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4. 宝石ゲーム、開幕④

「いかなる暴力もって……なっ、えっ!? マジで言ってんすか!?」


「まじ、ですよ柊くん。どうしてそんなに慌てているんでしょう」


「いやいやいや。どう考えても先生がおかしいでしょ。今のご時世、暴力なんて認められるわけないじゃないですか! みんなもそう思うよな!? なぁ!」


 光太郎は同意を求めて当たりをキョロキョロと見渡し出す。クラスメイトは明らかな同意を示しこそしなかったものの、困惑の色を隠しきれない様子だった。


 ”今のご時世”と言うのは、北方領土の最大都市・カタストロフで起きた出来事のことを指しているんだろう。16年前、世界最大の人口をほこるこの都市でテロが起きた。……まあ、起きたと()()()()()()のほうが正しいわけだが。26世紀最大の一大事件。死者は第五次世界大戦よりも多かったと謳われ、それ以来、世界各国でアンチ暴力運動がますます躍起になっている。


 いずれにしても…………


 藤花学園。随分と物騒な学校だ。いかなる暴力も――真正面から信じるなら、究極”殺害”すら許可されているということ。いくら確固たる治外法権が確立されている組織とはいえ、もしそんなことが知れたら社会が容認してくれるはずもない。事実、オレたちはそのような話やウワサを一度も耳にしなかった。無事卒業祝儀を獲得できた卒業生ならいざ知らず、学園に恨みをもった退学者のほうから情報が漏れる可能性は十分にありえる話だろう。それがなかったということは――


 それに、羽那葉の話し方も気になる。彼女は別に、あえてとぼけているといったふうでもない。そもそもそれだったらもっと大胆に皮肉めいた態度をとってきそうなものだし、なによりこのオレが一切の邪念を感じられていない。藤花の住人であろうとも、下界の常識はある程度把握しているはずだ。渋谷駅と藤花を往復できるエレベーター。オレたち生徒は卒業するまで、あるいは退学するまで使用することを固く禁じられている。が、藤花の住人が同じように使用できないとも思えない。所有権はあくまであちら側にあるのだから。


「みなさんいったん落ち着いてくださいな。まだいくつかのルール説明が残っていますので」


 羽那葉は生徒をなだめているつもりかもしれないが、効果は皆無と言っていいだろう。なんなら逆効果だ。そんな(いびつ)な認識のズレに気づいているのかいないのか、掴みきれないトーンで羽那葉は続けた。


「すでにお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、ご来校いただいた時点で配布されたスマートフォン。これは非常に便利な代物です。クラスメイトのみならず、学園全員の個人情報をこと詳らかに把握できるのですから。宝石ゲームを有利に進めるために、生かさない手はありません。カメラやアプリケーションの機能はもちろん付随しています。藤花独自の機能についてはぜひいろいろと調べていただきたいのですが、1つだけ私のほうからお伝えすることがあるとしたら……宝石バリュー、ということになるでしょう。各クラスが保有する宝石の獲得ポイントがリアルタイムで確認できるアプリです」


 スマホを開くと横に4つ、縦に6つ、整然と並んだアプリケーション画面が確認できた。ちょうど左下には、イヤでも視線を奪われてしまう豪華なデザインが施されたアプリがあった。〈宝石バリュー〉だった。オレたちクラス1の宝石バリューは3700。クラス2には3600、クラス3には3500の宝石バリューが付与されていて、クラスランクが1つ下がるたびに100バリューずつ少なくなっているようだった。現時点で最下位であるクラス37には、100の宝石バリューしか与えられていなかった。


「これって、俺たちクラス1は入試の成績が良かったから優遇されてる……ってことであってんすよね?」


「そう考えていただいて結構です。ですがご注意を。確かにクラス1はクラス37と比べて3600バリューのアドバンテージを獲得していますが、この差は大きいようで微々たるもの。すでに画面を見てお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、宝石の価値にはヒエラルキーがあります。漆黒に満ちた〈黒曜〉は1バリュー、雪のように舞う〈百合〉は10バリュー、太陽の如く輝く〈山吹〉は30バリューです」


 価値の高い宝石ほど見つけるのも難しい、というのは言わずもがな。そんなことをわざわざ確認しようとする者はいなかった。時間が経つにつれて各宝石がどんな場所に隠されているのか、見つけ出す難易度はどの程度なのか、つまるところ宝石の詳細なデータが蓄積されていく。解像度があがっていくほどに戦術はより複雑なものになるだろうことが予想できた。


「一応あと3つあるみたいっすけど……先生、説明しないんですか?」


「ああ……そうですね。説明してもよかったんですが、如何せんなかなか見つからない宝石たちですから」


 見たところオレたちはネモフィラの宝石、そして牡丹の宝石についてはそれぞれ1本ずつ保有しているようだ。


「マグマのように紅く燃え盛る〈牡丹〉は1000バリュー、月に照らされた大洋を思わせる〈ネモフィラ〉は1500バリュー。そして――」


 最も価値の高い〈花の宝石〉。その名はもはや、聞かずともわかった。



「――――我ら藤花学園をモチーフにしてつくられた、〈藤花〉。こちらは10000バリューです」

4話です! ルールがだんだん明らかになってきましたね!

1つ質問したいことがあります。なんでもいいので”何か”、気が付いたことはありませんか?

その気づきのすべてはきっとのちのち回収されるでしょう。どんなふうに改修されるのか、ぜひ期待していてほしいなと思います!

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