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私を何度も殺してきた人たちと恋愛したら、ヤンデレ化された件  作者: ニアン
生徒会(二学期)編

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44.星祭り

 夏の暑さも落ち着き始め、王都には涼しい風が吹くようになっていた。


 そんなある日の放課後。生徒会室では、一時的に体育祭準備の忙しさに区切りがつき、穏やかな空気が流れていた。


「これで今日の仕事は終わりかな。」


 レオンが最後の書類をまとめながら言う。


「お疲れ様でした。」


 セラもペンを置き、小さく息を吐いた。


「そういえば。」


 レオンがふと思い出したように顔を上げる。


「もうすぐ星祭りだから王都に出られるよ。」


「星祭り?」


 リリアが首を傾げる。


「リリア、知らないの?」


 セラは思わずと言ったように返す。


「名前だけは聞いたことあるけど……。」


「毎年秋の始まりに開催されるお祭りで、王都中に屋台が並ぶんだよ。大道芸や演奏会は勿論。夜になったら空いっぱいに願い事を書いたランタンを浮かべるんだ。」


 レオンがリリアに説明を始める。


「ランタン?」


「そうだよ。」


 レオンはニコニコと頷く。


「そのランタンをたくさん浮かべると、星のように見えるから星祭りと言うんだ。」


「へぇ!面白いですね!」


 リリアはもうすでに楽しみになっているようで、声がいつもよりも高い。


「毎年すごい人だよ〜。」


 ノアも笑う。


「王都だけじゃなく、周辺の街からも人が集まるからね〜。」


「行きたいです!」


 リリアが張り切る。


「セラは行く〜?」


 ノアが穏やかに尋ねた。突然話しかけられたセラはびっくりした。


(久しぶりにノアに話しかけられた気がする…)


「私は……。」


 少し考える。楽しそうではある。でも、王都へ行く勇気はなかった。


(多分校内から逃げたと判断されれば殺されるんだよね……誰かが一緒…特に攻略対象の誰かがいれば大丈夫だと思うけど……)


「まだ決めてません。」


「じゃあ。」


 レオンが手を叩く。


「せっかくだし、生徒会のみんなで行こうか。」


「いいですね!」


 リリアが真っ先に賛成する。


「俺も行きまーす。」


 カイも軽く手を挙げた。


「こういうお祭り好きなんですよねー。」


「……じゃあ俺も。」


 シオンは興味なさそうに言う。


「僕もいいよ〜。」


 ノアも微笑んだ。自然と全員の視線がセラへ向く。


(渡りに船すぎる!夏休みに脱走計画を実行して殺された時以来、星祭りにはしばらく怖くて行けなかったけど、このメンバーなら安全!)


「私もぜひ!」


 そう答えると、レオンが満足そうに頷いた。


「じゃあ当日は夕方、王都中央広場の噴水前に集合で。」


「はーい!」


 リリアの元気な返事が、生徒会室へ響いた。




♡ ♡ ♡




 そして迎えた星祭り当日。


 授業は午前で終わり、学園中がどこか浮き足立っていた。


 学園から王都までは歩いて二十分ほど。街へ近付くにつれ、人の数はどんどん増えていく。


 色とりどりの旗。星形の飾り。屋台から漂う甘い香りや香辛料の匂い。子どもたちは走り回り、大人たちもどこか楽しそうな表情を浮かべている。


「そういえばこんな感じだった……。」


 思わず声が漏れた。


 これほど賑やかな王都を見るのは初めてだった。


 中央広場へ近付くと、大きな噴水の周りには待ち合わせをする人たちが集まっていた。


(みんな、もう来てるかな。)


 そう思って足を速めた、その時だった。


「……セラ?」


 聞き慣れた穏やかな声が後ろから聞こえる。


 振り返ると、そこには私服姿のシオンが立っていた。


 白を基調とした上品なシャツに、紺色の上着。制服姿とは違う大人びた雰囲気に、一瞬だけ目を奪われる。


「シオン!」


「偶然だな。」


 そう言って二人はお互いに笑いあった。しかし、シオンは視線は一瞬だけセラの服装へ向けて、笑い声を止めた。


「……。」


「どうかしたの?」


「あ、いや。」


 「……。」


シオンは一瞬だけ視線を逸らし、小さく息を吐いた。


「……これくらいならいいか…」


(…?なんて?)


「その服、似合ってる。」


 一瞬だけ時間が止まったような気がした。


「……え?あのシオンが人を褒めた!?」


 シオンの顔が心なしか赤くなる。


「うるさいなー!俺だって一応紳士なんだから服装を褒めることは常識だろ!あと褒めたのは服だからな!」


「うわーそれ言うと紳士が台無しだわー」


 言い争いつつも、セラも頬が少し熱くなった。


 シオンも照れたように咳払いをし、くだらない論争に終止符を打った。


「みんな待ってるだろうし、行こう。」


「うん。」


 二人は並んで噴水広場へ向かった。


「セラー!」


 元気な声と共に、リリアが駆け寄ってくる。


 今日は制服ではなく、淡い桜色のワンピースにクリーム色のボレロを羽織っていた。髪もいつもより少しだけ丁寧に結われ、小さな花の髪飾りが揺れている。


「どう?」


 くるりと一回転して見せるリリア。


「実は昨日、お母さんが送ってくれたの!」


「すごく可愛い。」


 セラは自然と笑みを浮かべた。


(え?可愛い。正直に言って天使!しばらく忘れてた感覚だけど、さすがリリアすぎる!)


