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私を何度も殺してきた人たちと恋愛したら、ヤンデレ化された件  作者: ニアン
魔法競技大会編

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51.表現魔法

 第一競技が終わり、選手たちが次の競技へ向けて移動を始める。


 セラは観客席へ戻り、ニナとリリアの隣に腰を下ろした。


「お疲れ様、セラ!」


「ありがとう」


「シオン君とのチーム、すごかったよ!早すぎてリリアとちょっとドンびいた。」


「ちょっとニナ!」


 三人で笑い合う。


「ニナは騎馬戦だよね。リリアは表現魔法?」


「うん!そう!絶対リリア一位だと思うんだよね!だってみた?光魔法めっちゃ綺麗なんだよ!」


「ちょっとニナ!」


 セラは二人の会話をニコニコと眺める。


「ニナもリリアばっかりじゃなくて頑張りなよ。」


「えー私運動系全般苦手なんだよね〜」


「なんで選んだのよそれ!」


(なんだか久しぶりに突っ込んだ気がする。)




♡ ♡ ♡




『それでは、続いて第四競技へ移りましょーう!』


 しばらく会話に花を咲かせていると、カイの声が競技場に響き渡った。


『第四競技は、表現魔法でーす!』


 観客席から歓声が上がった。


 表現魔法。


 個人で参加し、自らの魔法を使ってどれだけ美しく、正確に表現できるかを競う競技だ。


 魔力の強さだけでは決まらない。魔力制御、構成、独創性、そして美しさ。


 四つの項目から採点され、その得点が所属する組の総合得点へ加算される。セラは競技場中央の舞台を見つめた。


 この競技も、もちろん覚えている。


 誰が出場するのか。どんな魔法を使うのか。そして、誰が優勝するのか。


 セラは知っている。


『それでは、一年生からどうぞー!』


 大きな歓声が上がった。続々と一年生が魔法を披露していく。どれも綺麗で美しい。


「あっ。私そろそろ出番だから言ってくるね。」


 リリアがニナとセラに呼びかけて、ささっと控え室へ行ってしまった。


「楽しみだね!」


「…ええ。」


『続いて、一年生。リリア・フェルノア!』


 リリアが舞台へ上がる。


 大きな歓声が上がった。


 リリアは少し緊張したように胸元で手を握り、ゆっくりと目を閉じた。


――ふわり。


 淡い光が、彼女の足元から広がった。


 最初は一つの小さな光。それが二つ、三つと増えていく。やがて光は細い糸のように伸び、リリアの周囲をゆっくりと旋回し始めた。


 その光が交わるたび、そこから小さな花が咲く。


 白い花。淡い金色の花。透明な花。


 どれも本物ではない。


 けれど、今にも触れられそうなほど鮮明だった。


 花々は一つずつ宙へ浮かび上がる。そして、光の蝶へと姿を変えた。


「……!」


 セラは思わず息を呑む。蝶たちは羽ばたきながら舞台を飛び回り、その羽からこぼれた光の粒が、さらに小さな光の花を咲かせていく。


 花。蝶。光。


 それらが幾重にも重なり、競技場全体を淡い光で包み込んでいく。


 まるで、朝の森に差し込む光の中へ迷い込んだようだった。やがて、すべての光がリリアの頭上へ集まっていく。


 一つの大きな光となり――。


 ゆっくりと花開いた。


 その瞬間。光の花びらが空から降り注ぐ。


 観客たちの頭上を通り過ぎ、触れる寸前で小さな光の粒となって消えていく。競技場が、静かな光に包まれた。


 誰も声を上げない。ただ、その光景を見つめている。


 やがて最後の一粒が消えた。リリアがゆっくりと目を開く。


 そして――。


 大きな拍手が起こった。


『素晴らしい!一年生とは思えないほどの繊細な魔力操作です!』


 大きな歓声で耳が壊れそうな中、それより大きな声でニナが興奮したように叫んだ。


「セラ!!!今のみた!!!???やばい!!!感動しちゃった!!!」


 よく見ると確かにニナがうるうるしている。


(こんな表情もするんだ…)


