45.私の願い
最近また少し忙しいので、週一投稿くらいになっちゃうかもしれません!今日はできればもう一個くらいあげれればあげます!
『ゴーン……。』
王都中へ、澄んだ鐘の音が響き渡った。ざわめいていた人々が、一斉に足を止める。
「始まった!」
周りの人たちが興奮したように声を上げ始める。
広場の中央では、祭りの係員たちが白い紙でできたランタンを配り始めていた。
「皆さん、こちらへどうぞー! 一組につき一つ、願いを書いて飛ばしてください!」
「一組?」
リリアが首を傾げると、レオンが説明する。
「最近では人が多すぎてランタンが空で混雑してしまうから、二人一組で飛ばす決まりになったんだよ。」
「へぇ……。」
リリアは興味津々でランタンを眺める。
「じゃあ、どう組みます?」
その一言で、全員が顔を見合わせた。
「六人だから……。」
リリアが指を折る。
「三組ですね。」
「どうしよっかなー。」
カイがにやりと笑う。
「俺、セラちゃんとーー」
「じゃあ私はリリア嬢と組もうかな。」
レオンが自然に言った。
「えっ?」
リリアが目を丸くする。
「初めてなら、私とやった方が安心でしょ?」
「はい!」
嬉しそうに頷く。それを見たノアが不満げな顔をする。
「僕たちじゃダメって言ってるように聞こえるよ〜」
その会話を聞いたセラはビクッと肩を震わせた。
(もしかしてリリアはレオンといい感じなのかなぁ……ノアが不満げに声を上げたり、私を避けたりするのって…ノアがリリアを好きになったってこと?)
「じゃあ残りは。」
レオンが振り返る。残ったのは、セラ、ノア、シオン、カイ。
「俺は別に誰でも。」
シオンが興味なさそうに言う。
「じゃあシオンとカイでいいんじゃない?」
レオンがさらりと提案した。
「えぇー。」
カイが露骨に嫌そうな顔をする。
「男二人?」
「文句あるんですか?」
シオンがじろりと睨む。
「あるよそりゃー。」
その様子に思わず笑いが漏れる。
気付けば、自然とセラとノアだけが残っていた。
「じゃあ……。」
セラがノアを見る。
「……私たちですね。」
「そうだね〜。」
ノアは一瞬だけ目を合わせると、すぐに逸らした。
(……リリアと結婚したくて婚約者邪魔になって断罪とかしないよね…?)
気まずい空気になりながらも、二人は係員からランタンを受け取る。
薄い紙でできた淡いクリーム色のランタン。星の模様が描かれていて、とても綺麗だった。
「願い事を書いてください。」
係員から小さなペンを受け取る。
「何を書こう……。」
セラは少し悩む。
(断罪を回避できますように……。)
一瞬そう思った。けれど、書こうとして手が止まる。
(……違う。)
静かに書き直す。
『みんなが笑って過ごせますように』
それが今、一番願いたいことだった。
「書けた?」
ノアが小さく尋ねる。
「はい。」
「僕も。」
二人でランタンを持ち上げる。
「何書いたんですか?」
「……内緒〜。セラは?」
「私は……『みんなが笑って過ごせますように』です。」
そういうと、ノアが目を丸くしたように見えた。
「下、持っててもらえる?」
「はい。」
同時に手を伸ばした瞬間。
「あ……。」
指先が触れた。
二人とも反射的に手を引っ込める。
「ご、ごめん。」
「いえ!」
思わず声が重なる。ノアは耳まで赤くなっていた。
(……照れてる。)
少し前までは完全に避けられていた。
でも最近は違う。
話しかけてくれるし、助けてくれる。
そして今も。
目はあまり合わせてくれないのに、こんなにも分かりやすく照れている。
なんだか少しだけ可笑しくなって、セラは小さく笑った。
「ふふっ。」
「……笑った。」
「ごめんなさい。」
「いや〜……。」
ノアも困ったように笑う。
「さっき顔が暗かったから〜……笑ってる方がセラっぽいよ。」
その一言に、今度はセラの頬が熱くなった。
(なんで、さっきノアが断罪してくるって思ったんだろう……こんなにも婚約者として見てくれているのに。)
「それでは、どうぞ!」
係員の合図とともに、二人でそっと手を離す。
『ふわり。』
ランタンはゆっくりと夜空へ浮かび上がった。周囲を見れば、何百、何千という光が一斉に空へ昇っていく。
「綺麗……。」
思わず息を呑む。
夜空いっぱいに浮かぶ光は、確かに本物の星が地上から昇っていくようだった。
「来てよかった。」
セラがぽつりと呟く。
「うん。」
ノアも静かに頷く。
「……本当に。」
その横顔はどこか嬉しそうで、柔らかく笑っていた。
セラは夜空いっぱいに広がる光を見上げた。
(こんな穏やかな時間が、これからも続けばいい。)
そう願いながら、ゆっくりと空へ昇っていくランタンをいつまでも見送っていた。
少し離れた場所では、その様子を見ていたカイが「いいなー……」と小さく肩を落とし、シオンは呆れたように息をつく。
一方、レオンはそんな四人を眺めながら、小さく微笑んでいた。
ちょっと小話!
実はノアが書いた願いは『セラが笑って過ごせますように』でした!




