40.落し物整理
生徒会室には、大きな木箱がいくつも積み上げられていた。
「……すごい量。」
思わずリリアが呟く。
木箱には『落とし物』と書かれた札が貼られていた。
「毎年これくらいあるんだよ。」
レオンが箱を軽く叩きながら説明する。
「持ち主が現れなかった物は一度整理して、学園側で処分するから、今日は落とし物整理大会だよ。じゃあ担当を決めるね。」
レオンが一覧表を配る。
「箱を一つずつ確認して、品物と特徴を書き出してくれ。」
「はーい。」
それぞれ箱を受け取り、作業が始まった。セラが蓋を開ける。
「えっと……。」
一つ目。
青いハンカチ。
二つ目。
羽ペン。
三つ目。
片方だけの革手袋。
「……片方だけ。」
「あー毎年あるんだよねそういうの。」
近くでレオンが淡々と言う。
「もう片方はどこへ行くんでしょう。」
「うわっこんなのも入ってる!」
リリアが何かを掲げた。
「カツラです。」
鮮やかな金髪のカツラだった。
「あー。」
カイが笑う。
「演劇部のだー。かぶってみたいから貸してー。」
「ほら早く終わらせたらいいから、手動かして。」
レオンがすぐ止める。また笑いが起こる。
少し離れた場所では、ノアが静かに箱を整理していた。
「ノアさんは何かありました?」
セラが尋ねる。
「ん〜。」
ノアは箱の中を覗き込みながら答える。
「お菓子。」
「え?」
「食べかけ。」
「捨ててください。」
セラは即答した。
「流石に食べないよ〜。」
ノアは困ったように笑い、紙袋をゴミ箱へ入れた。
(最近やっと会話してくれるようになったなあ。目は合わせてくれないけど。)
作業は順調に進んでいく。
誰かが何かを見つけるたび、小さな笑いが起きる。
思い出話になったり、「これ誰のだろう」と予想大会になったり。日々の生活を思い返しながら、穏やかな時間が流れていた。
やがて一時間ほど経ち、箱の中身もほとんど空になる。
「これで最後かな。」
セラは箱の底へ手を伸ばした。
指先に、ひんやりとした感触が触れる。
「……?」
取り出したのは、小さな銀色の装飾品だった。丸い土台の中央には、宝石がはめ込まれている。
宝石の中では、小さな竜巻のような風が渦巻いていた。その周囲を淡い光が細い糸のように巡り、さらに水色や茶色、赤色、黒色がわずかに舞っている。
「綺麗……。」
思わず呟く。
「何かあった?」
リリアが覗き込む。
「これ。」
「わあ!」
目を輝かせる。
「アクセサリーかな?」
「貸してくれる?」
レオンが受け取った瞬間だった。
宝石の中の景色が、ゆっくりと変わり始める。
「え!?」
「……こんな風景が入ったような……しかも風景が変わる宝石なんて見たことがないな。」
宝石は若干薄暗くなり、轟々と燃える炎の周りに小さな風が吹き、水が舞い、土埃がチラチラ待っている嵐の夜が入っているように見えた。
「届け出もありません。」
シオンが一覧表を見ながら言う。
カイが興味深そうに覗き込む。
「ああ。これ見たことありますよー。」
全員がカイに注目する。
「魔力属性調べる宝石があるじゃないですかー。それと似たようなやつで、各魔法の熟練度がわかるんですよー。だからレオンパイセンは火魔法が一番得意で、他も光魔法以外は使えるってことですねー。」
セラはリリアの次の言葉に、失敗したことを悟った。
「え?でも、セラはさっき風に光が入ってるような風景でしたよ。」
(リリア!!!)
シオンとカイは驚き、レオンが何かに気づいたようにノアを見たが、ノアは首を振った。
「僕もその宝石は知っていたけど、風魔法の時はそうなっちゃうみたいだよ〜」
「え?でも、」
「魔力属性を調べる宝石は仕組みが解明されてるんだけど〜その宝石は解明されてないんだよね〜。だから、こう言うエラーも何の不思議もないよ〜」
カイがなにか言う前にノアが言葉を畳み掛ける。
カイとレオンは何か言おうとしていたが、仕組みが解明されていないのは事実だと知り、結局何も言わなかった。
徐々に生徒会のメンバーはその宝石に興味を示さなくなり、その日は落し物整理が終わったら解散した。
「ノアさん!」
帰り道、周りにノアしかいないことを確認して呼びかける。
「庇ってくれてありがとうございました!……でもあれって本当なんですか?」
ノアは一向にこちらに目を合わせようとしないが、セラのお礼に照れたようで顔が赤くなる。
(あれ?避けられてたけど……照れてる?こんなピュアだったっけ?)
「本当なわけないじゃん。仕組みが解明されてないのはほんとだけど〜。まあ僕も秘密は守るって約束したし。」
そういってプイッと踵を返してしまった。
(まあ、話せただけ十分か。)
セラも自分の寮へ戻って行った。
ちょっと小話!
実は魔力属性を調べる宝石が有名で、使える魔法を調べる宝石が有名でないのは、魔力属性は役所に提出が必要だからです!そこでリリアの入学が決まりました!