「本当に似合ってるよ。」


 まあ正直に心の声を垂れ流すわけにはいかないので、省略した。


「えへへ……。」


 嬉しそうに頬を緩めるリリア。


「リリアちゃんらしくていいね。」


 レオンも優しく微笑む。


「明るい色がよく似合ってる。」


「ありがとうございます!」


「うんうん、可愛いじゃん。」


 カイも笑いながら親指を立てる。


「街歩いてたら絶対振り返られるって。」


「そ、そんなことないですよ!」


 照れて慌てるリリアに、微笑ましさも相まって、周囲から笑いが漏れる。


「でも一番可愛いのは……」


「はいはい。わかりました。」


 途中で何かを感じたセラは名前が出る前に遮る。


「絶対分かってないじゃーん。ほんとにそう思ってるんだってー。」


 全員が揃ったところで、レオンが手を軽く叩く。


「さて。」


 周囲を見回しながら微笑む。


「せっかくのお祭りだし、今日は仕事も何も忘れて楽しもう。」


「やったあ!」


 リリアが元気よく手を挙げる。


「まずは屋台ですね!」


 王都の大通りには、所狭しと屋台が並んでいた。


 焼き菓子の甘い香り、香辛料の効いた肉料理の匂い、果実を煮詰めた甘酸っぱい香り。


 どこを見ても、人、人、人。


「すごい人ですね……。」


 セラが思わず呟く。


「毎年こんな感じだよね。」


 レオンが笑う。


「夜になるともっと増えるかな。」


「じゃあ今のうちに回りましょう!」


 リリアは待ちきれないと言わんばかりに屋台を見回した。


「まずはあそこ行きたいです!」


 指差した先には、焼き菓子の屋台。


 色とりどりのクッキーやパイが並び、甘い香りが辺り一面に漂っていた。


「これください!」


 迷いなくアップルパイを注文する。


 水を得た魚のようなリリアを見ていると、こちらまで楽しくなってしまう。


「セラちゃん。」


 横からカイがひょいっと顔を覗かせた。


「これ食べる?」


 差し出されたのは、星形の焼き菓子だった。


「え?」


「美味しそうだったから二つ買っちゃった。」


「え、いいんですか?ありがとうございます。」


 受け取ろうとすると、


「はい、あーん。」


「しませんよ。」


 セラは一寸の迷いもなく答えた。


「あれー。」


 カイは残念そうに肩を落とす。


「一回くらい成功してみたいんだけどなぁ。」


「一生無理だと思います。」


「辛辣ー。」


 周囲から笑い声が上がった。


「……子どもっぽいですよ。」


 ぽつりと呟いたのはシオンだった。


「聞こえてますよー。」


 カイが抗議すると、


「聞こえるように言ったんです。」


 涼しい顔で返される。


「ひど。」


 そんなやり取りを見ながら、セラは思わず吹き出した。


(みんな、本当に仲良くなったな。)


 少し前までは、こんな風に笑い合う光景なんて想像もできなかった。


(いつもは生徒会に入ってないし、そもそもシオンとノアも生徒会メンバーじゃなかったし。)


 屋台を巡りながら、果実飴を食べたり、冷たい果実水を飲んだり。祭りならではの賑やかな空気を満喫していた。


「次はあれやりましょう!」


 リリアが指差した先には、射的の屋台があった。


「景品も豪華ですよ!」


 並んでいる景品の中には、魔法で動くぬいぐるみや星形の小物まである。


「やってみようかな。」


 セラが銃を受け取る。


「狙いは真ん中の……。」


 『ぱん。』と軽い音が鳴る。


 しかし弾は景品の手前へ落ちた。


「あっ。」


「惜しい。」


 レオンが笑う。


「もう一回。」


 二発目。


 三発目。


 結果は同じだった。


「難しいですね……。」


「貸して。」


 シオンが静かに前へ出る。


 一発。


 乾いた音と共に景品が倒れた。


「え。」


 店主まで目を丸くする。


「お兄ちゃん上手いね。」


 シオンは何も言わず、景品を受け取る。そして、そのままセラへ差し出した。


「……え?」


「欲しかったんだろ。」


 手の中には、小さな星形のお守り。


 セラがさっき少しだけ見ていた景品だった。


「でも……。」


「俺、流れでやるはやったけど、別に欲しいわけじゃなかったし。」


 ぶっきらぼうに言う。


「ありがとう!」


 受け取ると、シオンは少しだけ視線を逸らした。


「いいなぁ。」


 カイが大げさに肩を落とす。


「俺もプレゼントしたかったなー。」


「自分で取ればいいんじゃないんですか?」


 シオンが一言。


「今から取る。」


 そう言って本当に挑戦し始めた。


 しかし。


 ぱん。


 外れ。


 ぱん。


 また外れ。


「……。」


「……。」


 静かな空気が流れる。


「ふっ。」


 リリアが吹き出した。


「カイさんちょっと……あれですね!」


 リリアの相手に気を遣って下手と言わないスタンスがカイをノックアウトした。


「笑わないでよー!」


 本人は真剣だったらしい。それを見ていたレオンまで笑い始める。


「珍しいね。」


 結局最後まで一つも取れず、カイは店を後にした。


「今日は負けた……。」


「十分楽しそうでしたけど。」


 セラが笑うと、


「セラちゃんが笑ってくれたからいいや。」


 そう言ってウインクするカイにセラはなぜか心臓が跳ねる。


「そういうこと言わないでください。」


「照れた?」


「照れてません。」


「顔赤いけど?」


「赤くありません!」


 また笑いが起こる。




 気付けば空はゆっくりと茜色へ染まり始めていた。


 屋台の明かりが一つ、また一つと灯っていく。


「もうすぐ夜ですね。」


 セラが空を見上げる。


「そろそろ始まるよ。」


 レオンが夜空へ視線を向けた。


「星祭、一番の見どころが。」

ちょっと小話!


実は星祭りでは花火も上がります!それも星祭りって呼ばれる一つですね。

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