 ニナの表情を見てこちらもうるうるしてくるが、現実はそう甘くはないとセラは知っていた。


 三年生の番になってもリリアを超える魔法を使った人はいなかった。誰もが、リリアが優勝だと決めつけ始めたその時だった。


『最後を彩るのは、この人!三年生レオン・フォレスト!』


 名前が告げられた瞬間、競技場に大きな歓声が響いた。


 レオンが舞台へ上がる。いつもの柔らかな笑みを浮かべたまま、観客席へ軽く手を振る。


 けれど、魔法陣の中央へ立った瞬間。


 その表情から、わずかに笑みが消えた。


 静かに目を閉じる。会場の空気が変わった。


 セラは思わず姿勢を正した。


 ――知っている。


 この魔法を。何度も見てきた。


 けれど。


 何度見ても、始まる瞬間だけは息を呑む。


 レオンが右手を掲げた。指先に、小さな炎が灯る。赤い光。


 それは瞬きをする間に大きくなり――。


 (ごう)ッ!


 巨大な炎の柱が、レオンの背後から空へと伸びた。


「……!」


 観客席からどよめきが起こる。


 けれど、それだけでは終わらない。炎の柱の周囲を、水の粒が舞い始めた。


 どこから現れたのか分からないほど細かな水滴が、炎の周囲を螺旋状に駆け上がっていく。


 普通なら、火と水。相反する二つの属性だ。普通火属性の魔力を持っている人は水魔法が比較的難しいとされているが、レオンはさらに難しい、二つの同時発動を行った。


 炎の熱で水滴が蒸発する。


 その瞬間、白い霧が生まれる。霧は風に乗って競技場いっぱいに広がった。


 観客席から、再び驚きの声が上がる。


 その霧の中を――。


 無数の光が走った。


 いや。光ではない。


 風に運ばれた炎の粒だった。


 赤い火の粉が霧の中を駆け抜けるたび、淡い橙色の軌跡が空中に残っていく。


 レオンは左手を軽く振る。すると地面から土がせり上がった。


 無数の小さな石が宙へ浮かび、炎の軌跡に沿って並んでいく。


 一つ。二つ。


 十。二十。


 石は次々と形を変え、やがて巨大な樹の枝のような形を作り始めた。


 そこへ風が吹き抜ける。枝が揺れる。その隙間を、水滴が流れた。


 そして水滴が触れた場所から――。小さな炎の花が咲いた。


「……嘘」


 ニナが呟いた。


 火。水。土。風。


 四つの属性が、一つの魔法として繋がっている。


 しかも、それぞれが主張しすぎていない。


 炎が空を彩り。水が光を反射し。土が舞台を形作り。風がすべてを動かしている。


 まるで一つの巨大な世界を、魔法だけで創り出しているようだった。


 そして――。


 突然、すべての音が消えた。


 風が止まる。水が止まる。炎さえも、動きを止める。


 静寂。


 その瞬間。レオンの足元から、黒い影が広がった。


 闇魔法。黒い影は地面を這い、巨大な樹を包み込んでいく。


 炎の赤。水の青。土の茶。風の軌跡。


 そこへ黒が重なる。まるで夜が世界を覆うように。


 観客席が息を呑んだ。そしてレオンが、静かに指を鳴らす。


 ――パチン。


 闇が弾けた。


 同時に、すべての魔法が一斉に動き出す。巨大な炎の樹が夜空へ向かって伸びる。水がその枝を伝い、無数の光を反射する。風が水滴を空へ巻き上げる。土から生まれた無数の花が一斉に開く。


