔した道に片足を突っ込んでいた事を知り、ショックを受ける。
「ヤリサーって大体サークル内でみんな兄弟になっちゃうから、定期的に他の大学と交流してるんだってさ。」
向井から要らない情報を貰いつつ、ちびちびとジュースを飲んでいると、2人の女性が近付いてきた。
「三峰くんだー♡飲み会参加するなんて珍しー!」
「じゃあ今日はデビューするって事だ!私が最初の女に立候補しちゃおっかな♡」
ベタベタとくっつかれて気分が悪い。
「俺も混ぜてよ。あと、そいつ。高校時代結構遊んでましたよー。」
向井がしれっと混ざって来たので、これ幸いと、逃げる準備をする。
「すみません!今日実は先約があって...ちょっと顔出しただけなんです...!」
それじゃあ、と言って立ち去ると、向井は嬉しそうに2人を相手にしてくれている。今日だけは感謝だ。
急いで自宅に戻ると、四ツ谷はまだ帰ってきていなかった。
(四ツ谷と話して癒されたかったのに...)
深い溜息を吐きながら床に寝転がる。嫌な事を色々と思い出してしまい、どうしても心が荒んでいく。
ボーっと天井を見つめていたが、我慢ならなかった。
(四ツ谷に会いに行こ。)
弓道サークルのチラシはまだ捨てていなかったはずだ。自室の机の周りを漁ると、すぐに見つかった。
チラシに書かれていた活動場所に向かった。
(ここ...だよな。)
辺りはすっかり真っ暗になっている。こんな時間まで練習している訳ないと思いつつ入ると、明かりがぼんやり付いていた。
なんとなく足音を殺して近付くと、人影が2人分あり、話し声も聞こえる。
「いやー!マジで海みたいな逸材が入ってくれて良かったよ!」
「あ?俺より上手いくせに、うるせーよ。」
相変わらずの口の悪さで心配になるが、練習場に居たのは、例の胡散臭い先輩と四ツ谷だった。
見知った2人だったので、安心して近づこうとすると、先輩と目が合った。ぺこりとお辞儀をすると、ニヤリと笑って、
四ツ谷を抱きしめた。
(えっ?!?!)
思わず声が出そうになったが、何とか抑えた。
「はー?いきなりなんだよ。きもちわりー。」
口は悪いが手が出ない辺り、四ツ谷もこの先輩に心を許している。2年も四ツ谷の友人をやっているから流石にそれくらいは分かる。
頭に血が昇るのを感じて、慌ててその場から立ち去った。
数日後
「なぁ。先輩。」
「ん?どうしたー?海。」
バン!
今日も2人で練習している静かな弓道場に勢いよく入っていく。
「は?!三峰?!何でここにいんだよ!」
「今日から!俺も!入りますね!」
四ツ谷に、というより先輩に向かって宣言する。
「やったー!海からよく話は聞いてるよ。ミツミネくん?だよね。よろしくー!」
「三峰 雪弥です。よろしくお願いします!」
想像以上にすんなり受け入れられて拍子抜けだが、握手は力いっぱい握りしめて牽制しておく。
四ツ谷は呆れた表情をしている。
「入るって言ったって...部活じゃないから貸せる備品なんて無いぞ。」
「大丈夫。一式買って来たから。」
「はぁ?!......もういいよ。好きにしろよ...」
四ツ谷はさらに呆れた様子で、口を噤んでしまった。
「ところで先輩。他のメンバーは居ないんですか?」
「んー。一応名前だけ在籍してる人は居るけど、練習してるのは僕と海だけだね。」
「へー!ずっと2人きりで!!」
物凄くイライラして顔が引き攣ってしまう。四ツ谷をこんな胡散臭い男に渡してたまるか!と敵対心で燃え盛っている。
「...よく分からんけど、さっさと練習しようぜ...」
対話を諦めた四ツ谷が力無く呟いた。




