48.組み分けが変わって
魔法競技大会まで、あと三週間。抽選会から数日が経った。
生徒会室では、組分け結果を元にした準備が本格的に始まっていた。
各競技の参加者確認。当日の進行表の調整。応援席の配置。
大会が近づくにつれて、生徒会の仕事量も少しずつ増えていく。
「一年生の参加表、確認終わりました。」
セラはまとめた書類を机の上へ置いた。
「ありがとう、セラ嬢。」
レオンが受け取り、目を通す。
「助かるよ。」
「いえ。」
いつものように笑顔で返す。
けれど。ここ数日、セラの頭から離れないことがあった。
抽選箱を揺らしたこと。そして、変わってしまった組み分け。
(……やっぱり、変わってる。)
最初はまさかと思った。何十回も繰り返した人生の中で、記憶違いくらいあるかもしれない。
そう思おうとした。
けれど、確認すればするほど、違いは増えていた。過去の周回では白組だったクラスが赤組になっている。赤組だったクラスが白組になっている。
大きな出来事ではない。誰かが死ぬわけでもない。
(断罪に関わることでもない。)
「セラ。」
「……え?」
呼ばれて顔を上げる。目の前にはシオンが立っていた。
「さっきからボーっとしてる。」
「……」
机の上。何も書かれていない紙。
どうやら、ずっとそこを見つめていたらしい。
「ごめん。考え事。」
「大会のこと?」
一瞬、言葉に詰まる。
「……うん。」
嘘ではない。ただ、理由を言えないだけ。
シオンはじっとセラを見る。
「無理するなよ。」
ぽつりと言われる。
「え?」
「最近、ずっと考え込んでる。」
「……」
「大会の準備もあるし、生徒会の仕事もある。でも、休む時は休め。」
思わず目を瞬く。
シオンがそんなことを言うなんて、そこまでだっただろうか。
(いつもなら「そんなんでやっていけんのか?」とか煽ってくるのに。)
「ありがとう。」
そう返すと、シオンは少しだけ視線を逸らした。
「別に。」
短い返事をシオンは返した。
♡ ♡ ♡
午後からは、大会に向けた魔法連携の練習が行われた。
今回の組分け変更によって……というか相手とのの相性的に、セラとシオンは同じチームになった。
過去の周回では、相手が違かったので、一度もなかった組み合わせだ。
「次は防御から攻撃への切り替え。」
指示役の指示に従い、二人は向かい合う。
「行きます。」
セラが風魔法を展開する。
何十回もの人生で積み重ねた経験は、身体に染み付いていた。
「……セラ。」
「なに?」
「今、少し魔力が乱れた。」
指摘され、驚く。
「バレた?」
「分かる。」
シオンは当たり前のように答えた。
「前より分かりやすくなった。」
「前より……?」
思わず聞き返す。シオンは一瞬黙った。
「……いや。」
そして、誤魔化すように目を逸らす。
「最近、よく見てるから。」
その言葉に、セラは首を傾げた。
(最近はあんまりだったけど、だいたい授業で組むのはシオンとだったからかな?)
「練習相手だから?」
「……」
シオンが黙る。なぜか困ったような顔をした。
「まあ……そういうこと。」
「?」
でも。なぜか以前より、シオンが自分を見ている時間が増えた気はする。
体調。魔力の状態。他の人との会話。
細かな変化に気付くようになっている。
(……まさかね。そんなわけ…リリアもいるし。)
ふと、ノアの顔が浮かぶ。
(ノアと同じように憧れ的な?……まあノアは執着もあるっぽいけど。)
「セラ。」
「はい?」
「……ノア先輩とは。」
シオンの声が少し低くなる。一瞬、空気が止まった気がした。
「…なんでもない。」
そのあとシオンは何も言わなかった。ただ。拳を少し強く握った。
♡ ♡ ♡
その日の放課後。
セラが生徒会室へ戻ると、ノアが窓際で資料を読んでいた。
「セラ。」
ノアは顔を上げた瞬間、ぱちりと目を見開き、一瞬だけ言葉を失ったように固まった。それから慌てていつもの柔らかな笑みを浮かべた。
(……?)
「お疲れ様〜。」
「ノアさんもお疲れ様です。」
以前の彼なら、どこか掴めない雰囲気があった。けれど最近は。少しだけ変わった気がする。
「疲れてない〜?」
「大丈夫です。」
「本当に〜?」
「本当です。」
即答すると、ノアは小さく笑った。
「セラはよく無理するねから〜。」
その言葉に、セラはハハハと苦笑いした。
それをみて、安堵の息を漏らしたノアは、改まって姿勢を正した。
「セラ。」
「はい?」
「今度、大会が終わったら〜。」
ノアは少し照れたように視線を逸らす。
「また王都へ行かない?」
「……」
驚いた。最近は避けられていたし、避けられなくなってきたけれど、気まずそうな表情をすることが多かったからだ。
「いいんですか?」
「もちろん〜。」
穏やかな笑顔。
「婚約者なんだから。」
その言葉に、不思議と胸が温かくなる。
「……はい。」
自然に笑みがこぼれた。
ちょっと小話!
実は長期休み中か、緊急の用事がない場合は学園の外には出れません!なのでノアは冬休みのことを言っています!