 その中心で、炎が一気に燃え上がった。


 巨大な花。それは炎でできていた。けれど、その花びらには水滴が輝き、風が花弁を揺らし、土の粒が淡い光を帯びている。


 そしてその背後には――。


 黒い夜空。闇の中に、炎と水が作り出した無数の光が浮かんでいる。


 星だった。レオンは、一人で。まるで世界そのものを作っていた。


「…………」


 セラは完全に言葉を失っていた。


 何度も見た。何度も知っていた。


 それでも。目の前で見るたびに思う。


――この人は、やっぱり規格外だ。


 最後にレオンが手を下ろす。炎が静かに消えていく。水が霧へ変わり。風が止まり。土がゆっくりと地面へ戻っていく。


 最後に残った闇だけが、夜のように舞台を包んでいた。


 その闇の中に、一つだけ炎が灯る。小さな炎。


 それはゆっくりと上昇し――。


 空中で弾けた。


 無数の火の粉が、星のように降り注ぐ。


 そこで、すべてが消えた。


 誰も声を出さなかった。競技が終わった後でさえも、誰もが余韻に浸るように。


 十数秒後――。


 割れんばかりの歓声が競技場を揺らした。


『…………っ!』


 実況席のカイですら、一瞬言葉を失う。


 それから慌てて声を張り上げた。


『す、すごい!これは圧巻です!火属性を中心に、水・土・風・闇――五属性を組み合わせた超高難度の表現魔法!』


 観客席からさらに歓声が上がる。


『属性同士の干渉を完全に制御しています! これほど複数属性を同時に扱うなんて――まさに圧倒的な魔法技術です!』


 レオンは観客席へ向かって、いつものように穏やかに微笑んだ。まるで、今の魔法が特別なことではないとでも言うように。


 セラはそんなレオンを見つめる。


「……すごすぎる」


 隣でニナが呆然と呟いた。


「これ、勝負になるの……?」


 セラは少しだけ笑った。


「……多分、難しいと思う」


 それくらい。レオンの魔法は圧倒的だった。




♡ ♡ ♡




 やがて審査が終わる。


『リリア・フェルノア、得点は――八十七点!』


 歓声が上がった。


「すごい!」


 ニナが嬉しそうに拍手する。控え室から戻ってきたリリアもほっとしたように胸を撫で下ろした。


 セラも拍手を送りながら、ふと競技場に掲げられた得点板を見る。各選手の得点が、所属する組へ加算されていく。


 そして。


『現在の表現魔法競技、最高得点は――レオン・フォレスト選手の百点満点!』


 再び歓声が響いた。やはりレオンが圧倒的一位。


 それは変わらない。セラはそう思いながら、レオンの名前の横に表示された組の色を見た。


 ――赤。


「……あ」


 小さく声が漏れた。


「どうしたの?」


「ううん……」


 セラは得点板を見つめる。


 赤組。


 レオンは赤組。


 それは、セラが組み分けを変えた結果だった。


 過去の周回では。


 レオンは白組だった。


 だから、この百点は白組に加算されていた。


 けれど今回は違う。


 レオンの百点は赤組に入る。


 セラは得点板へ視線を戻した。赤組の総合得点が、一気に伸びている。


 たった一人。たった一つの組み分け。


 それだけで、同じ競技の結果が違う意味を持っている。


「……私が変えたんだ」


 セラは小さく呟いた。


 誰にも聞こえないほどの声だった。


 競技そのものは変わっていない。


 出場者も。魔法も。優勝者も。


 何も変わっていない。


 それなのに――。


 結果だけが変わっている。今まで白組が得ていたはずの点数を、今回は赤組が得ている。


 セラが、抽選箱を揺らしたから。


「セラ?」


「……なんでもない」


 ニナに声をかけられ、セラは笑って誤魔化す。


 ほんの小さな行動で、確かに動いた。セラはもう一度、赤組の得点を見つめる。


 ――今回は、赤組なんだ。


 その事実を噛みしめるように、セラは静かに拳を握った。

ちょっと小話!


実は表現魔法という競技で使う魔法は、全く実用性のない効果のないものです!魔力をできるだけ使わずに綺麗にする競技用の魔法なので、たとえばレオンが使った火魔法は全く熱くないですし、燃え上がったりもしません!

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